186 久々にソフィーちゃんに色々教えて貰った

 まず最初にするのは、金色千手阿修羅の修復だ。


『マテリアル・リジェネレーション!』


 キュワワっとエルナから放出された白い光の粒子が、朱厭狒緋童子にボッコボコにされた金色千手阿修羅の中に入り込んで行く。溶けて歪んだ装甲と折れた腕が元に戻り、機体の頭部と上半身に入った幾つもの陥没と放射状の罅が消えて行く。

 朱厭狒緋童子の攻撃ダメージの蓄積と、その状態で無理に使った必殺アーツの影響で、見事に割れてしまった金剛傍牌宝鏡も綺麗に直った。


 さて、討伐報酬の確認の前に、朱厭狒緋童子が守りに来た祭壇を壊してしまおう。そう思って祭壇の方を見ると。祭壇の真下に溜まっているエネルギーが、祭壇の真下から祭壇その物へ流れ込んで行くのが分かってしまった。


 うえっ!? これ、もしかして不味いのでわ!?

 この祭壇って、このエネルギーをどこかに送る物のなんだよな?

 これってそれが発動したんじゃ……、だったら直ぐに壊さないと!


「うにゅ? お宝なのじゃ……?」


 祭壇を壊そうと、『マテリアルブレイク』を使おうとしたのだがチナの言葉が耳に入り動きを止める。


 ん!? お宝だって!?

 チナは祭壇を見ながらそう言ったぞ?

 もしかして今起こって居るこれは、エネルギーがどこかに送られるのとは違うって事か?


「これってもしかして、宝物化が起こってる?」


 祭壇の真下にあった全てのエネルギーが、祭壇の中心の一点に集束して祭壇全体が一瞬フワッと光る。


「うにゅ! この祭壇がお宝になったのじゃ!」


 如何やらこの祭壇は、たった今宝箱に相当する物に成った様だ。

 うん。これはどう考えても偶然じゃ無いよな。明らかに意図的な物を感じるぞ?

 取り合えず『マテリアルブレイク』はやめて、この祭壇を宝箱だと思って壊さないと。じゃないと、折角の宝物化が無駄になるもんな!


「ふにゅ、エルナが開けるのじゃ?」

「う~ん、そうだねぇ~……。今一番LUKが高いのって、多分チエだよね?」

「そうですねぇ。本来なら姉様の方が高いんでしょうけど、現時点ならわたしのLUKが一番高いと思うのですよ?」


 ちなみに、チエやチナのLUKはエルナのLUKと文字通り桁が一つ違う。

 それに、この宝物化した祭壇はチナかチエに壊して貰った方が良い様な気がする。

 そうした方が、何か良い物が手に入る様な気がするんだよねぇ。

 多分これは、『星覚』と『直感』のスキルが仕事してる気がするね。


「それじゃあ、チエにお願いするよ」

「はい! 任せてください主様!


 チエが祭壇に向かって自在空手サハスラブジャを構える。


「にゅ! わたしのLUKが火を吹くのですよぉっ!」


 ドゴンッ!! 黄金の拳が祭壇を砕く!

 パアァァッ!! と砕けた祭壇から光が迸り、光の中からアイテムが出現する。


 現れたアイテムは、煌めく空と青い海を思わせる様なグラデーションの有る青い宝石を、金細工で美しく装飾したブローチだ。特に特徴的なのは、宝石に内包されたインクルージョンが、空に向かって飛翔する金色の龍に見える所だろうか。


 うん。これは絶対良い物だ。チエに祭壇を壊して貰って良かったよ。

 前々から思ってたんだけど。特別な要素が無い限り、討伐報酬とかチエの方が良い様な気がしてたんだよなぁ。宝物化したオブジェクトは、チナに【神魂神体】適用される様になるまでは、為るべくチエに開けて貰う方が良いかもな。


「ふにゅ、このお宝は祝福しゃれた物なのじゃ! しゅごいお宝なのじゃ!」


 ブローチを見ていたチナが興奮した様子で、しゅごいしゅごいと騒いでいる。

 うむ。とってもかわいい。


 それにしても、このブローチが祝福されてるねぇ? なんか特別な事なのか?


「祝福なのです? 今宝物に祝福を与えられる様な存在は、この山の霊脈に宿る星精しか居ない筈ですよね。つまり、わたし達は山に応援されてるのです!」


 チエが、嬉しそうに自分達が山に応援されているというのだが。

 星精とは何ぞや? 精霊の仲間? 語感から星霊に近い存在モノなのかも?


 チナとチエにも一応聞いて見たけど、精霊と似てるけど全く違う物でエルナに近い存在モノとの事。


 う~ん。思いっきりエルナと関係有りそうな感じだし、これは流石にソフィーちゃんに聞いて見た方が良さそうだ。

 

『と言う訳でソフィーちゃん。忙しいかも知れないけど、星精について詳し教えてくれない?』


 そうソフィーちゃんに呼びかけると、沈黙していたトゥインクルソファイアから思念が発せられる。


『星精について詳しく知りたいのですね? シズル様?』


 うん。そうそう、お願いできる?


『では手短に、星精とは幾多の世界を流転する星輝が、特定の星や土地に留まり長い年月を経て薄っすらと意思を持った存在です。シズル様にとって一番分かり易く言うと、『星覚』スキル使用時に姫様に情報を提供している存在モノが星精です』


 それって、星霊にめっちゃ近い存在って事じゃん!

 と言う事は、星精が星霊に為ったりするんじゃ?


『そうですね。姫様のお母上エルアクシア様が、唯一明確な自我を得て、星精から星霊へと昇華した存在となりますね』


 ほぉ~、つまり『星覚』スキルから感じる意思の様な物は、皆星精の物って事か。

 更に言うとこの世界の星精は、エルナから見ると皆実質親戚の伯父さんや伯母さんって事に為るのか? うむ。何か不思議な感じだ。


『親戚ですか? そうであると云えなくもないのですが……。そうですねぇ、エルアクシア様と姫様が居る時点で、この世界の星精はエルアクシア様と姫様の無意識を反映する様に成っていますから何とも……』


 ん? という事は、エルアクシア神とエルナの無意識と、元の星精の薄い意思が混ざった状態って事?


『その認識で大体合っています。現在は姫様がこの星の化身ですから、星精の発する意思の三割は姫様の無意識が反映された物です。あとは略、世界の化身であるエルアクシア様の無意識が反映された物ですね』


 なるほど、三割自分なのか。

 しかも、残りの殆どは、母であるエルアクシア神の無意識って訳か。

 つまり、うっすい意思しかない元の星精の要素は殆ど無くて、殆どママンであるエルクシア神の無意識になるのか。


 ちなみに、元の星精の薄い意思の反映される要素は、全体の一割も無い様だ。


『それと当然の事ですが。姫様は、エルアクシア様とシュライン様の間に生まれた、生まれながらの星霊ですからね?』


 うん。ソフィーちゃん、それはちゃんと分かってるよ。

 でも、そうなると。このブローチを祝福したのは、実質的にはエルアクシア神って事か? エルナの無意識が働いてって言う可能性もあるかな?

 そうなると、自分で自分を祝福した見たいな感じ?


『いえ、そちらのブローチを祝福したのは、この地の星精の意思で間違いないですよ。宝物に祝福を与える何て事、流石に無意識では出来ませんからね』


 まあ、そりゃそうか。何か変な感じに為らなくて良かったわ。


『ですが、多分に影響しているとは思いますよ』


 つまり、このブローチは物凄く期待できるって事か。


『そうなりますね。それでは、わたくし作業が有りますので此処で失礼いたしますね』


 ふぅ~ん、作業ね? ソフィーちゃん含む初期装備は、進化成長するって説明されてたし、引き篭もってるのはやっぱりそれ関連なのかな?

 まあ兎に角、ブローチを収納して性能チェックだな。


 ちなみに、主に精霊は霊子の集合体が意思を持った者で、普通はこう云う霊脈のある土地に多く生まれるのだそう。霊脈には星輝が混じっているから精霊と星精は近しい所に有ると言えなくもないよな。

 それと、精霊同士、あるいは精霊とそれ以外の種族との間に、精霊の子供が生まれる様だ。やっぱり、字面が似ている精霊と星霊は近しい物だと感じるよな。

 あと、ついでに教えて貰ったのだが。星壇とは、星や土地に宿った星精の意思が顕現する場所の事で、当然この惑星ではエルアクシア神とエルナの無意識が多分に反映されるんだと。

 うん。何か他の誰かに知られたら、ヤバいって事だけはハッキリ分かるね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る