ある日テイム能力に目覚めた、あたしは・・・

せのしすい

1 小五の目覚めは出会いと別れ

 あたしが小学五年生になった春、家に帰ってきてすぐにあたしは違和感を感じた。

 そう、何者かが潜んでいる! ってね。

 まあ、直ぐに気のせいだと思って、ママの用意してくれたおやつを食べてたり、宿題しながらリビングでテレビを見たり、いつも通り過ごしてた。


 違和感なんて忘れて、のんびりTVを見ながら過ごしてたら、夕ご飯の買い物からママが帰ってきた。ママがトントントンって包丁を鳴らして、料理をする音を聞きながら「今日の夕ご飯は何かな? 楽しみだぜ!」なんて、あたしが呑気に言ってたら奴が現れたんだ!


 そいつは、今まで人の目に付かない様に、用心深く家具などに身を隠し行動していたんだ。あたしは気が付かなかったんだ! いつの間にか黒光りする体を、テレビ画面に張り付けていたのだ。そう、あの黒い悪魔Gが!!


「ひぅっ……!」


 そう、あたしはビビった! その嫌悪感を抱く黒光りする体に、不快感をもたらすカサカサという音。しきりに動かされる二本の触覚に、いつ羽撃くか分からない羽!

 ふう、思わず可愛い声が出てしまったが、しょうがないだろ。

 あたしはしがない小五女児だからな!

 まあ、そんなあたしに奴はまるで『やあ! お嬢ちゃん、ご機嫌いかが?』と言ってるかのように触角を動かした。

 そして、カサカサと音立てながらあたしに向かって来やがったのだ!


「くっ……こっちにくるなぁっ!!」


 あたしがこんな情けない声を出した瞬間『☆彡キュピーン!』という音が響いた。


『種族ゴk――』


 その名を出すな!!


『種族Gをテイムしました』


 はぁ? テイムぅ……?? 確かアニメ『モフモフ従魔士=モフモフのために転生しました=』通称モフ転の主人公が、テイムっていうスキルの力で、モフモフ達をゲットする。あのアニメに出てきた能力のテイムのことなのか?


 あたしはGの奴をチラッと見た。

 すると奴は、こちらに来るのをやめ、その場にとどまりじっとしていた。

 まるで『お嬢! あっし、お嬢の言いつけ通り、そっちに行ってませんぜっ!』と言ってる様に見えた。


 それにこれは何だろう?

 あたしは何故か、Gの奴に親しみを持ち、心なしか可愛く思えてしまったのだ!

 そして、不覚にもわたしは、『G吉』何て名前が良いかもと考えてしまったのだ!


『種族Gが個体名G吉になりました』


「Σぶふっ!?」


『テイム能力の深度が上昇しました。深度上昇により、従魔ギフトが獲得できるようなりました』


『従魔ギフトにより各能力が上昇しました。さらに特殊能力、エアロセンサーとGダッシュを獲得しました』


「ほえぇぇぇ!?」


 おいおい、あたし先からまともに喋ってねぇじゃねえか! っていうかいろいろ起こり過ぎだろ!!


「結衣ちゃん、どうしたの~? 先から変な声出して~?」


 どうやらあたしが変な声を出し過ぎて、心配したママがこちらに来そうな気配だ。

 G吉の奴は『お嬢何でも言ってくだせぇ!』って感じであたしを見ている。

 うん、どうしたらいいのか、あたしにはさっぱりだぜ!


「もう、結衣ちゃんったらどうしたn――」


 ゾクッ! とした。まるで部屋の温度が急に下がった見たいにあたしは感じた。


 その時、あたしが見たのは、右手にハエ叩き左手に凍結タイプの殺虫剤を持ち。

 鋭い目つきで、獲物を確実に仕留める、ハンターと化したママだった。


 ねぇ、ママ。今、知ったはずのGに対して、いつハエ叩きと殺虫剤を用意したの?


「このG! 私を前に微動だにしないなんてね。その上可愛い結衣ちゃんに、怯えの表情させるなんて、グッジョブ! やるじゃない! でもね、私の家テリトリーでGは生きて居てはいけないのよ!!」


いや、グッジョブってママ何言ってるの!?


「行くわよ、必殺! 殺虫圏リーサルインセクトエリア!! オマエハモウニゲラレナイ‼」


 え? いったい何が始まったの!? 

 ママが突然腕をクロスさせポーズを決めて、必殺! とか言い出すし。

 それに何か、部屋が暗くなってスローモ-ションになってるんですけど?!?


『お嬢、どうやらあっしは此処までの様で、短い間でしたがお嬢にお仕え出来て幸せでごぜぇました』って雰囲気で触角を動かすG吉が、最後の別れを言っているように見えた。


 Σえ!? ちょっ! お前死ぬの? G吉ィィィー!!


 ママの顔上部が不自然に暗くなり、左目から青いオーラ立ち昇る!

 青いオーラは、ママの左手に持つ凍結タイプ殺虫剤にチャージされていく!

 今度は、ママの右目から赤いオーラが立ち昇り、右手に持つハエ叩きにチャージされ、真っ赤な血のように染めていく!

 そして、ママが動く。残像を残しながらスルリ動き、Gに接近し左手の殺虫剤に込められた、青白く光るオーラと共に、凍結剤が猛烈な勢いでブシュワァーッ!! と吹きかけられる!! 

 すぐさま、血のように真っ赤なオーラをまとった右手のハエ叩きが、増大する赤いオーラと共に、上段からのオーバースイングの振り下ろしでバキャンッ!! と炸裂する!! ママの必殺コンボ攻撃殺虫圏リーサルインセクトエリアが決まったのだ!


 次の瞬間。部屋の明るさは戻り、スローモーションだった時の流れが、本来の時の流れに戻ったのだった。


「ふぅ~。このG、まったく逃げないなんて驚いたわね。ささ、こんなばっちぃの、ポイしちゃいましょうね!」


 ママが再び腕をクロスに構え、ポーズを決めた後。

 ママはいい仕事をしたって顔しながら、モザイク必死な姿になったG吉を、トイレに流すのだった。


 ママの手に掛かり、潰され捨てられるG吉を見て、あたしは思ったんだ……。

 やっぱGは生理的に無理だわぁ~ってね!

 こうして、あたしはテイム能力に目覚めたのだった。


 今回の話はこれで終わりだぜ! 次の話も絶対読んでくれよなっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る