尻が壁の穴にハマってたクラスのクールビューティな巨尻JKを引っ張って助けたら「自分は決してふしだらな女ではない」と必死に言い張られたけどそこそこ懐かれた
佐々木鏡石@角川スニーカー文庫より発売中
第1話壁と尻①
「誰か助けてぇ……」
その尻は、か細い声で途方に暮れた声を出していた。
俺――下校途中の高校ニ年生・藤村三蔵は、思わずその光景をしばしまじまじと観察してしまった。
尻だ。
人間の尻だ。
それも――相当に巨大な。
これぞ尻であると言える――実に見事なものだった。
あろうことか――巨大な人間の尻が、住宅街のブロック塀から突き出ていた。
否――ブロック塀の一部を突き破り、人間の尻が生えていたと言った方がいい。
アスファルトに咲く花ならぬ、コンクリートに生える巨大な尻――。
それはちょっと今まで見たことのない、とんでもなくド根性な尻であった。
気だるい下校途中、住宅街のブロック塀の穴に生えた人の尻をガン見しながら、戦慄に立ち尽くす男子高校生の俺――。
それは大変不躾な行為には違いなかったが、俺がそれを発見しなければ、この尻はこれからもずっとこうして途方に暮れ続ける他ない状況であるだろう。
俺がまじまじと観察したとして一体誰が咎めるというのだろうか。
しかし――見れば見るほど見事な逸物だった。
何故なのか、尻はスカートがまるっとめくれ、ストッキングに包まれた尻だけが宙に浮いている。
その黒ストッキングのせいでその尻の巨大さが気の毒なほどよくわかるのだけど――ちょっとこれだけの大物には、少なくとも俺は今までの人生でお目にかかったことがないように思う。
人間の尻というのはどれほどの大きさが平均なのかは知らないし興味もないけれど、目の前の尻はそれにしたってあまりに大きすぎる。
よく見れば、足元に落ちている紺色のスクールバッグの隅には、俺の通っている高校のものである校章も印刷されている――この尻と俺とは同窓、ということか。
宙ぶらりんになっている黒ストッキングの二本の足は、その上に乗っている巨大な物体を常時支えているとは思えないほど細く、ときたまふらふらと弱々しく揺れた。
ストッキングはその巨大な尻にたっぷり面積を取られているらしく、足が揺れる度にミチミチと命乞いするかのように軋んだ。
「誰か助けてぇ……死ぬよぉ……死ぬよぉ……」
巨大な尻が、その立派さに似つかわしくない声で弱音を吐いた。
その声に、あろうことか聞き覚えがあった。
この甲高いような低いような不思議な声――。
俺はその尻に向かって、思わず関わり合いになる声を発していた。
「
その声に、意外にもその尻は敏感に反応した。
「うぇ――!?」と悲鳴を上げた尻がビクンと高度を上げた。
「だ、誰……!?」
「あの、藤村だけど……藤村三蔵。
「二年C組……!」
その尻は助かったというように左右に揺れた。
「藤村……藤村三蔵君! わかるよ! あの教室の左後ろに座ってる……!」
「そうそう。百百川さんは一番前の一番右の席だよね?」
「そうそう!」
やはりこの尻――それも特大の尻は、同じクラスの
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