218 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉4 影鬼と影法師

 迫りくる影鬼達の巨大な群れと接敵する前に、まずはサレスの岩塔鬼槍 破照魔の必殺アーツで少しでも影鬼達を数を減らす事にした。

 

「行くぞ! 『閃塔破照魔・光凪』!!」


 岩塔鬼槍 破照魔のランス部分に赤紫の光がスパークしながら集束。

 そして、まだ肉眼では捉えられない距離にいる影鬼の群れに向かって照射する!


 ブオン!! バシュゥゥ――――――――ッッ!!!!!

 赤紫の光が闇を切り裂き、影に潜む鬼達を薙ぎ払う!!

 今の攻撃で、影鬼の群れの前面をゴッソリ削る事が出来た。

 その事が『星覚』を通して、エルナそしてサレスに伝わる。


「良し!命中!」


 先頭を行く影鬼達が破照魔の光に薙ぎ払われ、影鬼の群れの移動速度が露骨に落ちた事が分かる。しかし、影鬼達の数が多過ぎる所為か、あまり減った様に感じられない。う~ん。一体何匹いるんだ?


『次はわたしが行きます。『龍撃砲・煌流光覇』!』


 攻撃の二番手に立候補したチエは、その白銀の龍体の口から広い範囲をカバーする事が出来る光のブレスを吐く!


 ドゴグォオオオオオオオオオオオゴゴゴゴゴォォッ!!!!

 光のブレスは複雑な流れを以て広がり、影鬼達の巨大な群れを飲み込む!

 今のチエのブレスで、影鬼達の数が明らかに減った事が分かったのだが。攻撃と同時に減った影鬼達が、減った分を補充する様に直ぐ様その場で増えた事が分かったのだ。


 何だ? 影鬼達は増殖でもしてる?

 それとも、影鬼の親玉が何かしてるのか?


『むむ。あまり減らせなかった見たいですね』

「そう見たいだね。う~ん、親玉が影鬼を補充してるのかも?」


 う~む。このまま長距離攻撃で影鬼の数を減らすのは難しいのか?

 でも、このままこちらに向かって来る影鬼の群れを、接近戦で相手にするのは流石に嫌だなぁ。


『ふにゅ! にゃら次はわちがやるのじゃ!』


 次はチナが影鬼の群れに一撃入れる心算らしいが、チナってさっきのサレスやチエの様な長距離射程の攻撃出来るのだろうか?

 って、よく考えたら長距離射程攻撃はを見たのはさっきが初めてか。


『『竜撃砲・氷結激流』なのじゃ!』


 ズォオオオオオオオオ!!!ドゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオッッ!!!!!

 凍える様な冷気を放つ激しい水流がチナの口から放たれる!!


 チナの口から放たれた水流のブレスは、触れる物全てを凍て付かせその激流で纏めて押し流して行く。土石流の様相を見せる凍て付く激流が、影鬼の群れに衝突!その反応が一気に消えて行く! あとこれ、絶対他のMOBも巻き込んでるわ。


『ふみゅぅ……。かなり減ったのに、もう数が戻って来てるのじゃ』

「ふむ。影鬼の群れの主に、どうも攻撃が届いてない様じゃのぅ」

「なるほど。残念だけどこの距離じゃ、影鬼達の数を根本的に減らせない見たいだね」


 どうも影鬼は、群れの主が何らかの方法で補充している様で減らす事が出来ないようだ。これは、群れの中に居る主を狙って攻撃しないと多分ダメだろうな。

 それに、今の距離だと。『星覚』でも、群れの主の位置を正確に把握出来ないから、群れが近づくのをもうちょっと待つしか無いかな。


 影鬼の群れが、『ナイトビジョン』越しに目視できる距離に到達する。


 その群れの移動には音が無く。『ナイトビジョン』でも見通せない闇が……否、影が。灰混じりの砂の大地を染め上げる!


 音の無い影の行進がこちらに近づくに連れ、群れの最後尾からシャランシャランと錫杖の鳴る音と念仏の様なものが聞えて来る。


 目視できる距離に影鬼の群れが入ったお陰か、『星覚』のスキルが群れの主の姿を伝えて来る。それは菅笠に法衣、それに錫杖を持った人影そのもので有り、まさに影法師としか言い様の無いものだった。


『怨魔渦 式灰灰戒界 鬼剋仏降 仏聖調伏 仏哭悪鬼笑 悪鬼業魔天上天下 呪想鬼呪詛鬼天 無色灰呪鬼呪想天 蘇灰禍』


 この呪文を念仏の様に繰り返しながら、影鬼の群れと共に影法師が向かって来る。影鬼の群れが生み出す『ナイトビジョン』でも見通せない闇の中、何故か影法師の姿だけがクッキリと浮かび上がって見える。

 見た所無傷だし、徘徊ボスだったりするのだろうか?

 それに、唱えている呪文の意味は神仏を悪鬼が降すと云う様な感じだろうか?

 【呪鬼】とやらの世界は、鬼が仏を制する怨嗟と呪いの世界と云う事なんだろう。それなら、仏要素を持つ敵が出て来るのも納得できる話だ。


「さて、敵が目視で来た所で、アレがどうやって攻撃を防いだのか見てやろうじゃないか」


 大日金剛太郎マグナ・アウルムウルサスEXのパッシブ『黄金の縁』の力で、金色千手阿修羅の専用固有兵装が大日金剛太郎マグナ・アウルムウルサスEXに扱える様に最適化され出現する!

 サレスが手にしたのは、使用頻度の高い金剛傍牌宝鏡だ。


滅却照魔宝鏡イビルアニヒレーション!!』


 大日金剛太郎マグナ・アウルムウルサスEXが使うのに相応しいサイズと為った宝鏡から滅魔の光が放たれる!


 シュバァアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!

 宝鏡から照射された光が、影鬼の群れが作り出した闇を打ち払い影法師にも届くかと思われた。


 ザワザワ!! 影が作り出した闇が波打ち、そこから次々と影鬼達が飛び出す。

 そして、その影鬼達はまるで影法師を守る様に立ち塞がり、滅魔の光に晒され消えて行く!


 そう何の事は無い。影鬼達の親玉である影法師が無傷だったのは、影鬼達の単純な無限肉壁の所為だったのだ。


 とは云え、夥しい数の影鬼達が影法師の肉壁と為って消えて行く。

 いやいや、どんだけ呼び出せるんだよ!

 もしかして影法師は、影鬼を無限召喚出来るのか?


 しかし、こうなると乱戦は必至だ。

 なので、チナとチエは的に為って攻撃が集中したり、身体に貼り付かれるの避けるため竜化を解く。あとサレスは、まあそのまんまで良いだろ。うん。

 そして、等々影鬼の群れに接敵する。


「念のためだ。『日輪黄金賦活』『陽光日輪紋』!」


 サレスが闇よりも暗い影に触れる前に、太陽の光を示す二つのバフをパーティ全員に掛ける。


『へぎゃあっ!?』


 影から飛び出して来た影鬼達が、皆一様に太陽の光を纏ったエルナ達相手に一瞬怯む。当然その隙を逃さず、素早く影鬼達を排除して行く。


 シャランシャラン! 錫杖の音が鳴り響く。

 群れの奥に居た影法師が、何故かエルナ達の前にハッキリと姿を見せる。

 

 ええっ!? こう云う敵って普通は、無限召喚の物量に任せて後方で接敵しない様に控えてるもんじゃないの!?


『貴様らぁっ!! 騒がしいと思って来てみれば、遠間から何度も何度も執拗に攻撃しおってぇっ!! 許さんぞおぉぉっ!!!!』


 あ、なるほど~。これはブチキレてますね!

 それにこいつ、アナウンスが無いって事は、無限召喚なんてして来る癖に徘徊ボスじゃないのかよ! 所謂、強MOBって奴か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る