第20話
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。会ってお話がしたかっただけだから」
震えているのは、王族を相手にしているからだと思っているみたいだけど。なぜ私とお話をしてみたかったのかしら。私って、そんなに有名? そんなわけないよね。
「姉上、彼女、黒髪ではなくて濃い紫では?」
「あら本当ね」
ぎくり。
もしかして、黒髪って何かある色なのかな? クリーチュさんが気にしていたのは、母親に似てないからではなくて、
そういうのも出来れば手紙に書いておいてほしかった!
「姉上? 確かにレイリーという令嬢はいたけど、黒髪じゃないし」
「でもこの上なく黒に近いわ」
「……でも黒じゃない」
ふ、二人のやり取りが怖いんですけど。本当は、黒髪だとばれたらどうなるのかしら。
「あの……私はもう帰っても宜しいのでしょうか?」
バレる前に撤退よ。
「待って。来たばかりじゃない」
「ですが……勘違いですよね?」
「うーん。あなたで間違いないと思うわ」
「はぁ……。姉上も強情だな」
ルハルト様が、大きなため息を吐きながら言った。
どうやらランゼリー様が私を呼んだらしい。王命ではなかったのね。でも安心はできないわ。私の髪の色の事を知っているのだから。
「まずは、場所を移しましょうか。こちらへ」
ランゼリー様がそう言って立ち上がると、ルハルト様も仕方がないという感じで立ち上がった。スタスタと行く二人に黙ってついていくしかない。
「お嬢様どうしましょう」
ボソッとメアリーが私に言った。
たぶん髪の色の事だと思う。
母親に色を似せたんだと思っていた私は、黒髪が特別なのかなんて聞かなかった。マリッタも母親に似ていないとは言っていたけど、それ以外は言っていなかったし。
「大丈夫よ、きっと……」
震える声でそう返す。全然大丈夫の様に自分でも聞こえない。
「どうぞ、こちらへ。新しいお茶を三人分お願いね」
「かしこまりました」
え? 三人分だけ? あ、そっか、メアリーは侍女だからあたらないのね。
「悪いけど三人だけでお話がしたいの。あなたは、そちらでくつろいでいて」
「……かしこまりました」
メアリーは、チラッと私を見ると軽く会釈して部屋を出た。
さっきの部屋の隣の部屋だけど、ドアは一か所。窓から出入りしない限り、入ってきたドアからしか出られないからどこかに連れていかれる事はないと思うけど、どうして引き離すのよ。
「ごめんね。そんなに怖がらないで。ちょっと秘密の話をするから」
丸いテーブルに三人腰かけ、侍女が紅茶を入れると部屋から出て行き、本当に三人になった。ルブックバシーは私の膝に居るけどね。
「何か質問あるか?」
突然ルハルト様がそう問いかけてきた。
何を質問させたいのだろう。黒髪の事? それともなぜレイリーという令嬢を探していたかって事?
「と、特には……」
「ふーん」
「ふふふ。あなたの事は、別に何とも思ってないようね」
うん? ルハルト様の事?
何だろう。さっきまでの態度と違ってルハルト様は、頬杖を突き私の事をじーっと見ている。
「えーと……」
なんなのよ一体。
「俺の事知ってる?」
「え?」
知るわけない。今日初めて会ったんだし。あれ? でも、第二王子なんていたっけ? でも王族なんだよね。うーん。
「ぞ、存じません。お二方には初めてお会いしましたし……」
「……なるほどな。ちゃっちゃと調べて返してやろう。縮こまってかわいそうだ」
「そうねぇ。では」
何だろうと思っていると、テーブルの上にあの水晶玉を置いた。どういう事!?
って、やっぱり『交換召喚』持ちだと疑われているの?
に、逃げないと。ってどこに逃げるのよ。
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