しちしちにち

堪え性のない私は

すべてのイベントが嫌いだった

特に人が一つの部屋で

こそこそ、コソコソ、ひそひそ、ヒソヒソ

みぃんな違うことを話しながら

いろんな方向に目玉が動く

誰かと目が合えば、

そっぽを向いて

ひそこそこそこそ

とてもうるさくてしかたがなかった


そのうち食事になって

さっきよりは静かになる

でも、その目線は、

私より少し離れた男の子に注がれていて

気まずそうに食べる彼が

今にも泣きそうに見えた


しばしの時が過ぎて

女の人は片付けに

男の人は一つの机に集まり

子どもは隣の部屋に野放しとされた

私以外の子は外にでて追いかけっこをしている

ひとりが好きな私は、

それを見ながら縁側に座っていた


遠くから声が聞こえる

あずかったら、いさんが、でも、

よゆうが、すこしのあいだ、かね

悪いことを言っているのがわかる

だから、私の隣に立って庭を見ている彼は、

全て受け止めていたのだと思う

見上げ、映り込んだ瞳は光りを帯びず

服より黒く、噛みしめるように

楽しく遊んでいる子たちを見てる


「あそばないの?」

隣にいる私が煩わしいのか、

こちらに顔を向けずに彼は言う

私は答えなかった、そういう子だった


「これも、形見分けっていうのかな」

「でも、もっていくものは決まったのに」

「ボク自身が形見みたいだね」

「けっこうな、お金みたいだよ」

「どっちが形見なんだろう」

「知らない親戚のウチなんだよ、おばあちゃんじゃないんだ」

「おかしいよね、おかしいよね」

「ボクだけのモノなのに!」


ダンッ


足蹴りされた木目板が悲鳴をあげ、

人塊の声が消えた

私もびっくりした。心臓が飛び起きた。


「じゃあね」


彼は去って行った。それ以降、私は彼を見ていない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る