『テッドの場合』


とある青年にキャンディを差し出してみたところ。


「お、良いのか? 悪いな」


素直に受け取ってくれました。


ただ、そのキャンディはすぐに食べたりせず。

腰の冒険者カバンの中にガサっと突っ込まれました。


そして、青年はスタスタと立ち去ります。



その背中を見つめながら。

私は察しました。



あの方は、きっとあのまま、カバンに入れたことをずっと忘れていて、何か月も経った後に、カバンの底でカピカピになったキャンディを発見する。

そういう感じの人に違いありません。



でもきっと、放り捨てたりはせず。

包み紙に張り付いたベトベトのアメを剥がして食べ。



「……意外とうまいな、ちょっと変な味するけど」


なんて言うのでしょう。


――たぶんですよ、たぶん?


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