第十五話 今後?


 神聖国からの遠征部隊を、カミドネとセバスが撃退した。


 カミドネに、今後の運営の提案を行った。最終的には、カミドネが決めればいいと思っていた。


 戦場の様子を見て、そのあとで設定案を送付した。

 あとの事は、戦場に居た者たちに任せて、俺は普段の生活に戻ることにした。やりかけの改修を考え始める。


「魔王様」


 部屋にセバスが一人で訪ねてきた。

 何か、問題が発生しているのなら、当事者を連れて来るから、大きな問題ではない。


「セバスか?」


「はい」


 扉の前から返事をしている。


「いいぞ」


「ありがとうございます」


 扉を開けてから、深々と頭を下げて、部屋に入ってくる。上げた顔は嬉しそうな表情だ。


「カミドネの森は、大丈夫か?」


 カミドネの森は、カミドネダンジョンの上に作られた、カミドネ村の近くにある森だ。

 神聖国の奴らを撃退したら、森の約8割を領域に組み込む事ができた。森の全てを領域に出来なかったが、十分だろう。境界は、森の中を流れる川だ。川は、全部カミドネの領域になっている。


「魔王様から、領域の拡張を告げられまして、確認を行いました」


「確認?」


 拡張の確認?

 森や川が領域に組み込まれたから、領域の確認は必要だな。カミドネには、眷属が居たから、眷属を使って確認を行ったのか?


「川に、水棲の魔物がポップするポットを配置が出来ました」


 それは、今後の運営でも必要なデータになりそうだ。

 自然な川を利用した罠は、作ったことがない。堀に罠を設置したことはあるが、川を自然な形で罠に利用したのは、いい考えだ。今は、ポップするだけかもしれないが、魔物が居る川に落すような罠が配置できれば、罠の効果が上がる可能性がある。特に、神聖国を相手に考えれば、神官たちを守る騎士は鎧を身に着けている。水の中は苦手だろう。神官の攻撃も、水棲の魔物には届かない可能性がある。


「ほぉ領域外には出ないのか?」


「出ないようです」


 領域から出ないようにすれば、”出ない”のは解っていたが、川の場合には、領域以前に流れが存在している。問題はあるが、大丈夫なのだろう。


「そうか、川のこちら側に防波堤を作るように指示をだしてくれ、あと森の中はアンデッドが徘徊しているのだよな?」


「そうです」


 アンデッドが徘徊する森。

 神聖国としては、物流の観点からも無視はできない。そのうえ、アンデッドが出現したタイミングを考えれば、カミドネが疑われるのだが、アンデッドを払うのは神官の役割だ。


「アンデッドは、領域を越えられるよな?」


 これは、俺からの指示で、アンデッドは領域を越えられるように指示を出してある。

 最終的に、神聖国に押し付ける予定なので、領域を越えられないと意味がない。設定で、”領域を越える”なんて項目は存在しない。これも、一種の罠だ。設定では、”主の意に背き移動する”という項目が”領域を越える”設定になる。チェックを入れると、領域から出られなくなる。セバスたちは、”移動の自由”のチェックで”領域を越える”という意味になっている。召喚時のチェックならポイントは加算されないのだが、召喚後の変更には、追加で呼び出す以上のポイントが必要になる。


「越えられるようにしてあります」


「カミドネと相談して・・・。そうだ、セバス。何か用事があったのだよな?」


 セバスが訪ねてきた理由を聞くのを失念していた。


「はい。丁度、魔王カミドネから相談されていました」


 カミドネ?


「相談?」


「支配領域に入った森の使い方です」


 丁度、話していた内容に近い内容だったから、セバスは俺との会話を辞めなかったのだな。

 確かに、セバスが心配する内容としたら、カミドネの事が最初に思い浮かぶ。それ以外で、現状は問題と呼べるような事象は存在していない。


「好きにしていいぞ?」


 俺としては、あれはカミドネの支援が目的だ。それに、試したい実験は終了している。

 あとは、神聖国への嫌がらせ以上の意味は持たない。はずだ。カミドネが、何かに使いたいのなら、自由にしていいと思っている。セバスと相談すれば、守りは大丈夫だろう。森は今後も拡大するだろう。城壁を作るのは意味が薄い。


「アンデッドは?」


 俺が指示したアンデッドだけど、神聖国への嫌がらせだからな・・・。

 ”浄化”されたがって、神聖国に近づいている・・・。とか、適当な事を言って、神聖国に押し付けようかな。指揮官級は、残して、防衛線の維持に使えばいい。今まで聞いている神聖国なら、領域を削られたと解ったら、取り返しに来るだろう。そこで、撃退し続ければ、ポイントが奪えるだけではなく、神聖国としての評判が落ちていくだろう。

 今回は、カミドネやセバスたちの介入が有ったから、なるべく逃がさないようにしたけど、これからはギミックハウスと同じで、逃がして、制御しながら情報を与えればいい。


 アンデッドの運用は、俺が最初に行って、そのあとは、眷属を作って行わせる方がいいだろう。


「あぁ神聖国への嫌がらせだから、カミドネが必要ないと思えば、設置する必要はない。森を何に使いたいのだ?」


「はい。獣人族の集落を作りたいと言っています」


 獣人の集落?

 捕えた獣人たちの解放は終わったと報告を受けている。


 カミドネ村での生活は、人族もいるので、最初は相応しくないのだろう。カプレカ島や城塞村だけでは、獣人を受け入れきれなくなっているから、丁度いいのかもしれないな。

 魔王ルブランの名前で、布告を出しておけば問題にはならないだろう。他の地域で、冷遇されている獣人が押し寄せても、森なら住まわせる事ができるだろう。領域内で村を作れば、ポイントにもなる。侵入者の検知が行えるのも大きい。


「大丈夫だ。ポイントは足りるのか?」


「十分です」


「それなら、任せる。セバス。協力してやれ」


 ポイントが足りるのなら、セバスとカミドネに任せてしまえばいい。


「はい」


 そうだ。

 嫌がらせは、俺が”実行したい”から、セバスたちには手を出させないようにした方がいいだろう。


「川の城壁は、俺が作る。森の中に少しだけ入った場所にするけど、問題はないよな?」


 川から少しだけ離した位置に城壁というか、壁を作ろう。領地を囲むようにしてしまえばいいだろう。ポイントも使わないと、貯まる一方だ。今なら、黒竜とか書かれている最強の魔物を召喚しても大丈夫だ。維持ポイントが必要とか書かれているから、怖くて召喚ができない。人化を付けて、フルオプションにするとギリギリだけど、無理ではない。


 神聖国のために、アンデッドを大量に送り付ける場所にしよう。

 悪い噂が流れるように、ティモンやボイドやメルヒオールに依頼を出せばいい。神聖国の周辺にアンデッドが湧いている。神聖国の神官がアンデッドの退治が出来ていないから、氾濫してしまっている。

 適当な噂を流しておけば、神聖国が対処しなければならなくなる。対処しなければ、第三者のフリをして、行商人が襲われたのは、神聖国がアンデッドを放置しているからだと言い続ければいい。

 実際に、アンデッドが湧いている場所は、俺と神聖国のダンジョンマスターにしか解らない。

 神聖国からカミドネに苦情が着ても突っぱねてしまえばいい。こっちは、ダンジョンマスターだ。人の為に、何かする必要性は感じない。


「ありません。そうだ!川から水を引き込みたいのですが?」


「森の中央に湖でも作れば解決しないか?水は、地下にでも、水が湧きだす罠を設置すればいいだろう?」


「え?わかりました。検討します」


「貯まった水は、川に流すようにして、魔物が入ってこないように、柵か建物を設置すれば、安全だろう?」


「わかりました」


 セバスに、湖の設置は任せてしまおう。


 セバスが、カミドネとの話を進める為に部屋から出て行った。

 俺は、神聖国への嫌がらせを始めよう。


 まずは、城壁では面白みが足りないから、木々を密集させて、抜けられないようにしてしまえ。後で、カミドネに領域の注意を出しておけばいいだろう。

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