3.背中合わせの相棒

敵に囲まれ、相棒と背中合わせに敵と向き合う彼らは絶体絶命の大ピンチに間違いない。この状況をどうすれば切り抜けられるのか、いくら考えようと答えも浮かばず、想像する未来は死のみ。

表情に諦めが浮かぶ男が今想うのは相棒である彼女のことだ。


「なぁ、この戦いに生きて帰れたらお前に言いたいことがあんだ」

「それ絶対聞けないやつだ」

「んでだよ」

「そーいうの、死亡フラグだっつーの」

「…………」


笑った彼女に彼は言葉を返せない。なにせ、この状況では生きて帰れる方が奇跡だ。彼女が彼の言葉を聞ける可能性は限りなく低いだろう。


「ねぇ」

「ん?」


今度は彼女が話しかける。もう悠長に話していられる程の時間は残っていない。恐らくこれが最後だろう。


「──好きだよ」

「っ」

「答え、聞かせてよ」

「……あぁ。好きだ。──愛してる」


彼の言葉に彼女はニッと笑みを浮かべ「だったら!」と声を張り上げた。


「私達は生きる! 絶対に死なない! ここを突破して一緒に帰ろう!」

「──あぁ!」


先程までの諦めはもうない。

この場を生き延び、愛する者をその腕に抱く為、彼らは目の前の敵に向かって地を蹴った。

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