184 〈呪霊灰山 7合目〉覚大猩々僧鬼 朱厭狒緋童子2

 餓鬼の死骸と汚物が、ドームの炎に焼かれ更に悪臭が酷くなる。と言っても、その悪臭を感じているのはエルナとサレス以外の三人だけなのだが、このままでは戦闘に支障を来しそうなので浄化を試みる。


『フィルスエリミネイト!!』


 シュワッ!! エルナを中心に白い光が放たれ、悪臭とその元凶が音を立てて消え去る。


『ぐぁぎゃあっ!?』


 朱厭狒緋童子が顔押さえ悲鳴を上げる。

 何故か朱厭狒緋童子にも『フィルスエリミネイト』の効果が効いてる見たいだ。

 何でだろう? 朱厭狒緋童子が汚物爆弾を使ったから汚物認定されたとか?

 まあでも、ダメージを与えられてるんだから、兎に角ラッキーと思って置こうか。


「うゆ? くちゃくないのじゃ!」

「はぁ~、主様ありがとうございます! 主様のお陰で息が出来るのです!」

「ふぅ~、これは衛生的にも良さそうな魔法ですね」


 悪臭から解放されて皆嬉しそうだ。ってかチエは息を止めてたのかよ!

 ちなみに、『フィルスエリミネイト』は今までの浄化系のスペルアーツを基に、【星法】で作り出した新しいスペルアーツで意味は汚物除去だ。スペルアーツだから魔法で合ってる。

 何か浄化とは違うけど。効果は同じ様な物だし、まあ別に良いよな。


『この野郎ぅっ! 俺を焼きやがったなぁぁっ!! 今度こそ灰に為れやぁあっ!! 『炎厭猿叫爆砕』!!!』


 キエエエエエエエエエエエエェェェェェェェ――――――イ!!!!!

 朱厭狒緋童子の大絶叫が、エルナの鼓膜と炎のドームを揺らす!!

 ジュボッ!! 次の瞬間エルナの身体が灼熱し炎を噴き出す!!


「くっ、あっ!?」

「にゅぅ!?」

「ん……!!」

「ひゃあ!? 燃えてますぅ!?」


 サレスは無言だが。これはエルナだけじゃなく、パーティーメンバー全員が発火していたのだ。技名から考えて、これは不味いのでは!?


『爆ぜろおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!』

『スターオーロラ・リジェネレーション!!』

「『凍気氷霜』『氷結凍陣』なのじゃ!」


 ドドドドドゴゴォォ――――――――――――ン!!!!!

 身体が爆炎飲まれる前に、星が瞬く虹色のオーロラがエルナ達を覆い、チナの発した凍気が爆発の威力を下げる!


 一瞬気を失ったが、全身の火傷の痛みで直ぐに気が付く。

 その痛みも、『スターオーロラ・リジェネレーション』が直ぐに癒してくれる。

 只でさえ、炎のドームの所為でスリップダメージが有るって言うのに、今の攻撃はシャレに為らないぞ。


『かあぁぁっ! 今のでもぉまだ灰に為らねぇのかぁ! しぶてぇなぁぁぁっ!!』


 自身の身体が爆発すると云う、とんでも体験から復帰しきれていないエルナ達に、朱厭狒緋童子が追撃の炎弾ばら撒く!

 そんな中、機動仏尊に乗るサレスが前に出て皆の盾になる。


『なんだぁぁ? 的に為りに前に出て来やがったのかぁぁ? 良いぜぇぇぇ、お前から灰にしてやるよぉぉぉっ!! 『朱厭業炎禍』!!!』


 朱厭狒緋童子の三倍近い大きさの巨大火球がサレスに向かって放たれる!


『水鏡之聖域!!』


 それを、フォリンクラルムのアーツを使用して、金色千手阿修羅の金剛傍牌宝鏡で受ける。


 ドウッ!!!!! 金剛傍牌宝鏡が力を発揮し、巨大火球を受けて止めそのまま跳ね返す!


『なぁっ、なんだとぉっ!?』

『蛇視・痺縛締蛇!!』


 巨大火球を跳ね返された朱厭狒緋童子に、見るだけで確実に発動命中する蛇視の力が絡みつく。


『くっ! 動けねぇぇっ!』


 サレスが見続ける程蛇視の力が増し、朱厭狒緋童子の身体を強力に動きを封じ自身が放った巨大火球が炸裂する!


『くっそがああああああああああっ!!!』


 ドゴボボボオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 朱色の炎が爆ぜ朱厭狒緋童子を焼くが、恐らくあまり効いてはいない。

 だってアイツどう見ても火属性だしな。だから出の早いアーツで追撃だ!


「ナイス、サレス! 『イリスフェザーダンス』!!」

「うにゅ! 『竜爪凍刃』なのじゃ!!」

『散水雷光』

『ディメンションコンプレッション!!』


 ヒュヒュシュシュン!! ズドドドドドドドドドドゴゴォ――――――――ン!!!! レーザー光の様に飛翔する虹色の羽と凍気の爪牙が、自らの攻撃で焼けた身動きの取れない朱厭狒緋童子を襲い、そこに続けて雷光を内包した大量の水が飛散する!


『ぐぎゃあああああああっ!!! え、『炎輝光身』!!』


 朱厭狒緋童子が、蛇視と攻撃から逃れるためその身を輝く炎その物へ転じようとした所で、『ディメンションコンプレッション』の次元圧縮が効果を発揮し朱厭狒緋童子を逃さない。


『ぎゃあああああああっ!?! 潰されるぅぅぅぅっ!!?』


 本当は、今さっき使った『イリスフェザーダンス』みたいな自動追尾攻撃で、心を読まれたって関係ないって感じでガンガン削って行こうかと思っていたのだが。サレスのカウンターからの、クリメイトパラコアルの蛇視が見事に効いてしまった。

 これはもう、一気に畳みかけて倒せるんじゃないか?


『この糞がああああああああああああっ!! 俺はこんな惨めな終わりなど認めんぞぉおおおおおおおおおっ!!!! 『終焉 命冥炎我凶天昇乱』!!!!!!』


 シャン!シャン!シャンッ!! グワァンッ!! ドゴォ――――――ン!!!! 朱厭狒緋童子が怒りの力で『ディメンションコンプレッション』が作り出した次元圧縮を吹き飛ばす!!

 朱厭狒緋童子の瞳から理性の光が失われ、怒りに満ちた赤黒いオーラと共にその全身から灰色の炎が勢い良く噴き出す!!

 灰色の炎は、先端に向かうほど闇の様に暗い真っ黒な炎へと変わり、その灰色の炎は不吉さを伴って呪詛を吐き出し、辺りに撒き散らす。


¶エリアBOSS 覚大猩々僧鬼 朱厭狒緋童子が狂乱及び捨て身状態になりました。


『キエエエエエエエエェェェェェェェエエエエエエエエエッ!!!!!!』


 ドン!! 朱厭狒緋童子の猿叫が響くと、エルナ達に強烈な重圧が圧し掛かる。

 あ、これは一気に倒せるとか。ナマ言ってすんません!

 うん。これヤバいわ!! でもこいつ、長期戦は不味い気がするな。

 と云う訳で、やっぱり短期決戦で一気に倒すしかないな!!

 しかし、これは何か色々飛ばして、一気に最終フェイズに突入した感じだよな。

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