170 模造神像 千手阿修羅3
模造神像の光背に敷き詰められた手が、次々と光背から分離して行く。
左の顔を潰す際に、光背左側の手をそれなりの数破壊しているが、それでも相当数の手が宙に浮かび上がる。わぁ、〇オ〇グの手見たいだなぁ。
『対象を殲滅します』
『assault‼』
ピュン! ヒュンヒュン!! ズドンッ!!! 模造神像の宙に浮かぶ無数の手が、こちらに向かって高速飛翔しならがら指先の弾丸を吐き出し、接近すると指先から金色の光の刃を形成し突っ込んで来る!
『砂槍掃射!』
ギブシンサラマンダーの討伐報酬、無尽砂槍イニハレムメスタの出番である。
ズドドドドドドドドドッ!! 『
イニハレムメスタ自体も砂を生み出せるのだが、当然最初から砂が有った方が良いに決まっている。お堂内部全域が、既にイニハレムメスタの砂槍生成攻撃の射程圏内なのだ。
『
砂槍が命中して出来た隙に、桜がスキュンレスツェカリアの影鎖を夜の闇から出現させ、模造神像と空襲を仕掛けて来る大量の手を拘束する。
こいつにやられた事をやり返した形だ。
それに、『ナイトビジョン』で視界が真昼の様に明るいから忘れてたけど。
お堂の下部は燭台の光で明るいから兎も角、模造神像が飛行している上部は真っ暗なんだよな。暗視が出来ないともっと難易度が高かったんだろうなぁ。
って夜に来なければ良いだけか。
『行動不能』
『Shooting‼ Shooting‼ Just go wild‼』
模造神像本体が拘束を解こうと、六本の腕を動かしギチギチと音を立て、飛び回っていた手はやたらめったら射撃を行い暴れ回る。
そんな中、サレスが自在大剣をもう一本の自在大剣に持ち替える。
「さあ、もう一発喰らいやがれ!! 『ワインドセンチビート・テラトランプル』!!」
そう、自在大剣は二本有るのだ。
それは、クールタイムを気にせずもう一発、同じ必殺アーツが使えると言う事だ。
¶異次元召喚騎士サレスが、広範囲蹂躙攻撃『ワインドセンチビート・テラトランプル』を発動しました。
大変危険ですので、退避をお勧めします。
今度は右の顔を潰す様に超巨大化した剣身を模造神像に振るう!
ドドドン!! ドガガガッ!! ギリギリギリドガギャギャギャギャギャギャギャギャギャァッ!!!! 本日二度目の自在大剣の必殺アーツが、不快な音を立て模造神像とその軌道上に有った無数の手を巻き込んで蹂躙する!!
『ひひひ、被害甚大……』
『ワインドセンチビート・テラトランプル』で削られた模造神像の破片が、煙の様に舞い上がり視界を塞ぐ。
『help‼ help……‼ he……』
ブゥ――――…………プツン、と電源が切れる時に聞こえる様な音がすると。
ガタタタン!!! 桜が拘束していた模造神像の手が一斉に力を失い床に落ちる。
右の顔を破壊で来たのだろう。となると次のフェイズに移行するか?
『じょじょ、状況は危急をを……よ、要する、ととと、は判断……します。……短時間決戦駆動に移行します』
バキン! 模造神像を拘束していた影鎖が砕ける。
「Σあぁっ!?」
グワンッ!! 強烈な赤黒いオーラが塵を吹き飛ばし、全身に赤く発光する紋様を浮かび上がらせた模造神像が姿を現す。
『蝕光阿修羅暗空』
スゥっと模造神像から闇が広がり何も見えなくなる。
『ナイトビジョン』の効果が有るにも拘らずだ。
サッと闇の中を、幾つもの赤い光の筋が駆け抜ける。
プシュ! 全身から力が抜け後から痛みが身体を襲う。
「かふっ!?」
全身から血が噴き出し、口からも血が零れる。
今の赤い光は斬撃だったのだ。
倒れているチナも含め、全員が斬られている。
回復を施すが、暗闇が解除される気配もなく。
反撃を試みるが手応えが無い。エルナは『星覚』が働き、模造神像の攻撃に対処できる様になったが、やはりこちらの攻撃が当たらない。
その間も、幾度も赤い光の筋が駆け回り、PT全体のダメージを蓄積して行く。
『
桜がついさっき影鎖を砕かれたのを考慮して、『ディメンションキャプチャー』と『
『
ジャラララララララァァッ!! ガキンッ!!!! 姿が見えず攻撃が当たらなかった模造神像を、次元干渉力が加わった影鎖が確かに捉える!
「うにゅぅ……、真っ暗なのじゃ。今どうなっているのじゃ?」
模造神像を捉えたこのタイミングでチナが目を覚ます。
「チナ起きたんだね! 良かったぁ!」
チナに状況を説明するため、PTチャットに現状をサッと書き込む。
するとチナは、PTチャットを一読して直ぐに状況を理解する。
「ふにゅ! わちの仇はわちが取るのじゃ! 『水気掌握』『水気昇霊』『水霊神気』なのじゃ!!」
チナがやる気を出し、『水気掌握』で掌握した水気を錬磨万霊水神刀エグゼラフィスルの刀身に一気に集める。そして、『水気昇霊』と『水霊神気』で水気の力を一気に昇華させ爆発的に力を高める!!
エグゼラフィスルの刀身が、恐ろしく冴え冴えとした輝きを放つ。
「
ゾンッ!!!!!! 唐竹に振り下ろされた刀身から水色の光が迸り、拘束された模造神像通り抜け空間拡張されたお堂の奥まで一瞬で駆け抜ける!!
『!?』
模造神像の身体に、スッと縦線が入りそのまま断ち分かれて行く。
『ぜ、お……はそ……、かk……め……きd……い……』
ドガシャ――――ン!! 縦に真っ二つに為った模造神像が床に崩れ落ちる。
「どうなのじゃ!」
チナがやってやったとばかりに、「ふふん♪」とドヤ顔をして喜びを露にする。
しかし、まだアナウンスが無いから、終わってないぞチナ。
『全表面破損により、隠し面『金爛千手阿修羅』を起動、現界します』
模造神像が落ちた場所の空間に、縦にぷつぷつと金色の点が現れ次第に大きく広がって行く。
バキ! バキバキバキブチィッ!! 最初に見えた金色の点は黄金の指先だった。
黄金に輝く夥し数の手が、空間を引き裂きその本体をこちら側に引き込む。
ゆっくりと全身が黄金に輝く千手観音を思わせる大仏が姿を現す。
高さは8m、横幅は大量の手と三つ連なる光背で20mはある。
カッ!! 仏の顔が恐ろし気な鬼面に変わり、いよいよ動き出す……と思ったのだが。黄金に輝くボディにスッと縦に線が入る。
『エネルギー減衰……せ、め……こ……d……f……』
霊脈から取り込んだエネルギーが漏れ墜ち、金爛千手阿修羅とやらの身体がガラガラと崩れて行く。
「Σって、あれぇ~!?」
いやいや、完全に出落ちじゃん!
早過ぎちゃったのかなぁ~?
「ふにゅ! やっぱりわちの大勝利なのじゃ!」
そんなチナの言葉を証明する様に、アナウンスが流れる。
¶エリアBOSS 模造神像 千手阿修羅の完全破壊に成功しました。
討伐報酬はギフトボックスに送られます。後でご確認ください。
エーランブラム山三神堂が解放されました。本来の状態に戻ります。
三つの封印点を開放した事により、7合目への通行が可能になりました。
うん。ほんとに倒せてるわ。マジかぁ。
チナがうんうんと満足そうな笑顔見せている。
人に心配させて置いて……。
「Σうにゅ!?」
えいっ! と、チナを抱きしめうりうりする。
チナはしょうがないとばかりに、大人しく俺に弄られる。
如何やらチナは、自分が心配を掛けたとちゃんとわかっている見たいだ。
俺が満足するまで、チナをうりうりした後。
模造神像のドロップを回収し、何で金爛千手阿修羅が出落ちで終わったのか、ちょっと考えて見る。
う~ん。これはアレだな。きっと金爛千手阿修羅は、出て来た時には既にチナの『万霊水神割断山』で真っ二つにされていたんだと思う。
『万霊水神割断山』は、金爛千手阿修羅が隠された空間の中まで、しっかり断ち切っていたって訳だ。
で、恐らくその隠し空間に居る間は、その空間の圧力か何かでなんとか形が保たれていたんだろうけど。外に出たらそれが無くなって崩壊したって事なんだろう。
それじゃ、討伐報酬を確認しますかね。
※出落ちで終わってしまった金爛千手阿修羅は、エルナが掠っただけで高確率で詰む攻撃を、一定時間経過毎にして来るクソボスでしたが、チナの水属性の三重超強化が乗った、エグゼラフィスルの必殺アーツが予想外に強力で、結局出番は有りませんでした。
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