第三話 スキル調査


 私が鑑定を得たように、千明もスキルを得ていた。


「それで、千明は、どんなスキルを得たの?」


「”水”スキル?」


「疑問形で言われても、解らないわよ」


”みゃみゃみゃぁ”


「え?アトス?本当?」


「千明?」


「あのね。茜に、見てもらえれば、”スキルが解る”だって」


「え?スキルは見えないよ?」


”にゃっにゃぁぁ”


「え?そうなの?千明。私の手を握ってくれる?それで、”ステータス・ディスクロージャー”と、私が言えばいいみたい?」


 孔明さんと蒼さんの視線が怖い。円香さんが、私の肩を触ろうとしているのを、孔明さんが抑えている。

 解っています。後で、しっかりと説明します。正直な話をしたら、怒られるけど、言わせてもらいたい。


 そうだ!その前に、確認しておきたいことがあった。


「クロト。ラキシ。アトス。今、いろいろ教えてくれているけど、”魔物”としては知っている事なの?それとも、主殿の関係だから、知っている事なの?」


「え?」「あっ!」「茜!」


”にゃ!”

”ニャニャニャァ”

”みぁみゃあ”


 やっぱり、よくわからないみたいだ。


「千明?」


「うん。アトスは、よく解らないみたい。でも、”教えてもらった”みたいだね」


「同じだね。そうなると、ライ殿?かな?」


”にゃ!”


「違うの?」


”にゃぁ!”


「え?ライ殿だけど、ライ殿じゃない?」


”にゃ”


「でも、教えてもらえる?」


 やっぱり、よく解らない。


「茜。クロトに、”ライ殿の本体ではなくて、主殿から教えてもらっている”のか、聞いてほしい」


”にゃにゃにゃ!”


「円香さん。クロトがいうには、”誰なのかわからないけど、教えてくれる”みたいです。あっ毎回、違う声らしいです」


「わかった。検証が不可能なことがわかった。ただ、魔物には知っていて当然の知識だと思って居た方がいいようだな」


「はい」


 千明のスキルの検証が途中だった。


「千明?」


 千明に向けて、手を差し出す。


 千明も待っていてくれたようで、握ってすぐに”ステータス・ディスクロージャー”と唱えた。


 その瞬間に、ステータスが先ほどとは違って詳細に表示される。

 ステータスは、”ある”とも”ない”とも言えない表示だ。読めるけど、意味が解らない。


「茜嬢。ステータスの変化は?」


「同じです。もっと、意味が解らない表示です」


「ふむ・・・。書き出してもらえないだろうか?」


「わかりました」


 書き出したら、英数字の羅列だ。ただ・・・。

 あっ多分。これ・・・。いや、後だ。今、考えると、確実に孔明さんは、ステータスの書き出しを頼みだす。でも・・・。


「茜。スキルが見えているよ。それでどうしたらいいの?」


 多分、これで、孔明さんや蒼さんは、自分たちのステータスを書き出せとは言わないはずだ。スキルを秘匿しておきたい気持ちが働くはずだ。円香さんは解らない。


”みゃっみゃぁあ”


「あのね。新しいスキルがあるでしょ?」


「新しい・・・。あっうん。あるよ。言っていい?」


「いいよ?」


「わかった。”スキル水”だね」


「そうそう。それで、”スキル水”に鑑定を使えば、詳細が解るみたい」


「え?うーん。やってみるね」


/// スキルウォータ

/// [ボール][ランス][カッター][ウォール][シールド]

/// [ ][ ][ ][ ][ ]

/// [ ][ ][ ][ ][ ]

/// [ ][ ][ ][ ][ ]


 よくわからないけど、内容を書き出して千明に渡す。

 書き出している最中に、蒼さんが覗き込んできた。隠すほどの事ではないので、そのまま見せていた。


「茜。この空白は何?」


「うーん」


”ニャウ!ニャウ!フニャァ!”


「え?そうなの?」


”にゃ!”


「ラキシとクロトがいうには、”空きスロット”だって」


「”空きスロット”?ゲームとかでは聞くけど・・・」


”みっみゃぁみゃぁ”


「へぇ・・・。あっ・・・」


”二ッニャウゥニャウゥ”


「へぇ・・・。あっ・・・」


 千明と同じ反応をしてしまった。多分、千明もアトスから聞いたのだろう。私の顔を見ている。最初に説明を受けた千明が報告をすべきだと思うけど・・・。


「はぁ」


 円香さんだけじゃなくて、蒼さんも孔明さんも、目が怖いです。

 ”自分たちだけで納得しているな!”と言っているのが、視線からでも解る。もう一度、千明を見ると首を横に振っている。


「茜!」


「わかりました。空白は、スキルを保存できる個数らしいです」


「スキルの保存?」


「そうです。それで、スキルを保存して、次回から使えるようになるようです。あっスキルを作るのは、新しいスキルを使ってみれば解るようです」


 蒼さんが何かを思い出したようだ。

 何か、”ぶつぶつ”と言っている。そうしたら、蒼さんが覚悟を決めた表情で、手を差し出してきた。


「え?」


「俺のスキルを見てくれ」


「いいのですか?」


「あぁ考えてみれば、見られて困る事ではない。吹聴されたら困るが・・・」


「しませんよ」


 蒼さんの手を握ると、蒼さんは”ステータス・ディスクロージャー”ではなく、”スキル・ファイア・ディスクロージャー”と唱えた。


「え?」


「どうなった!?」


「あぁスキルファイアだけが見られるようです」


「よし!千明嬢との話を聞いていて、”ステータス”は全部で、その部分を見せたいスキルに変えれば、開示される情報を絞れるのではないかと・・・。思った通りだ!」


 大興奮という感じだ。

 そうだ。私たちは、新しい事を調べたり、知ったり、珍しい物を取得したり、未知を減らすのが楽しくてギルドなんて組織に属していた。最前線ではないのが解ったけど、私たちは、人が知らなければならない情報を調べている。人類の最前線だ。


/// スキルファイア

/// [ボール][ランス][ ][ウォール][シールド]

/// [ショット][ ][ ][ソード][ ]


 スキルの空きが少ない。

 それに、ショットとソードが追加されている?カッターが表示から消えている。


「ねぇクロト、ラキシ。段があるけど、何か意味があるの?それから、千明と空きスロットの数が違うけど、何か理由があるの?」


 私の質問に、クロトとラキシは、千明の膝の上で寛いでいたアトスを呼び寄せて、何やら話を始めた。

 猫の会議風景に和んでいたら、和んでいない者たちが私を睨んでいた。


 猫の会議が終わらない状況を利用して、私を睨んでいた者たちが、自分が持つスキルの鑑定を依頼してきた。


 孔明さんは、スキル力だ。今までの”魔法”と呼ばれる物とは違っていた。身体強化系らしい。これは、鑑定が教えてくれた。使い方も説明が出てきた。孔明さんに説明したら驚かれた。孔明さんでも知らないことが含まれていたようだ。少しだけ実験する必要があるとか言い出していた。


 問題の人が目の前に居る。

 私が、手をひっこめても、ダメだ。肩を凄い力で掴まれて、”スキル・ウィンドウ・ディスクロージャー”と”スキル・ストーン・ディスクロージャー”と”スキル・サーチ・ディスクロージャー”と連続で唱えた。


 円香さんは、ダブルではなく、最低でもトリプルなのか・・・。

 そういえば、私はフォースになるの?違うよね?


 円香さんのウィンドウは風系。ストーンは土系。

 問題は、サーチだった。


 円香さんのサーチで使えるスキルが、全部・・・。ダメだ。これは、ごまかせられない。


「円香さん」


「なんだ?」


「もしかして、サーチ系のスキルは、”日本語”で発動していませんか?」


「よくわかるな?」


「はい。スキルの表示が文字化け・・・。とは、少しだけ違いますが・・・。表示が、今までの様に表示されていません」


「ほぉ・・・。まずは、書き出してもらえるか?」


「・・・。わかりました」


 諦めた。

 この後、ステータスの調査が入るのが決定した。


 クロトとラキシとアトスの会議はまだ続いている。

 あの会議が終わったら、またスキルの調査が入るのだろうな。


 私のスキルの調査もしておこう。

 攻撃系のスキルは必要ないからいいけど、なんか私のスキルだけ調査系に偏っていない?

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