第二話☆木を切り倒す
とりあえず、まっすぐ歩いていくと少し開けた場所に来た。
家、作っちゃおうかな。このまま真っすぐ行って人里にたどり着くかどうかは全くわからない。まだ空は明るいから今から家を作り始めたらきっと夜までには間に合う。
作り方も何も分からないけれど木を切って積み重ねれば雨が凌げるくらいの小さな小屋くらいならできるかな…
人は極限状態になるとなんでもできる、と思い込むらしい。その結果、奇跡的に何かに成功する人と、大きな失敗をする人に分かれる。私の場合は圧倒的後者だ。
多分魔法でスパッと木が切れるはず。なんかそんな気がする。決して動物的感ではない。第6感ってやつだ。多分…。
「えいっ!…ウインドカッター!!」
口からすらすら呪文が飛び出した。来たぜ、異世界…。
とか感傷に浸ってたのも束の間。目の前で切った木がこちらに向かって倒れてきた。
そういえば私、木を切ることしか考えてなかったなぁ。
木が自分に向かって倒れて来ているのが分かっていながら、私の足は全く動かなかった。いや、動けなかった、という表現のほうがピッタリだ。
焦りすぎると、逆に人って冷静になれるんだな。あっ、走馬灯みたいの流れてきた。異世界来て自分で切った木に潰されるとかそんなバカな話ある…?
その時、とっさに自分の口から言葉が飛び出した。
「シールドッッッ!!!」
ガキンッ!ズガァンッ!
大きな音とともに風が通り抜ける。
「…へ?」
目の前に広がるのは私の前を包むように囲まれた大きなドーム状の透明な壁のようなもの。その先に反対方向に向かって木が落ちている。
あっ…私、助かったんだ…。
ちょっとまだ実感が沸かず、へなへなと力が抜けて地面に座り込む。
木を一本切るのにこんなに労力を使うんだ…と、とりあえず、もっと木を切らなくちゃ…
「エアカッター!シールド!エアカッター!シールド!」
途中からはだんだん手慣れていき、木を休まず切っていく。
なんかちょっと楽しいかも…私、魔法を使いこなしてる!
顔のニヤつきが止まらぬまま木を切り倒していくと、突然目の前に光の塊が現れた。淡いピンク色とも黄色とも見えるその光はだんだん一つに固まっていく。
「ま、眩しい…!!」
思わず目を固く瞑ると高い声が聞こえた。
「ちょっと!!!何てことするのよっ!!」
ゆっくり目を開けてみると、そこには淡い光を纏った”妖精”がいた。
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