異世界で魔王に転生して大陸を平定したら、元の世界に大陸ごと召喚されました
黄昏時
第1話 突然にして予想外の帰還
「大きな揺れを感じて起きてみれば。一体……どうなってるんだ」
俺はそうつぶやきながら頭を抱える。
現在俺の正面にはゲーム等でよくある、MAPのようなものが青白いウィンドウに表示されている。
そのMAPには中央に大きな大陸が一つと、左上にもう一つ島国のようなものがあるだけで、他は全て真っ黒な靄のようなものがかかっており確認する事が出来ないものだ。
そして問題なのはそのMAPの左上に表示されている島国だ。
その島国は明らかに見覚えの形をしている。
「これはどこからどう見ても、日本だろ」
そう。
それは生前幾度となく見た、日本列島と全く同じ形なのだ。
生前というのは俺が一度死んでいるからに他ならない。
交通事故に巻き込まれ一度死に、次の瞬間目覚めると俺は全く別の人間……いや、別の生物へと生まれ変わっていたのだ。
所謂転生と言うやつだ。
しかも同じ世界への転生ではなく別の世界、異世界への転生だった。
そして俺が生まれ変わった生き物はほとんど人間と同じ見た目だったのだが、唯一違う点があり人間ではないと思ったのだ。
その点というのは、頭に角が二本生えていたという事。
転生してから少ししてわかった事だが、案の定俺が生まれ変わったのは人間ではなくその世界では魔人と呼ばれる存在だったらしい。
そしてその転生から紆余曲折あり、俺は生まれた大陸を平定し魔王と呼ばれる存在にまでなってしまっている。
少し話がそれたがつまり俺は別の世界の別の大陸に居り、前世で生きていた日本がこのMAPに表示されるなんてことは本来絶対にあり得ない事なのだ。
何故なら俺が現在魔法で表示しているこのMAPは、この世界で俺が行った事のある場所を正確に表示するという効果の魔法。
故に違う世界であるはずの日本が表示されるなんてことはあり得ないのだ。
「クソ……本当に何がどうなってやがるんだ」
「陛下!! ご無事ですか!!」
俺がそうつぶやいた直後、部屋の扉を焦るようにノックした音が聞こえたかと思うと、切羽詰まった男性の声が聞こえてきた。
「大丈夫だ!」
「良かったです。中に入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ」
俺は部屋の外から聞こえた声にそう答えながら、表示していたMAPをすぐさま消す。
直後扉が開き、先程まで聞こえていた声の主が部屋の中へと入ってくる。
その人物はキリッとした顔に眼鏡をかけ、頭から二本の角が生えている男性。
名はザハール・リール。
俺の腹心にして、この国の頭脳と呼んでも過言ではない存在。
「状況は?」
「先程の大きな揺れの直前、上空に非常に大きな光る模様のようなモノを確認。その後その模様がより強い光を放った直後、先程の揺れが発生いたしました」
上空に光る模様?
そんなのこの魔法が存在する世界に転生してからですら、見た事も聞いたこともないぞ。
だが今の話を聞く限り、その模様とやらがあの揺れに関係しているのは間違いない。
「僭越ながら、私の見解を述べさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「頼む」
「ありがとうございます。私の見解としましては、超大型の転移魔法が発動されたのではないかと愚考いたします」
転移魔法だと!
仮に……
仮にだ!!
ザハールの言うように転移魔法が使われたのであれば、あのMAPに表示されていたことに関して説明がつく。
だが果たしてそんな事が可能なのか?
俺自身も転移魔法が使えるからこそ、より信じられない。
「……その考えに至った理由を聞いてもいいか?」
「勿論でございます。あまりにも一瞬でしたので私の気のせいという可能性も十分にありますが、光が消える前と消えた後で空が変わった気がするのです。具体的には雲の形が直前と直後で全く別の物になっていた気がするのです」
「……」
こればかりは本人が前置きしたように、気のせいである可能性も十分にある。
だが仮に気のせいではなくザハールの言ったように転移魔法が使われており、更には俺の考えているような状況だった場合、かなり面倒な事になってしまう。
どちらにしても早く動かなければ取り返しのつかない事になりかねない。
「ことは緊急を要す。不確定要素は多いが超大型の転移魔法が発動されたと仮定し行動する。直ちにそれぞれの隊長格を招集。ザーハル指揮のもと周辺状況の把握、それと並行して先程の揺れによる被害状況の確認及び救援にあたれ。ただ周辺状況の把握に関しては出来るだけ隠密性に長けた者を選抜し、我々以外の存在に気づかれてはならない事を言明し徹底させろ」
「かしこまりました。では急ぎ行動させていただきます」
ザーハルはそう言って俺に向かって頭を下げると、「失礼いたします」と言って部屋を出て行った。
今はこれが最善……のはずだ。
あまりにも情報が少なすぎる以上、出来るだけ情報を集めなるべく後手に回らないようにしなければならない。
俺一人なら大抵の事はどうとでもなるが、俺を慕ってくれている人達を守るとなると話が変わってくる。
俺は例え最善でなくとも、最悪ではない修正のきく一手を打ち続けなければならないのだ。
それが上に立つ者の責任だと、この地位についてから常々実感させられている。
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