第三十四話☆便利な魔法




〜少し前〜



実は牛の願いを叶えるため、とりあえず家に帰った後、少女の服について考えた。


綿花を手に入れても、布を作るのは時間と手間がかかるため、あまり作業が捗っていなかったのだ。


「あぁ〜…コピーとかできないかなぁ」


目の前にはやっとの思いで完成したバスタオルのような大きさの布。ちなみに、手織り機も少々レベルアップして大きめの物になっている。


「ええぇいい!布よっ!増えろっ!!」


両方の掌を広げ、布の上に翳し、ちょっと念じてみても特に効果がなかった。


変なこと叫んじゃて…ちょっと恥ずかしい…。

今だけ、レアが近くにいなくてよかった。


ちょうどレアは下の階で部屋中にお花を飾っているところだ。


本当にレアは女子力があるよなぁ。性格も優しいし、顔もかなり可愛い。前の世界だったら確実にモテてるやつだ。


しかし突然、頭の中に何かが思い浮かんだ。


「複製ディプリケイション」


そっと唱えてみると、次の瞬間目の前の布が2枚になっていた。


「え……?できたぁぁぁあああ!!」


思わず叫んでしまうと、レアが部屋に飛び込んでくる。

ちなみにこの家はレアがどこからでも入れるようにドアの近くに小さな隙間が空いている。しかし、一応防音にはなっているらしい。魔法って素晴らしい。


「ど、どうしたの?そんな大声出して。」


「聞いてよレア!」


私は事の顛末をレアに伝えると、


「何よそれっ!?そんな魔法見たことない…!でもリリィ、その魔法は他の人に見せたらダメよ?」


「……どうして?」


「あったりまえじゃない!!お金とか作り放題だし、その魔法があれば、お買い物に行く必要だってなくなるもの!便利すぎてちょっと怖いわ…!」


「た、確かに…!」


使い方によってはかなり危ない魔法なのかな…。でも、今私たちにはお金とか必要ないし、ひたすら便利な魔法だと思うんだけど…。まぁ、レアの意見には従った方が良さそうだ。


…でも…もしかして…ご飯とか量産できればすごく便利な魔法なんじゃない?!


私は部屋を飛び出し、一階のキッチンに向かう。


「えっ!?どこ行くの〜?」


レアが慌ててついてくる。


私は先程、今日のお昼ご飯にしようと思い、解凍しておいた鶏肉を手にする。


ちなみに、レアに分厚い箱を作ってもらい、中に氷魔法で氷まみれにした後、時間停止の空間魔法を使う事で冷凍庫のような物が完成した。


冷やしておけることによって、日持ちが良くなるのだが、外に持ち運ぶ用に天日干しの肉も作り続けている。


その肉の上に手を翳したところで私は気づく。


別にご飯で試したかったわけだから、その場でレアに果物とかを出して貰えば良かったのでは…?


…じ、自分の力で何かをやるって大事なことだよね…?うん。そう言うことにしておこう。


「複製ディプリケイション!!!」







………


「…何にも起こらないわね。ちゃんと魔力込めた?」


レアがちょっと呆れたような目でこちらを見る。


そ、そんな目で見ないでよっ!大きな声で言ったくせに何も起こらなくてちょっと恥ずかしいんだから!


って言うか、魔力の込め方知らないんだけど。何となく言葉を唱えたら魔法が使えるんだと思ってた…。ってかレアが魔法を教える時、効果音しか言わないから魔法の使い方が今だにちょっとよく分からないんだよな。


私はとりあえず近くに生けてあったお花を一つ手に取り、唱える。


「複製ディプリケイション!」


瞬く間に目の前のお花が二つになった。


…やっぱりご飯は増やせないのかな。ちょっと残念。


「ふーん。残念ね。ご飯が増やせれば楽なのに。」


残念、と言いながらレアはどこか嬉しそうに見える。


「まぁ、ご飯を集めて過ごすのも楽しそうだよね!」


「まぁね。私も手伝ってあげるわよ。」


私たちは目が合い、クスッと笑う。





私はとりあえず服作りを再開することにした。


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