第6話 2人の痕跡
3階層のボス部屋には魔物と遭遇する事もなく、意外な事にあっさりと辿り着いた。
進んだ距離は2000m位だろうか、1階層の時と比べ倍になっている。
扉の前で今一度装備を見直した。問題ないので剣を構え扉を開く。石の扉にも関わらず家の扉の如く簡単に開いた。
今度は30m✕30m位の正方形の部屋だ。扉を潜ると入ってきた扉は消えていった。
しかし何者もいなかった。
部屋の中央にはやはり宝玉があり、ボスを倒した後のようだ。
予測の範囲内だが、メアリー達は4階層に進んだと判断した。
躊躇しても仕方がないので早速宝玉に触れた。
得たのは
スキルコピー
だった。
思わず唸った。これってチート能力じゃないかと。
先の付与とコピーを組み合わせれば少なくとも全属性適正をメアリーにあげられる!と呟いた。
ただ、何かしらの条件が有るのだろうが、ギフトを開放し、確認している暇はない。ここから帰った後だ。
そして扉が2つ出ているのが分かった。
一つは下に向かう扉。
もう一つを見て怒りが湧いた。
出口と有ったが、4人まで通れ、残り1人と有った。
全員行けないのか?と唸った。
5人とも生きているとして、3人がこの扉を潜った。
普通で考えると女子2人と男子の弱い方だが、果たしてそうなのだろうか?
メアリーがどちらに行ったかを考えた。
誰か2人が死に、生き残った3人が出口に入ったとも考えられなくはないが、これまで分岐路がなく一本道だった。
これまでは戦いの痕跡は有ったが、死体や体の一部を見てはいない。
つまりここまで5人が辿り着いた筈だと考えるのが普通だ。
ユリカはメアリーと行動を共にするだろうな。メアリーと別れ、男子と一緒には行動しないと思う。
メアリーが僕をを置いて出口に向かうだろうか?いや、しないだろう。僕がメアリーの立場なら、危険を犯してでも下に向かって助けに向かう!
やっぱ男子が女子を見捨てて逃げたんだと思う!
にしてもいやらしいな。これが5人がいけるなら、僕が死んだとして無理にでもメアリーを出口に連れて行ったのだろうが、4人までだ。あいつら絶対に許さないぞ!
そう結論を出しメアリーとユリカは下に向かったと判断した。
下に行くのには人数制限が無いようだが、一体何があったのか。多分怖気付いた者が出口に飛びついたのだろうとため息が出た。
考えても仕方がないので、下に降りる事を選び、扉を潜った。
やはり4階層のスタート地点で、扉は消えた。
気配は何もない。やはり一本道のようで、ライはメアリー!今助けに行くからな!と自分に言い聞かせ、先を進む。
駆け足は足の負担を考え速歩きにした。4階層のボス部屋で即時戦闘になる事も考慮し、その時に動けないと話にならないから、流行る気持ちを抑え今は我慢である。走って行きボス部屋で即戦闘となった時に動けないと話にならないからだ。
やはり途中途中で戦闘の痕跡がある。矢と水溜りもあるからやはりユリカがメアリーと行動を共にし、魔法を使ったようだ。所々石も落ちており疑いようがなかった。
決定的なのは魔石の近くにまだ凍った氷柱が落ちていたからだ。即ち氷が溶け切らない位の時間しか経過していないのだ。
脚にもう一度ヒールを掛けてから屈伸をして状態を確かめたが、どうやら完全に治ったようだと判断できたので、遂に駆け出した。
2500m程進むと遂に扉が見えた。
このダンジョンは基本的に扉はボス部屋にしかない。少なくともそう聞いていた。
また、進む距離がどうやら階層を進むごとに500m程増えているなと感じた。
それと一度倒した魔物は直ぐにはリポップしないんだなと感じていた。
そうしてライは戦闘準備をし、扉を開けるのであった。
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