閑話【ハロウィン☆1】




「ねぇ、リリィ。今日が何の日か知ってる?」


ある天気のいいお昼時、突然レアがそう話を切り出す。


「どうしたの?突然。」


ってか今日が何日なのか知らないんだが…。そもそも月の数え方とか一緒だったっけ?時間の数え方とかは一緒だから似たようなものなのかな。


「じゃあヒントをあげるわ!今日は10月31日よ!!リリィは境界の外人だから言い方が同じかどうか分からないけれど…。」


「ううん!同じだよ!えっと、そうだなぁ…。」


私は顎に手を当て、考える仕草をする。私の目線の先には目をキラキラとさせ期待に胸を膨らませるレアの姿が。


10月31日といったら、ハロウィンだよね。あれ?ハロウィーンだっけ?まぁ、いいか。ともかく、その答えをはっきりと答えていいものか・・・。


「うーーん、何だったかな?」


レアのそのキラキラとした目がある限り私には答えられない・・・!!


「えぇ~、じゃあ、もうちょっとヒントをあげるわ。この季節はカボチャとタマネギが旬なのよ!さぁ、これで分かったかしら?」


カボチャと・・・・タ、タマネギ!?


残念ながら、私の知識の中にタマネギの旬についての知識はない。でも新タマネギとかは春に食べた記憶がある。


そもそもカボチャは分かるけど、なんでここにタマネギ!?


異世界はやっぱり文化が違うのかな?私は明確には言わずに、どんなものかだけ聞いてみる作戦にした。


「えっと…姿を変えて、驚かすやつ?」


「うーん、驚くこともあるから…まぁ、大方当たりね。」


大方…?


「あと、お菓子を貰いに行くんだよね?」


「えぇ。まぁ、勝った人だけだけれどね。」


「勝つ・・・?な、何に勝つんだっけ?」


レアがコテン、と首をかしげ、不思議そうにする。


「あら?やっぱり文化がちょっと違うのかしら?えっと、まず10月31日の深夜0時に妖精の森中に鐘が鳴り響くの。それを合図に・・・。」


「合図に・・・?」


私がゴクリ、と固唾をのむ音だけが部屋に聞こえる。


「妖精全員が顔の形にくり抜いたカボチャを片手に、追いかけ回すのよ!」


レアがビシッ!効果音が鳴りそうなほど胸を張り、自信満々に答える。


「え、何を?」


「?もちろん、参加者を、よ。参加者といっても妖精族の族長以外は強制参加だけれど。」


まさかの強制参加!?子供も強制参加なのかな・・・?あ、でもそもそも妖精の世界に行けるならちゃんとした妖精なはずだから、大丈夫なのか・・・大丈夫なの?


「なるほど・・・。追いかけてどうするの?」


「持ってるカボチャの中に閉じ込めるのよ!後ろから気づかれないようにガバッといくのよ!まぁ、すっごく腕力の強い妖精はカボチャを遠くから思い切り投げてくるのよ!ほんと、野蛮よね?」


こう、ガバッとよ!と言いながらレアが両手を大きく挙げ、勢いよく両手を下ろす動作を繰り返し、実演してくれている。


これは、明らかにハロウィンじゃないな。全然違うし。


ほら、リリィもやってみて?て言われても私がそのお祭り?に参加することはない。ってか参加していいよ、て言われても絶対やりたくない・・・!


「へ、へぇ~、そうなんだ。レアはカボチャを投げたりするの?」


「まぁ!そんなことしないわよ!!この細い腕をちゃんと見てよ!私は緑の妖精の中でも魔法特化型なのよ!」


レアが自分の腕を指さし、鼻を膨らましながらリリィに必死に訴える。


え、じゃあ、筋肉モリモリの妖精もいるって事?そもそも男の子の妖精もいるのかな?ってことは筋肉モリモリのおっさんみたいな妖精もいるのかな?


私の中の儚いイメージの妖精像がガラガラと音を立てて崩れていく気がした。


私は自分の考えを振り切るように軽く頭を左右に揺らした。


「じゃあ、最後までカボチャの中に入らなかった人が勝ちなの?」


「えぇ、そうよ!その人は族長にご褒美が貰えるの!」


「えっ!何が貰えるの?」


さっき、お菓子って言ってたからよっぽど美味しい物なのかな!気になる・・・!


「妖精の雫よ。」

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