166 ただ神水を飲んで沢山汲み上げて行くだけの話
ログインするとそこは『水輪の聖域』の中だ。IFOの時間で、既に午後4時を過ぎている事も有って日もだいぶ傾いている。
「エルナ、お帰りなのじゃ!」
チナがエルナに抱き着いて来て、二パっと笑顔で出迎えてくれる。かわいい。
チナは念のため、『水輪の聖域』でお留守番していたのだ。
「チナ、ただいま~」
良い子良い子と頭を撫でて上げると、チナは至福の心地と云った様子で実に幸せそうな顔をする。
「ふにゅ。しょれで、今日はこれからどうしゅるのじゃ? 直ぐに暗くなると思うのじゃ」
ふむ。確かにその通りなんだが、かと言ってリアルでご飯も食べたし、お風呂も入って完全にリフレッシュしたし、ここはそのまま攻略続行で良いだろう。
「皆を呼んで、6合目のパワースポットの攻略かなぁ~?」
「にゅ。りょ、なのじゃ!」
早速チエ,サレス,桜と呼び出す。
まずは、アーツ『アポストロス』でチエを呼び出す事にする。
パッと宙に真っ白な光を放つ穴が開き、そこからチエが元気良く出て来る。
「只今推参なのです!」
次に、EXTRAからコスモアビリティ『コスモアバター・レクススピリット』を発動。エルナの影がヌゥッと伸び、影の中からサレスが浮上して来る。
「召喚に応じ此処に」
本当は召喚じゃ無いんだけどな。
今度は、サレスが契約していると云う体の桜を、EXTRAのアナザーコスモアビリティ『サモン コスモアポストロス』で呼び出す。宇宙を映す金環のゲートが形作られ、そのゲートを通り抜け桜のEEアバターが召喚される。
まあ桜のEEアバターは、エルナが召喚しなくても自力で来れるんだけどな。
「今日も、よろしくお願いしますね♪」
と、こんな感じで全員揃ったので、チナに『水輪の聖域』を解除して貰う。
ちなみに、『今日も』と言うのはチナとチエに対しての言葉だろうね。
シャボン玉が弾ける様にポワンっと『水輪の聖域』の巨大水球が割れる。
サッと水が雨の様に飛び散り、夕陽に照らされ虹が浮かび上がる。
聖域は消える時も綺麗なんだよなぁ。
さて、ボスを倒して元に戻ったであろう洞窟の方を見てみる。
全く水気の無かった洞窟の入口は、上部を残して溢れ出た特別な霊水こと神水の中に沈み、神水は水汲み場の仕切りからも溢れて流れ出ている。
時間が経った所為か、水汲み場の神水には砂は混じっておらず非常に澄んでいる。
神力の宿った天然水かぁ、なんか美味しそうだし、ちょっと飲んでみようっと。
徐に両手で水を掬い、ごくっと一口飲んでみる。
「!?」
うん~まっ! なにこれ!? めっちゃ美味いんだけど!?
これが水なの? 信じられない位美味いんだが!?
あっ! それになんかどんどんスッキリして行く!
如何やらエルナの身体が、神水でリフレッシュされて行っている様だ。
それに、体の奥から力が湧いてくる感じがする。
もしかして、飲むだけで回復する上にバフが付くのか!?
いや~、これは持ってい行きたいなぁ~!
神水の美味さと効果に感動して居ると、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。
音の方を見ると。チナが涎を垂らしており、桜とチエもそわそわして居る。
神水を飲んだエルナの様子が、よっぽどだったんだろう。
皆神水を飲みたいって顔している。
サレスはエルナと感覚を共有してたのか、非常に満足気な雰囲気を漂わせている。
でも、チナは神水なんて何時でも飲めそうなのに、何でこんな反応してるんだ?
「皆、神水を飲みたいなら飲んでも良いんだよ。皆が汲んで行っても良い様に為っているんだし、別に私に許可を貰う必要は無いんだよ?」
「ふにゅ! ならえんりょなく飲むのじゃ!」
「にゅぅ! わたしも沢山飲むのです!」
「エルナさんの反応を見る限り、物凄く楽しみですね!」
皆の神水に対する期待値の高さよ。
チナとチエが水汲み場から直接口を付け、ごくごく物凄い勢いで神水を飲み出す。
桜も小さな手で神水を掬って一口飲む。
「ん~っ!?」
桜がぶるりと身体を震わせると、桜の身体がキラキラと輝き出す。
まあ、そんな事を気にせず、チナとチエは神水をごくごく飲み続けてるけどな。
って言うかどんだけ飲むの君達。
「何ですかこれ!? 生まれて間もない経験の浅い私のAI生でしかありませんけど、このお水が今までで一番美味しい飲み物ですよ!!」
桜が目をキラキラと輝かせながら力説する。
う~む。確かにめっちゃ美味かったし、そう言うのもしょうがないかも。
ちなみに、桜も短いとは言え色んな飲み物を飲んでる。
と言ってもまあ、流石にお酒は飲んでないだろうけど。
俺が課金で購入した施設で、色んな種類の飲み物が飲めるし、今も本体はフリーな状態だから、実は飲み放題食べ放題なんだよね。
「ぷはぁ、満足なのじゃ!」
「御馳走様なのです!」
二人共お腹パンパンである。どんだけ飲んだんだよ。
「所でチナは、神水位なら幾らでも飲めるんじゃないの? 水の神様なんだし」
「うにゅ? 今のわちには作れんのじゃ」
「うん? どう言う事?」
「今のわちは、神力を制限しゃれているから難しいのじゃ」
神力を上手に扱うには、チエも時折発現している権能、【神魂神体】が使えないと難しいとの事。だから神水を作るのは簡単では無いらしい。
そして、チナが【神魂神体】を発揮出来る様なるには、まだ本体であるエナのBALVが足りないんだそうだ。
まあ、もうそろそろ行けそうな感じらしいけどな。
「しょれに、よその神が作ったものや天然物ならともかく、自分で作った神水は別に飲みたいとは思わないのじゃ」
チナ曰く、自分が作った神水を飲むと云うのは、自分の掻いた汗や涎を飲む様な感じに思える様で、あんまり気分の良い物では無いらしい。
でも、他の神が作った神水や天然物の神水は別との事。
それで、神水を飲むエルナの様子を見たチナは、この神水は特別美味しい物だと察知して思わずがぶ飲みしたと云う訳だ。
ちなみに、チエががぶ飲みしてた理由は、エルナが美味しそうに神水を飲んでいたから自分も飲みたく為っただけで、お腹がパンパンに為るまで神水を飲んだチエは、非常に満足気な様子である。
でだ。この美味しい神水を、是非持って行きたい訳だけど如何しようか?
Σあっそうだ。蜂蜜を容器無しでティアーズクロワに、大量収納出来たんだから神水も行ける筈だ!
そうだ、ついでにサレスの『コスモストレージ』と、桜の『ディメンションストレージ』にも神水を収納して置こうか。
本来の状態に戻った反動なのか、大量に湧出する神水をティアーズクロワとサレスの『コスモストレージ』にどんどん収納して行く。
ちなみに、神水のデータはこんな感じだ。
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エーランブラム山万霊神水
エーランブラム山の天然の霊水が、同山の霊脈で万年磨き上げられた事で、強い神力を宿した特別な霊水。普段は厳重に管理されており、持ちだす事が出来きない。例外は祭礼の時のみである。
利用法は多岐に渡り、そのまま飲んでも一口でHP,MP,SPを40%回復し、様々な状態異常を回復する。更に、24時間全ステータスを10%上昇させる。
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うわっ!? つっよ! %回復と状態異常回復にバフも付く。
どう考えてもエリクサーとか万能薬なんかの素材じゃん。
しかも、本来は期間限定でしかGET出来ないとか。
道理で、『脱魂』するまでギブシンサラマンダーを全然倒せなかった訳だよ。
花のアニマソムニアを手に入れて無かったら、これは勝てなかったのでは?
何はともあれ、これは可能な限り汲み上げて持って行くしかないな!
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