225 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉11 宝物庫の門番 スコーピオンナイト・エクソベノア1

 宝物庫に向かってチナに引き摺られて行く最中、灰影庭園の空が若干明るく為って来る。厚い雲が空を覆っている所為で分かり難いが、どうやら灰影庭園に朝が来たようだ。


「ふにゅ! わちもお宝の匂いを感じたのじゃ!」


 チナがそう言うと進行方向に、ちょっとした壁を思わせる様な切り立つ岩山が見えて来る。うん。あの岩山が宝物庫なんだろうな。


「わぷ!」


 ズザザァァッ!! 岩とはまだ距離が有るのだが、チナが急ブレーキを掛けて止まる。チナに手を掴まれてるつんのめてしまった。

 まあ、チナが手を離した訳では無いので倒れなかったけどね。


「もう! チナ危ないよ! 急に走り出すし、いきなり止まるし!」

「ふみっ! にゅぅ……、ごめんなしゃいなのじゃ」


 どうやら、暴走してた自覚はあった様で、俺に怒られてチナがしょんぼりする。

 う~む。しょんぼり顔も可愛いな。


 あとチナが急に止まったのは、宝物庫と言えば守護者や番人が居るのが当たり前だ。だから、このまま突撃しないで皆を待とうと思ったからの様である。

 うん。エルナを置いて行かなかった分、チナはちゃんと成長してるよ!


「追いついたのです!」

「はぁ~、追いつきました」


 チエと桜が直ぐに追いつき。

 そして、ゆっくりとサレスが搭乗する金色千手阿修羅と一緒にエナが追いつく。

 あ、大日金剛太郎マグナ・アウルムウルサスEXは、移動に向かないから当然分離してるよ。


「お、ちゃんと待ってるじゃないか。偉い偉い」

「ふぅむ? わしの分霊なのじゃし、流石に皆を待たずに宝物庫へ突撃せんじゃろ?」

「まあ、確かにそうなんだが。やり兼ねない雰囲気と言うかなぁ」


 確かに、単身で守護者に挑んだりしてないけどさ。

 このクエの難易度が低かったら、何かしてそうなんだよなぁ。

 まあでも、 今回のチナの暴走は、二つ目の宝物庫を発見した時我慢した分の反動っぽいけどね。


「むむぅ。わしもお宝は好きじゃが、チナの奴は随分とお宝に対しての反応が強調された子の様じゃのぅ」


 確か分霊の性格は、本体をベースにある程度のランダム性が有る見たいなこと言ってたし。エナの分霊として、そう性格付けをされたのはしょうがないのだ。

 ま。ちょっと困るけど、それが可愛いとも言えるよね。


「う~む。わしの分霊が迷惑を掛けてすまんのぅ」

「エナ、大丈夫だよ。チナは興奮してても、直前で冷静に為れる見たいだからね」

「ふむ、そうか。それならば大丈夫かのぅ」

「うんうん。大丈夫大丈夫」

「ふみゅ! わちは大丈夫なのじゃ!」

「これこれ、暴走したお主が言う事では無かろう?」

「みゅぅ」


 さて、それじゃあ気を取り直して。お宝をGETする為にパーティ全員で、宝物庫と思われる岩山に警戒しながら近づいて行く。


 ドッパァ――ン!! 突如、砂が爆発する様に巻き上げられる。


¶宝物庫の門番 スコーピオンナイト・エクソベノアのテリトリーに侵入しました。


 番人じゃ無くて門番? それに、フィールドじゃなくてテリトリーねぇ?

 これはBTフィールドが形成されるよりも、戦闘からの離脱が簡単って事なのかなぁ?


 ズドドォ――ン!! 灰混じりの砂埃が勢い良く振り払われ、金属質な光沢を持った赤と紫の毒々しい色合いの異形の人型の上半身が姿を現す!

 異形の人型の下には巨大なサソリの体が目に入る。スコーピオンナイトは、サソリ版のケンタウロスって感じの姿をして居たのだ。それに、人型の上半身も鋏の腕を持ち、下のサソリボディと合わせて四つの鋏を持って居る。毒針の付いた尻尾も上半身下半身合わせて二つだ。


 見た目の高さは8m程で、人型部分も半分の4mは有る。正面から見た横幅は12mを超えるか。そして、サソリボディの尻尾までを含む体長は、この灰影庭園の巨大ガメよりも少し長い位で21~22mって所だろう。


 うわぁ、スコーピオンナイト全身あの毒々しい色でしかも堅そうだぞ。

 色合いもそうなんだけど、コイツなんかキモいんですけど。

 それにコイツ、絶対毒使うじゃん!

 ってまあ、うちのパーティ毒効かないかすぐ直るんだけどね!


 ギチギチギチギ!! キシャァアアアアアアッ!! 俺の感情を読み取ったかの様に、スコーピオンナイトが気持ち悪く蠢き威嚇する様に吠える!


 キシャァァァアアアアアアアアアッッ!!! ズドドドドドドドォォォッ!!!!

 スコーピオンナイトが四本の鋏を前に構え威嚇がてら突っ込んで来る!!


『ディメンションピース!』


 ズガガガァァ――――ン!!!! 桜の発動したアビリティが、巨骸機構甲冑の別次元面体の全身を一瞬にして現界させ、スコーピオンナイトの突進を受け止める!!


 キシャ!? 『ディメンションピース』よって呼び出された巨骸機構甲冑が、スコーピオンナイトの突進を完全に受け切り、そのまま幻の様に消えて行く。


「『チャージダッシュバーニア』『タワーランスチャージ』!!」


 ズドォォ――――ン!!!! 巨骸機構甲冑の別次元面体が消え去った場所を、岩塔鬼槍 破照魔を構えた金色千手阿修羅が駆け抜け、スコーピオンナイトに強烈なランスチャージを打ち噛ます!!


 ズザザザァァァッッ!!!! ギシャアアアアアアアア!!? ランスチャージの衝撃にスコーピオンナイトが仰け反り、一瞬巨大サソリの下半身も浮かび上がる。


 ふむ。てっきり吹き飛ぶかと思ったのだが、スコーピオンナイトは思った以上に重い身体をして居る様だ。


 カッ!! ドン!!ドゴロロロロロロロォッ!!!! 『天神雷速』で加速したチエが空を駆け、あっという間にスコーピオンナイトの上を取る!!


「平伏しなさい!! 『雷空聖滅鉄槌拳』!!!!」


 ズドドゴォォ――――――ン!!!!!! バリバリバリバリバリィ!!!!!! 聖なる雷を纏い巨大化した自在空手サハスラブジャが、体勢を崩したスコーピオンナイトに重く叩き付けられる!!


 ちなみにこれは、自在空手と聖域結界エリフィウェンティアの力を用いたチエのオリジナルアーツだ。


 バチバチバチバチバチバチバチバチバチィ!! ガガガガガガガガガアァァッッッ!??!?!  『雷空聖滅鉄槌拳』の電撃が継続ダメージを叩き出す!!


 キシャシャ?!キシャアァ?!@☆?♯!

 ん? スコーピオンナイトの様子がおかしいぞ。

 なんか、フラフラして居ると言うか……。

 あっ! そっかこれは、スコーピオンナイトがピヨッたんだな!

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