第22話
リピリノア王国の第二王子ルハルトは、王族でありながら世間からは隠されていた。そんな彼が隣国プールゼアの王女ミザアに恋をする。第一王子のランラドルの婚約者として訪れた彼女は、赤黒い髪に、エメラルドグリーンの瞳で大人の雰囲気があった。
彼女は、義弟となるルハルトに優しく接する。まるで、彼が彼女に惚れているのを知っているかのように。遅い初恋に翻弄されるルハルトは、『あなたが英雄になれば、私はあなたのもの』というミザアの言葉に惑わされ塔に取らわれているレイリーと共に、龍退治へと向かってしまう。
ミザアに指示された通りにルハルトは、レイリーに交換召喚させ弱い龍を倒す。そして、レイリーを一人置き去りにして戻ったのだ。
「龍の邪気を払った!」
一時的に、世界の災害は収まったように見えたが、嵐の前の静けさだったようだ。ミザアも手に入れた。そう思った矢先にレイリーが帰還して本当の事が暴露され、勘当されてしまう。もちろん、ミザアに言われたと言ったところで、取り合ってもらえず途方に暮れる。
そして、ミザアのプールゼア国とリピリノア王国の戦争が勃発。守りの龍を消し去ったとプールゼア国が仕掛けたのだ。突然の事にリピリノア王国は、あっという間に敗北。ルハルトは、帰る場所を失った。
彼は、守りの龍を戻す方法を探すのだった――。
◇
「と、こういうお話よ」
「……あ、姉上」
『なんと間抜けな第二王子でしょう』
「ちょ、これは小説の話だからな。俺はこんな間抜けじゃない!」
ルブックバシー、もう黙って。
口を押えつつ抱き上げた。
「し、失礼しました」
私は、ルハイト様に頭を下げる。
「いやいい。それより、この国が滅びるなんて聞いておりません」
「そうね。言ってないからね」
「そうじゃなくて」
バシンと掌でテーブルを叩いてルハルトは言った。
「だって、信じてくれていなかったじゃない」
「それは、レイリーが塔に捕らわれていなかったからで……」
ルハルトがそう言うと、二人は私を見た。次は私の番だと。
「えーと、簡単に申しますと、本物のレイリーがその『交換召喚』で私と自分を交換したのです。それで私は、記憶喪失ふりをして過ごしています。ただ、ここが小説の中で、5歳ぐらいに捕らわれるかもという事をメモに残していったので、ちょっとだけ知っていただけです。あ、ルブックバシーは、私が閉じ込められた時に知り合った精霊です」
「閉じ込められたって誰に?」
首を傾げながらランゼリー様が問うも言っていいのかと迷う。
「えーと。ちゅっと複雑で……」
「交換召喚されたのっていつの話だ」
「5歳になる直前です……」
二人は、私を可哀そうにと言う顔つきで見た。
「そんな幼い子を召喚するなんて」
「よく、ぐれずに生き延びたな」
「ル、ルブックバシーがいたので」
二人は、私が5歳の年で召喚されたと思っているみたい。ここでの暮らしを換算すると20歳なんだけどね。
「でもよかったわ。とりあえず交換召喚を持つレイリーを探し出して、ルハルトが誘惑されても大丈夫の様に手を打とうと思っていたんだし」
「だから、誘惑されませんって!」
「小説ではそうなっているの」
「あのですね……誘惑してくるってわかっているのに、それで引っかかったらバカでしょうが!」
そうよねぇとランゼリー様がため息をつく。
ムムムとルハルト様が眉を上げた。
「あの、とにかくそれは二年後なのですよね? それまでに対策を立てておけば宜しいのでは?」
目の前で姉弟喧嘩しないでくださいよ。
「向こうは、我が国と協定を結ぼうと見せかけて、戦争を吹っ掛ける気ですからね。こちらも用意せねばいけません」
「あ、もしかして、それであの学校を提案なさったのですか?」
「それもあるけど、あなたの為でもあるのよ」
「俺の為ですか?」
ランゼリー様は、にっこり微笑み頷いてみせた。
「あなたが、一人ぼっちにならないためよ。もしくは、好きな子を作る為」
「………」
ルハルト様が眉間に皺をよせムッとする。
隣国ミザアの策に溺れない様にする為だと言われたからだった。
すでに詰んでいるのにどうすれと?これ以上追い打ちをかけないでください すみ 小桜 @sumitan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。すでに詰んでいるのにどうすれと?これ以上追い打ちをかけないでくださいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます