第三十八話♫結果オーライ



失敗したわ。







もう少し寝ているかと思ったけど、状態異常にある程度の耐性があったのか、つい先ほど少女が目覚めた。耐性があると分かっていれば、もっと精神魔法をかけておいたのに。


うーん、もう少しリリィと2人でいたかったんだけど、仕方がないわね。


私とリリィはお互いに名前を付け合った特別な繋がりがある。


でも、足りない。もっと確実な何かが欲しい。


誰かとの、もっとしっかりとした繋がりが欲しい時はどうすればいいんだっけ?


エリーの時には…あぁ、そうね。エリーには私の祝福をあげたわ。


そうだわ。リリィにもあげましょう。


一応私はリリィの眷属に分類されるが、眷属が主に祝福をあげることってできるのかしら。


まぁ、私たちはお互いにお互いの眷属みたいなものだし、多分大丈夫。


一番心配なのは自分の魔力。


私たち緑の妖精は自分の木に魔力を貯蓄できる。今までのがかなり溜まっているはずだから足りるだろうが、祝福を重複させたことがないからどのくらい魔力を使うのか、私にも分からない。


でも、祝福は与える側の気持ちが大きく影響する。気持ちが強ければ強いほど魔力の消費が少なくなるらしい。これは、色々な種族に祝福を与えてきた妖精のお友達から聞いた話だ。私自身は他種族に興味がなく、祝福の経験が少ないため、まだ分からないことが多い。


でも、きっとリリィなら大丈夫。


私はせっせと花指輪を作る。祝福の証は個人の好みによって変わる。体にマークをつける場合もあれば、髪の色などを変化させる場合もある。


でも、私のお気に入りは指輪。手袋をしない限り、ふとした時に見える私の存在の証を見ると、心が満たされる。


リリィは嬉しそうに花指輪を右手の小指につけた。そして、祝福について気になったことを質問してくる。


何でも聞いて頂戴!


そう意気込んでいた。


「祝福っていくつも貰えるの?」


「ん〜。説明が難しいわね。まぁ、基本はひとつよ。持ってない人の方が圧倒的に多いけど。ふたつ目以降は祝福をあげる側の魔力の消費量がもっともっと多くなるの!」


「え!じゃあ、レアはたくさん魔力があるんだね!すごい…!」


「えっ!?…あっ、うん!そうね!私って魔力がとても多いもの!」


咄嗟にそう答えたが、実際は違う。リリィへの想いが強すぎたのか、あまり魔力を消費しなかったのだ。


でも、恥ずかしいから教えてあげない。


お友達の妖精に

「祝福の重複したんでしょ?実際、どのくらいの魔力を使ったの?」

なんて聞かれたら

「普通の祝福とは比べ物にならないほど多く使ったわ!でもまぁ、私はそもそもの魔力量が多いからそんなに影響がなかったけどね!」

と言ってドヤ顔をしてやるんだから。


「ありがとう、レア!レアとお友達になれてよかった!この指輪は大事にするね!」


そう言ってリリィは明るく笑った。


「私も!!」


って言いたかったけど、つい恥ずかしくなって言えなかった。


そのまま、何も言わずにいようと思った。今までのように。


でも、私はエリーの事が頭をよぎった。


だめだ。今、伝えないと。私は強くそう感じて、言葉を振り絞る。


「……そ、その…。私もリリィがお友達でよかった……」


そう伝えると、リリィは溢れるような笑顔を私に向けた。本当に、心底嬉しそうに。






あぁ…。伝えてよかったわ。

私は自分の心が暖かくなっていくのをしみじみ感じた。


あの女の子が起きてよかったわ。だって、リリィに祝福をあげれたし、私は今、舞い上がるほど気分が良い。





あの女の子には、感謝をしなくちゃね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る