短編怪談
宇佐美 涼
第1話 シミュラクラ現象
シミュラクラ現象って知ってますか?
ほら、埴輪とかの顔ってただ穴が開いているだけじゃないですか。
でも僕たちは、あれが人を模ったもの……っていうかまぁ人の顔に見えますよね?
アレみたいに、点や線が逆三角形に置かれたものって人間の脳が勝手に想像して、
顔だと認識してしまう現象らしいんですよ。
今では心霊写真のほとんどがシミュラクラ現象で説明出来てしまうしいです。
個人的には、そんなの夢がなくていやだなぁと思ってしまいますね。
……あぁ、話が逸れてしまいました。
いつだったかな、たしか水曜日だったかな。
あぁそうだ、社会学の講義があったから水曜日であってます。
その日は午後からしか講義がなかったので、午前中は家で過ごしてたんですよ。
11時くらいに同じ社会学に出る友人の高橋からメールが来てたんですよ。
メールには何も書かれてなくて、画像が一枚だけ添付されていました。
そのメールですか?
削除とかはし記憶がないので、僕の家のPCの中に入っていると思います。
まぁ、もうこんな身体なので、何ならPCごと持って行ってしまっても構いませんよ。
それにあんなのが入っているPCなんて持っていたくないですから。
それで、メールに添付されていた画像を見たんですよ。
それがいけなかったんでしょうね。今言ってもしょうがないことですが。
気が付くと家を出る時間になっていました。
そうですね、たぶん一時間くらい見ていたと思います。
ずーっと。
急いで準備して大学に向かいました。
講義の開始時刻になっても、高橋は現れませんでした。
講義が始まって30分くらい経ってからですかね、高橋が講義室に来ました。
でも、教授は気が付いていないみたいでした。
それで、なんですけど、ずっと俯いたままなんですよ。
遅れたから申し訳なさそうとかにしている、とかそういう感じではなかったです。
どちらかというと、他人に顔を見られないように、俯いてしているような感じでした。
ほかの周りの人たちですか?
誰も気が付いていなかったです。
たぶん、僕以外も人には見えていなかったんじゃないかと思います。
それから、高橋は僕の隣の席に座りました。
それでもずっと俯いたままでした。
しばらくは講義を受けていたのですが、高橋が何かをしているような動きは感じませんでした。
私はメールに添付されていた画像のことを聞こうと、高橋の方を見ました。
目が合いました。
でもそれは、高橋の顔ではありませんでした。
それで、周りを見渡したら、みんな同じ顔なんです。
耐えられない、とかそういうのじゃなかったんです。
でもそうしないと、いけないような気がして。
だから、刺したんです。
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