第三十九話☆扉の前で
私は扉の前で一呼吸した後、扉をノックする。
コンコン
「あ、開けても良い?」
……え、返事がないんだけど。これって、ダメってこと?でも、流石にお腹空いてるよね?
私は両手に女の子の為のご飯を抱えていた。
何にするか迷った挙句、野菜と鶏肉を入れたスープと、ホカホカのジャガイモに塩をまぶした物だ。主食は多分ジャガイモ。スープは塩とハーブでなんとか味をつけてみたけど、美味しいかどうかは分からない。
私は昔からあまり料理の味にこだわる人じゃなかった。つまるところ、味音痴なのだ。レアに味見してもらったが、「うーん…分からないわ。」って言われた。レアは普段、何も食べずに生活しているため、細かい味の違いが分からないそうだ。
私と一緒じゃんかっ!
でも、絶対お腹が空いているはず…!不味い、って言われたらちょっと傷つくけど、何か食べてもらえたらそれでいいかな。
私は右手で料理をなんとか抱え、左手で返事のない扉にもう一度優しくノックしてみる。
コンコン
「お昼ご飯を用意したんだけど…」
…んー、もう一度寝ているのかなぁ。
だったら、このご飯は私が食べちゃおうかなぁ。私だってお腹空いてるし。
私のご飯は一階にすでに用意してある。全く同じメニューだが、少し鶏肉を多めにしておいた。これは、一生懸命材料を集めて、料理を作った人の特権なのだ。病み上がりでお肉はたくさん食べれないかもしれないしね。うん。
でも、今刻一刻と私の料理が冷めていく。急がないと…!
「……とりあえず、ご飯を扉の前に置いておくから、好きな時に食べてね。」
流石に女の子の為の料理を私が食べるわけにはいかないなぁ…。
シャイな子なのかもしれない。普通は助けてもらって、ご飯も貰った人にありがとうって面と向かって感謝の気持ちを伝えるのが道理じゃない?
って考えてしまう私もいるけど、私自身もレアに頼りっぱなしだし、困っている人が目の前にいる時は出来るだけ助けてあげたいと思う。まぁ、自分の身を削ってまで助けようとは思わないけど。私、聖女じゃないし。
でも、できる限りはしてあげたい。
海まで行ったり、牛を見つける時にかなり周りを見渡したけど、森以外何も見当たらなかった。
「あぁ〜!!リリィ!庭に出てたのね!見てよこの子!拾ったの!」
ってレアが言っていたけど、海まで行く時のあのとてつもないスピードを見る限り、あの女の子をどこから拾ったのか分からない。もしかしたら、すっごく遠くからレアが連れて来ちゃったのかもしれない。
でも、何か困ったことがあるなら、力になりたい。だからといって知らない人にずかずかと入る訳にもいかない。だから、あの子が何か話すまでゆっくり待とう。
私は近くにあった花瓶を置いてあった机を扉の近くまで持っていき、その上にご飯を置いて静かに部屋を後にした。
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