閑話【クリスマス☆1】





春のような過ごしやすい気温が続いているお昼時、私は隣でバリバリと音を立てながら木の実を貪る妖精に何気なく訪ねた。


「ねぇ、この辺りって雪とか降るの?」


「雪ぃぃ?!このっ!浮気者ぉぉお!」


「!?」


さっきまでのニコニコとした上機嫌な雰囲気から一転、眉を限界まで寄せ、不機嫌を露わにする。


え!何!?そんなタブーな質問なの!?


「もう!ホントに!デリカシーがないんだからっ!」


「へっ!ご、ごめん…。」


私は何が何だか分からず戸惑う。


「いい?私、緑の妖精と雪の妖精は対極の存在なのよ!緑の妖精の目の前で雪の妖精の話をするなんてっ!!アウトよっ!!逆も然りね。」


「そうなんだ。じゃあ、あとは火と水が対極なの?」


「へっ…。いや、んーと。んー、えっと…。」


今までの勢いが急に消え、しどろもどろになる。視線が定まらず、胸の目の前で両手の人差し指を突き合わせ、もじもじと動かす。


そんなレアも可愛い……。

いや、今回は騙されないぞ!今こそ、自分の意思をしっかりと持つんだ!可愛いけども!いや、かわっ、かわ…いい。可愛いなぁ、レアは。いや、だ、騙されないぞ!やめて!こっち見ないで!


「…………何してるの?」


「いや…。な、何してるんだろう、私……。」


私はレアの視線から外れるために不自然に伸ばしていた右手を下げた。


「まぁ、いいわ!とにかく、雪の妖精って本当にタチが悪いのよ?目が合った瞬間、嫌味ばっか言うのよ?もう最悪よ!」


「そ、そうなんだ…。」


あれ?雪が降るかどうか聞いただけなはずなんだけど…。いつから雪の妖精の話になったんだ…?仲が悪いのかな?


「この間なんて私の服を見ながら『苔がこびり付いておりますわよ、大丈夫かしら?』って言うのよ?苔を馬鹿にするんじゃないわよ!!」


え、そっち…?


レアは羽を忙しなく動かし、両手足をバタバタと動かす。


そっかぁ、じゃあクリスマスとかってないのかな?それとも夏服のサンタさんが来るのかな?


「ねぇ、サンタさんって知ってる?」


「……誰?」


私の突然の話題転換に戸惑いながらもレアが答える。


「えっと、一年に一度、煙突の中から家に入って子供達にプレゼントを配るの。」


「……不審者?」


「違うよっ!!……多分。」


「ふふ、私の友人に同じようなことをする人がいるわ。確か、3日後じゃないかしら。クリスマスって言うやつでしょう?」


お!クリスマスっていうワードが出てきた。しかも、もうすぐだ!タイミングバッチリ!ナイス私。


そういえば、サンタさんの正体は妖精って話を聞いたことがある。実際に届けてくれるのかな?この年になるとちょっと恥ずかしいけど、正直に言えば私もプレゼントが欲しい。ちょっと、聞いてみようかな。


「それって、何歳以下の子供が貰えるのかな?」


「?逆よ。15歳以上であれば全員に可能性があるわ。」


可能性?なんか話が噛み合ってない気がするけど、まぁいいか。お、私の年齢でも大丈夫だ!


「じゃあ、私も対象だね!」


「あら?リリィは来て欲しいの?」


「うん!楽しみ!この家、煙突ないけど来てくれるかなぁ。」


「ええ、それは問題ないわ。魔法でシュパッとやるのよ。ちなみにその子は体の大きさが変わる妖精なのよ。当日だけ大きくなるわ。そうね、丁度大きめの人間の大きさだわ。」


魔法って素晴らしい…!


思わず笑みが零れる私と対照的にレアの表情が少し曇る。


「うーん…、まぁ、でも私はリリィの意思を優先するわ。当日は応援しに行ってあげるわ。任せなさい、練習にも付き合ってあげるわ。」


おっと……?何かおかしいぞ。さすがの私も気づくぞ。


「えっと、プレゼントを貰うんだよね?」


「えぇ、そうね。彼はプレゼントって言ってたわ。」


「?プレゼントの内容って何?」












「え?彼との一対一の決闘の抽選カードよ。まぁ、抽選、って言っても彼は力比べが好きだから全員を順番に相手にするけれど。」

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