怒り

御香がこの日記を書き始めてわかったことがある。

みんな“怒っている”

何かに。怒っている。

バラバラだ。怒り方も対象も。

でも、共通して怒っている。

わたしにはもはや残っていない感情だった。

でも、本質的に知っていた。

怒りとは生きること。

別たれた自分たちは黙って頷いていた。

知っていた。

知らないふりをしていた。

何も感じないように大人になりたかった。

社会の歯車になる練習をしていたかった。

無理だと思う。

だってこんなに拳を血が出るまで握りしめている。

それを必死で抑えるもう片方の手は、力が入りすぎて食い込んでいる。

わかっていたよ。知ってたよ。考えていた。

わたしは僕は俺は自分は。

怒ろう。

この世界に。不条理さに。人間に。

こんなに裕福で育ってきたのに、根本的には何もできていないのだという劣等感に。

面倒くさい人間の損益関係、つまり友情や愛に。

怒ろう。

自分を否定する奴は原型をとどめないほどに潰してしまおう。

そんなことでしか生きていけない自分を潰そう。

彼らは同意した。

俺は彼らを食べた。

食べて食べて一つになった。

残ったのは御香と私と俺だった。

俺は私を使い分けて生きていく。

生きていく、怒っていく。

生き(いかりくるってころし)ていく。

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