第七話 【カミドネ】魔王
我は・・・。面倒だ。私は、魔王カミドネ。名前は、別にあるのだが、魔王ルブランの配下にダンジョン・コアの部屋まで攻略されてしまった。コアを破壊されれば、私は死んでしまう。
魔王ルブランの配下は、ダンジョン・コアの前で戸惑っていた。そこで、命乞いをしてみた。
あの時の、私の判断を、私は褒めたい。
命乞いをした結果、魔王ルブランが治める地域に転送された。ステータスボードから状況が判明した。
魔王ルブランに会って驚いた。魔王ルブランは、魔王ではない。正確には、ダンジョンの主ではない。私には、解る。ダンジョンの主は別に居る。その者が、ルブランを自分の変わりに全面に立たせている。
子供?間違いない。彼が”魔王”だ。私では、彼を見られない。間違いない。彼を甘く見ないほうがいい。
それからは、驚きの連続だ。
私には、魔王の名前は解らない。解らないが、”モノリス”が彼の器だろう。魔王モノリスと呼ぶのが正しいのか解らないが、ルブランや他の眷属たちは、ただ”魔王”と呼んでいる。私も、それに倣うことにする。波風を立てる必要はない。
私の器である。ステータスボードにいくつかの項目が追加された。
魔王様へのダンジョンへの移動許可。私のダンジョンが『カミドネ』と名がついた。これから、私は『魔王カミドネ』を名乗ることになった。同時に、魔王様との繋がりを感じる。
私は、第435代目当主だったが、私が魔王様に臣従したことで、私以降は、この場所では魔王は誕生しなくなる。私は、魔王様の眷属と同じ扱いになる。簡単に言えば、”魔王様が殺される”と、私も死んでしまう。私は、死にたくない。眷属となって解ったことだが、眷属は主の命に関わる行動ができない。制限されているのではない。単純に”できない”のだ。不思議な感覚だが、彼に仕えるのなら問題ではない。
この世界に来てから、数百年(数えるのも面倒になった)の時間が過ぎた。生活水準をあげようと頑張って来たが、前世に追いついていない。それが、魔王様の眷属になり、私の部屋が快適な空間に変わった。上下水道。ガス。電気。全てではないが、罠で構築されている。他にも、ソファーも素晴らしい。シャワーや風呂と言われる物まで設置ができた。寝具は離れたくないほどに素晴らしい。
空間だけではない。食生活は記憶している前世よりも素晴らしい物に変わった。どうやら、魔王様は私よりも後の時代の人の様だ。国も違うのだろう。言葉が解らなかった。
言葉が解らないと伝えると、スキルを渡された。スキルを覚える事で解決した。
一番の驚きは、私が騙されていた事だ。
他の魔王から得た情報が間違っていた。間違っていたのか、私を騙そうと虚偽の情報を流したのかは不明だ。
私の数少ない家族・・・。眷属にも恩恵が有った。私が膨大なポイントを得たことで、皆を進化させることができた。そういえば、魔王様の眷属は、人型が多かった。私の眷属は、皆が獣型だ。魔物の種類も違っていた。
魔王様から分け与えられたポイントは、私が5年で稼いだポイントよりも多かった。
そして、魔王様は勝手に私の領域を広げた事を、悪いと思っていたようだが、私としてはご褒美でしかない。それだけではなく、安全の為だと言って、ダンジョンを深くしてくれた。結局、階層は増えて、100階層になった。地上部にも20階層の建物が出来ている。攻略のための道順を考えると、150階層にもなる。地上部の最上階に上がってから、降りてこなければならない仕組みだ。最初は、地下5階まで降りてから、地上部の攻略を行う。5階層を降りてから、5階層を上がって、地上に出て来る、そのあとで、最上階の20階層まで上がってから、また20階層を降りる。その後に、また地下部分の攻略を行わなければならない。鬼畜以上のダンジョンだ。
攻略はほぼ不可能な状態だ。
最初の5階層は、草原フィールドで前半戦は弱い魔物がポップする。地上部の
地上部分の
地上部の後半戦が終わってから、ダンジョンが本格的になる。
10階層ごとに、ボスモンスターが配置されている。90階層からは、1階層ごとにボスが配置されている。最後の5体はドラゴンが配置されている。致死性の高い罠も配置されている。甘えが一切ないダンジョンになっている。宝箱もないために、魔物を倒して得られる物だけが、ハンターたちへの報酬になる。はっきり言えば、”おいしくない”。
魔王様に屈服してから、5ヶ月が経過した。
ポイントがおかしなことになっている。3年かけて稼いだポイントを稼ぎ出してしまった。半分を、宝箱や魔物の補充に使ったが、かなりのポイントが残っている。運営で困った状況ではないが、魔王ルブラン殿に助言を求めた。
魔王ルブランは、カプレカ島に居ると言われたので、転移で移動する。指定された場所は、カプレカ島にあるギルドの一室だ。ダンジョンの中に転移してから、地上に出る。魔王である自分が、地上を気楽に歩ける日が来るとは思っていなかった。魔王様には感謝だな。
魔王様のすごい所は、カプレカ島には、眷属が死なないような罠が設置されていることだ。
「それで?」
「すまん。ポイントが膨大にあって、何に使っていいのか・・・」
「そうか、魔王様から、餌は盛大に出せと言われているのだが?」
「それは、出しているが・・・」
「どうした?」
「魔王様から頂いたスキルや武器や防具では、バランスが難しい」
「ん?どういうことだ?」
魔王ルブランに、私が知っている情報を伝える。
簡単に言えば、カミドネの近くにも、他のダンジョンが存在している。それらのダンジョンと足並みを合わせておかないと、討伐体が組織されてしまう。私の話を黙って聞いていた魔王ルブランは、話を聞き終わった後に大声で笑い出した。
「魔王カミドネ。何か、勘違いをしていないか?」
「勘違い?」
「そうだ。貴殿のダンジョン。カミドネを攻略できる者がいると思うか?もちろん、魔王様の眷属以外という意味だ」
あっ・・・。討伐隊が組織されても、まず城壁を突破できるか怪しい。
それだけではなく、ダンジョンに入られてしまっても、新生カミドネは攻略が不可能だ。軍隊を投入しても、どこかで戦闘ができない状況に陥るだろう。少数精鋭で挑んでも、どこかで物資がなくなってしまう。現地調達ができない階層が多いのも攻略を難しくしている。
それに、私を殺そうとしても、最下層まで来たとしても、私は魔王様のダンジョンに逃げることができる。もちろん、眷属と一緒に・・・。
確かに、魔王ルブランが笑った理由が解った。
「たしかに・・・。ありがとうございます。まだ、どこか魔王様の言葉が理解出来ていなかったようだ」
「かまわない。そうだ、貴殿も我らのやっている会合に参加するか?」
「会合?」
「我らは、ギミックハウスの罠や宝箱の研究を行っている。魔王様から与えられた書物を読んで、知識を高めている。貴殿も、魔王様の眷属になったのだから、参加の権利はある。ギミックハウスと、提供するスキルが被らないようにすれば、特徴も出しやすいだろう」
それは楽しそうだ。
魔王様の書物にも興味がある。魔王様の知識に触れられるのなら・・・。私のダンジョンはもっと安全になる。そして、眷属たちを強化できる。かも、しれない。
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