第七話 王国のダンジョン


「カンウ様!」


 王国でゲリラ戦闘を楽しんでいた・・・。

 王国でゲリラ戦術で戦闘を行っていた。カンウとヒアに、モミジとミアが合流してきた。


 ミアが呼んだのは、カンウだ。

 ヒアがミアの姿を見つけたが、ミアはヒアではなくカンウに駆け寄った。モミジは笑いを堪えている。


「モミジとミアか?他は?」


「連れてきましたが、神聖国に向った王国を後ろから攻めています。既に、物資は奪ってあります」


「そうなると、ここからは4人での行動か?」


「はい。魔王様から、王国のダンジョンを潰せと命令を頂いています」


「ヒア!」


「はい」


 ヒアが、カンウのミアの会話に割って入る。

 そこには、簡単なメモだが、一部の者にしか通用しない暗号で書かれていた。


 ヒアが、事情の説明を行う。


「ダンジョンの数が多いですね」


 ヒアからの報告を聞いての感想だ。

 モミジは、ヒアが持っているメモを受け取って、感想を言ってから、ミアに渡した。


「はい。ギルドが把握できるダンジョンのマップからの情報なので・・・」


 新生ギルドではなく、共和国に本部を設置している。人族主義が蔓延しているギルドだ。情報は、奪ったというのが正しい。


「他にも隠されていると?」


「カンウ様と私が話をした襲った連中からの情報も加味すると、最低でも2箇所か3箇所のダンジョンが秘匿されていると考えられます」


 ダンジョンは、ギルドで管理するのが通例となっているが、国でダンジョンを囲って資源として使っている場合がある。


「そうなると、軍事施設?王都ではないよね?」


 ミアが、ヒアに質問する形になる。


「魔王様や魔王カミドネの話を聞いた限りでは、王都はないと思う。怪しそうなのは・・・」


 皆が、ミアが持っている地図に集中する。

 王国を攻めるにあたって奪ってきた地図だ。モミジとミアがカンウとヒアに合流する前に襲った輸送部隊が持っていた地図で、いくつかの地図があり、一番偉そうな奴が持っていた物で、道中に出会った部隊が持っていた地図を統合している。


「そうだ。ミア。襲った輸送部隊はどうした?」


「魔王カミドネの眷属がいたから、押し付けてきた。後背を狙える位置に居たから、そのまま襲わせた。カンウ様とヒアが、ゲリラ戦で王国兵を減らしている様子だから、兵は必要ないでしょ?」


 ミアの話は、モミジも承諾をしている。

 補足の情報を、二人に説明をしている。


「モミジ。ミア。俺たちが連れている兵はどうする?お前たちの兵と合流させるか?」


 ダンジョンの攻略を行うためには、兵は必要ない。

 見た目では判断はできないが、カンウとモミジは魔王の眷属だ。そして、”人族”の括りではあるが、ダンジョンに属する者として扱われる。その為に、食事は嗜好品であり、生命維持には食事は必須ではない。ミアは、獣人族である狐人から進化している。進化体となって、ダンジョンの眷属となってからは、食事や睡眠という生命維持の必要性は下がっている。ヒアは、人族は進化ができないために、ミア程ではないが、それでもダンジョンの眷属になってからは、食事と睡眠の必要性は下がっている。


「ミア!」


 モミジは、ミアに兵の処遇を委ねる。


 ミアは、少しだけ考えてから、カンウとヒアが連れている兵を見回す。

 魔王の配下で言えば、前線を任せられる一団だ。顔や名前を知っている者も多くいる。


「ヒア。さっきのメモを見せて」


「あぁ」


 ミアは、ヒアから暗号で書かれたメモを受け取る。

 自分が持っている地図に、暗号で書かれた場所に印をつける。


 いくつかの場所は、大きく丸で囲んでいる。


「この施設に攻撃を仕掛けられませんか?」


「ん?」


 ヒアではなく、カンウとモミジが地図を覗き込む。


「ミア。ここを攻める意味は?」


 モミジが、ミアに説明を求める。モミジは、ミアの戦略に想像が付いたが、ミアに説明をさせることで、カウントヒアにも解ってもらおうと思ったのだ。もちろん、自分の考えが正しいか知りたいという思いもある。


「はい。この施設を失えば、王国の防衛ラインは崩壊すると思います。王国に穿つ楔にもなります」


 既に、王国の防衛ラインは崩壊しているが、王都を守る兵や各貴族家には私兵を抱えている者たちもいる。

 ミアが”防衛ライン”と言っているのは、王都を攻める場合でも、貴族家を攻略する場合でも、必要になる防衛ラインの事だ。


「ミア。それでは、説明になっていない」


 モミジの指摘通りだ。カンウは忙しく地図を見ているが、ヒアは施設の場所を指さしたミアの指を見ているだけだ。考えを放棄したわけではなく、ミアがその続きを話し出すのを待っている状況だ。


「はい。この施設は、神聖国にも魔王カミドネ領にも続いている道があります」


「ミア。でも、それだと、この施設も、この施設も該当する」


 ヒアが、いくつかの施設を指さして指摘する。


「そう。でも、この施設だけ、近くに広大な草原がある。そして、近くに村が点在している」


「え?それが?」


「ヒア。忘れたの?人は、食べないと死んじゃうのよ?」


「忘れてないよ・・・。あぁそういう・・・。食料の備蓄がある?」


「うん。それだけではなく、川が近くを流れて、山が近い街がある。ここからの街道は、この施設にだけ向っている」


「え?本当だ。村には、繋がっているけど・・・。施設には、この施設だけ・・・」


「うん。だから、この施設には、武器や防具も集まっている。この施設から、他の施設に分けている?」


「ミア!」


「はい!」


「ミアの作戦を採用する。別に、占領する必要は無いのだよな?」


「はい。施設から出る物資を奪って、施設に入る物資を奪えば十分です。出来れば、占領したいとは思います」


「占領するのか?」


「はい。私たちの物資の補給に使える可能性があります」


「がはは。わかった。兵を、施設に向かわせる。占領の作戦は、兵に任せていいな?」


「はい。あっ・・・」


「どうした、何か、あれば言え」


「はい。ありがとうございます。兵の一部。人族をリーダーにした4-5人のグループを2-3組ほど組織できませんか?」


「なぜだ?」


「カンウ様とヒアが調べ上げたダンジョンですが、出来て歴史が浅いダンジョンが、何か所か存在していますよね?」


「そうだな。王国が育てているのか?」


「浅いダンジョンを攻略させてはいかがですか?」


「攻略させるのか?」


「はい。魔王様の配下に相応しい者がいれば、勧誘してもいいとは思いますが・・・」


「そうだな。潰して、資源を奪ったほうがいいだろう?モミジ?どうした?」


 カンウとミアが話をしている間に、モミジはミアが指摘した浅いダンジョンと他のダンジョンの位置を見ていた。


「この辺りにダンジョンは無いの?」


「え?」


 モミジが指さしているのは、王国の一部だが、魔王カミドネの領域に近い場所だ。


「この場所にダンジョンが無ければ、魔王カミドネが領域を広げれば、この川まで支配領域にできる」


「あっ!」


「ミアは気が付いたか?」


「はい。そうなると、今、解っているダンジョンの支配が出来れば、王国を半包囲できます」


 ダンジョンが存在しない可能性もある。その場合には、支配したダンジョンの領域を広げてしまえばいいだけだ。

 モミジは、すぐに、ルブランに連絡をして、魔王に作戦の可否を求めた。


 魔王からの返答は、”王国の攻略は、4人に任せた。4人が考えて攻略せよ”だった。


 ダンジョンの消滅を目的とした攻略から、支配する事を念頭に置いた攻略に変更された。難易度は跳ね上がるが、屈服を拒否したら、殲滅するだけだと考えていた。


 モミジやカンウやヒアやミアは、魔王の眷属になっている。

 その為に、カミドネを屈服させた時に、魔王の配下に推挙が出来たが、それ以外の者が攻略した時に、魔王の配下にできるのか解らない。


 しかし、カミドネと同じ手順を踏めば大丈夫だろうと思えた。

 まずは、攻略してみてから考えることになった。


 兵の中から、ダンジョンの攻略に適したスキルを持っている者を選んでパーティーを組ませた。

 相性もあるので、最終的には、本人たちに話を聞いて、2組のダンジョン攻略組を設定した。


 攻略するダンジョンの順番を決めた。

 残った兵は、王国の軍施設に攻撃を行う。ミアの予想通りに要所なら、他から援軍が呼ばれる可能性がある。その場合には、現場の判断で各個撃破を基本とした戦術で対応する。


 即座に作戦を開始する。

 カンウにも、モミジにも、ヒアにも、ミアにも、王国を攻めるのに躊躇する理由はない。


 魔王の敵は、彼らの敵だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る