第54話 ストレートな男、高崎明翔
朝、登校して廊下を歩いていると、教室前に高崎明翔が壁にもたれてしゃがみ込んでスマホをいじっている。175センチと決して小柄ではない明翔だが、体を折りたたみコンパクトになってる姿が妙にかわいい。
「おはよ。こんなとこで何やってんの」
声をかけると、スマホから顔を上げて笑った。完全にかわいい。
「おはよう! 深月が来るの待ってたの」
「いいなー、呂久村。明翔にこんなかわいいこと言われてー」
「俺、高崎ならいけるわー」
途中で会って一緒に来ていたクラスメートの西郷と淀橋が俺をうらやむ。
「いや、共学なんだから明翔にいかずに女子にいけよ」
「明翔よりかわいい女子いねえじゃん」
「一条はかわいいけどなんか違うし」
「優はやめといた方がいいよー」
「こら、そういう言い方すんなよ、明翔。お前がいじわる言ってるみたいに見えるぞ」
「そういうちゃんと叱ってくれるとこも好き」
笑顔でド直球な明翔に毎日ドキッとさせられる。心臓に悪いわ!
「いいなー。毎日明翔に好きなところ言ってもらってー」
「高崎、俺も好きなとこないー?」
「名前がヨドバシカメラみたいで覚えやすいとこー」
「名前かよ!」
「俺は? 明翔。俺の好きなとこは?」
「西郷はー、西郷隆盛を思い出すところー」
「俺らの好きなところは中身ねえなー」
「おはよっ。教室の前で何してんの?」
佐藤颯太が155センチの小さな体に大きなリュックを背負ってその上に大きなフードを乗せ、強引に「かわいい」を演出しながらテテッと来た。
「明翔に俺の好きなとこ言ってもらってんの」
「何がうれしいのかまるで分かんないなっ。いくらかわいくても明翔は男じゃん」
颯太と西郷、淀橋が教室に入って行く。明翔がやっと立ち上がった。
「お前な、今毎日黒歴史を刻んでるんだぞ。そのうち好きな女子ができた時に後悔するぞ」
「後悔? なんで?」
「女子からしたら、男を好きだって言ってたヤツに惚れられても微妙だろ」
「俺が深月を好きだったから俺のことを好きになれないような女ならいらん」
笑顔でキッパリと言い切る。
ちょうどチャイムが鳴り、明翔も教室に入って行った。
……明翔は俺みたいに後悔するようなことはなさそうだな。どこまでもまっすぐでストレートなヤツだ。
ただ、闇モードに入ってしまってもストレートに突き進みそうで怖い。ま、約束してくれたから大丈夫か。もしも明翔がまたあっち側に入ってしまっても、まず俺の所に来るはずだから俺が止める。
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