168 模造神像 千手阿修羅
『アステルリヴァイブ』を掛け直し、お堂の側までやって来た。
お堂の周りには、骸骨僧侶のドロップが散らばっておりしっかり回収して置く。
ドロップの中に、ナイトビジョンと言う魔術を覚えられるマジックシートが有った。ナイトビジョンの効果は、夜の闇が真昼と変わらない様に見える様に為ると云う物でサクッと覚えた。
なんせ、丁度必要性を感じていたからね。
さて、肝心のお堂だが。お堂全体から明らかに不吉な気配を漂わせており、入ったら直ぐにボス戦だろうと予感させる。しかも、現在進行形で霊脈の光がどんどん飲み込まれており、非常に嫌な予感しかしない。
取り合えず、ボス戦用にバフを掛け直すか。
あまり、お堂の中に入りたくはないんだけど。
まあ、お堂を壊す訳にはいかないし、結局中に入るしかないんだよなぁ。
「それじゃ、皆開けるよ?」
「うにゅ」
「大丈夫なのです」
サレスと桜が頷いたのを見て、ゆっくりとお堂の扉を開ける。
本来なら暗くて良く見えないのだが、今はナイトビジョンのお陰でお堂の中が良く見通せる。
お堂の中は明らかに外観にそぐわぬ大空間が広がっており、お堂の奥へ続く様に燭台が並び最奥には仏像の様な物が見える。何故か仏像の様な物は良く見えないな。
そのままお堂の中に足を踏み入れ、PT全員がお堂の中に入ると。
バンッ!! 扉が勢い良く閉まり燭台に火が灯って行く。
うわ、間違いなくボス出現の演出だろこれ。
燭台の火が全て灯ると、仏像らしき物体の姿がハッキリと浮かび上がる。
その姿は、一部金の装飾が施された三面六臂の高さ3mの黒い像で、背後に有る光背一杯に手が敷き詰められ、まるで千手観音の様だ。
分かり易く言うと、阿修羅像と千手観音像を合わせた様な姿だな。
¶エリアBOSS 模造神像 千手阿修羅のBFが形成されました。
仏像じゃないんだ。
『侵入者を確認しました』
『Start threat assessment……』
『ギブシンサラマンダー,ポリュクラッカ、リョウカンリシャノ ショウメツヲカクニン』
『脅威度最大と判定しました』
『Enter strafing annihilation mode』
『レイミャクセツゾクヲ セントウキカンニ キリカエマス』
『移行を確認しました。これより侵入者を殲滅します』
模造神像三つの顔がそれぞれ何か言うと。模造神像の台座から霊脈のエネルギーが伸び、模造神像本体と後ろの光背に流れ込んで行く。
ブオン!! 模造神像本体のそれぞれの手に、何時の間にか金色の剣が握られる。
ガシャン!! 光背に敷き詰められた、全ての手の指先が一斉にこちらを向く。
『金斬三日月』
『Finger smudge strafing』
『プレッシャースティッフ』
ズン! 身体が重くなると同時に、模造神像本体が剣を振るい光背の指先が光る!
なっ、動きを阻害されてる!?
「くっ! 『自在砂骸』『
コスモマテリアルでコーティングされて、真っ青な砂になった砂骸甲冑ギブシンサラマンダーの砂が、PTをカバーする様に『コスモバリアシールド』と共に展開され、金属鎧の様な光沢を放つ。
ヒュッ!! ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!
キュインキュインと音を立て、黒い弾丸の様な物と金の三日月を思わせる斬撃が、金属鎧の様に硬化した砂骸甲冑の砂が阻みPTを守る。跳弾らしき物も『コスモバリアシールド』が防ぎ、お陰でボスの模造神像の開幕攻撃のダメージを受けずに済みそうだ。
エルナのオーバーニーソックスこと、流翼翔駆リブエールクリールが輝く。その輝きがエルナの全身を覆うと、エルナの身体の動きを阻害していた力が消え去る。
リブエールクリールの持つ拘束耐性,拘束解除の力が働いたのだ。
模造神像の三面のどれかが、妨害魔法を使ったに違いない。
ちなみに、弾丸と思われる物の正体は、模造神像の光背に敷き詰められた手の指先の様だ。
PTメンバーのCONDを確認すると、硬直の状態異常のアイコンが表示されている。硬直かぁ、【紅月】の状態異常LOCKは何故か働かなかった見たいだし、拘束耐性,拘束解除が硬直の状態異常にも対応していたんだな。
あとサレスが動けたのは、サレスが遠隔操作のパワータイプゴーレム見たいな物だから、如何にか無理矢理動く事が出来たんだろう。
『ステラリフレッシュ!!』×4
いろんな色をした星型の光が飛び交い、皆を硬直させている力を打ち払う。
「ぷはぁ~、小さなこの身体には硬直はキツイですねぇ~」
「うにゅぅ~」
「蛇の時には、感じる可能性すら無かった肩こりを初めて実感したのですよ~」
硬直の状態異常は、皆なかなかきつかった様だ。
エルナは拘束耐性が効いていたお陰で、身体が重く感じる程度で済んだ様だな。
それにしても、チエは硬直の影響で何故か初肩こりを実感するとは……。
う~ん。何とも言えないな。
「それで如何する? あの仏像、俺達を近づかせる心算が無い見たいだぞ?」
サレスの言う通り、模造神像の光背がマルズフラッシュさながら今も幾つもの光を放ち、弾丸と金色に輝く斬撃が砂骸甲冑と『コスモバリアシールド』に守られたエルナ達を釘付けにしている。
牛歩戦術で、砂骸甲冑を操作して少しずつ前に出るか。多少リスクを取って前方に壁を作り、ボスの攻撃に対処しながらその壁の内側に飛び込むとか。
ああっ、必殺アーツの連発も有りか?
「ふにゅ! ここはわちに任しぇるのじゃ!」
おっ、チナに有効な策が有る見たいだ。
チナは樹根神棍ロマディアルヴルを、本来の棍の形にしてお堂の床に突き立てる!
「『樹根天衝』なのじゃ!!」
パカァァ――――ン!! ノータイムで神鋼の柱が突き立ち、模造神像を台座ごと天井に向かって吹き飛ばす!
ああ、そっか。『樹根打突』と違って根を張るんじゃなくて、直接攻撃対象の真下から突き出て来るから、お堂の床を気にする必要も無いし弾幕も気にしなくて良い、おまけに固定砲台状態だったから必中って訳だな!
それに、今のボスの状態は良い的だ!
『アステルフェニックスレインボウ!!』
クァアアアアアアアアアアアアッ!!!! 見事天井に突き刺さった模造神像に放たれた一矢が、虹色の星火を纏う不死鳥へと姿を変え襲い掛かる!
お堂の天井がちょっと壊れてしまったけど、まあしょうがないよね。
ボシュゥ――ッ!! ドゴオオオオオオオオオオオオッ!!!! 『アステルフェニックスレインボウ』が命中した模造神像を虹色の不死鳥が焼き焦がす!!
『地上戦は不利と判断。空戦機動モードへ移行します。空戦機動モード移行に伴い、空間拡張を実行します』
『Start connecting spaces……Perform spatial expansion』
グォオオオン! 只でさえ見た目に反するお堂内部の空間が、全体的に広がりながら天井が急激に高く遠のいて行く。
『カクチョウ カンリョウ』
ブオウッ! 空間拡張の間に自由になった模造神像が台座ごと宙に浮く。
ん? お堂の床から模造神像の台座の下に光が繋がってるぞ?
こいつ、霊脈と直で繋がってるのかよ!
〇ンビ〇カ〇ケーブルが繋がってるエ〇ァかな?
『これより空戦機動を開始します』
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