84 〈腐灰水源〉で宝物庫と言う名の黄金の苔玉を見つけた

 先程の龍蛇戦。特殊条件を満たしたとかで、討伐報酬が特別な物に成ったらしい。

 早速ギフトボックスの中身を確認して見よう。

 中に入っていたのは、鞘に入っている短刀だ。鞘と柄共にメインカラーは白で、差し色に紅が使われ柄頭には猿手が付いており、手抜緒がさがっている。

 手抜緒には、龍蛇の彫刻された水晶玉が付いている。

 ちなみに、手抜緒とは、日本刀等の太刀の柄頭からさがっている紐の事だ。たまに、日本刀の画像や映像で見かけるけど、名前が余り知られていない例の紐の事だ。


「うみゅ、これは神器なのじゃ。ここで手に入る物の中では、良い物だと思うのじゃ!」


 ほほぅ、本日二つ目の神器ですか、そうですか。取り合えず、ティアーズクロワに収納して詳細を確認だ。で、それがこれ。

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龍蛇之護神刀ヌイエ・ベルジープ

フレーバー:私を救ってくれたあなたに感謝を……。

身に着けた者を守り、福徳を齎す天雷を宿せし短刀。

パッシブ 龍鱗之守護 福徳招来 雷刃

専用アーツ 紫電一閃 神鳴轟雷 雨嵐天雷・瞬閃

INT+3200,AGI+5900,LUK+3700

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 おおっ! 専用アーツの『雨嵐天雷・瞬閃』って、龍蛇が使て来た『呪雷水嵐』ってヤツの、本来の……と云うかパワーUPバージョンか。

 それに、思ったよりステ補正結構高いなぁ。

 今まで手に入れた物の中で、ヴァジュラ以外なら一番ステ補正が高いのでは?

 でもこれ、STR補正値無いけど、武器の攻撃力って如何なってるんだ?


『シズル様。特別何か無いのであれば、武器自体の基本性能は、ステータス補正の合計値が高い物が強く、大体はその数値が武器自体の基本性能とイコールとなります。武器種や素材等の違いも有りますが、攻撃力や耐久力も、ステータス補正の合計値が高い物が、基本的により良い武器と言う事に為りますね』


 つまりこの守り刀は、INT,AGI,LUKのステ補正の合計が攻撃力って事?


『あくまでも、武器自体の基本性能は、そうなりますね』


 なるほど。つまり、ステ補正合計値、イコール基本性能が高い良い武器って事ね。

 特別何かって言うのは、何かしらの理由があって、ステ補正合計値に見合わない攻撃力や耐久力の武器が有り、それは良い物もあれば悪い物もあるとの事。

 ちなみに、防具等の基本的な性能も、ステ補正合計値イコール基本性能と言うのが、基本的な考え方で良いらしい。


 で、この守り刀、誰が持つのが良いか考えていると。


「この短刀はエルナが使うと良いのじゃ。と言うかエルナしか使えないのじゃ!」


「え? そうなの?」


 この守り刀、ティアーズクロワで確認できなかったが、如何やらエルナに所有者固定されているらしい。そう言う訳なのでエルナが使う事にする。帯の形状に成っているステラレインの左側に、セレスティアラインと一緒に刀を差す様に装備する。


 装備すると、この守り刀からアーツの使い方が伝わって来る。

 如何やらこの守り刀、柄に触れてさえいれば『紫電一閃』と『神鳴轟雷』の専用アーツが使用可能で、『紫電一閃』は二つの型が存在し、状況に応じて選んで使用する見たいだ。

 『雨嵐天雷・瞬閃』は、刀身が僅かに見える位まで鞘から抜けば、使用する事が可能な専用必殺アーツらしい。しかも、これも二つの型が有る見たいだ。

 しかし、必殺アーツなんて物が有るのか。これも、ティアーズクロワでは確認できなかったなぁ。

 それにしても、鞘から抜かずにアーツ発動ができるって、「早過ぎて、何時抜いたのか分からなかった……」的な、演出が出来るヤツじゃん!

 それに、『雨嵐天雷・瞬閃』だって、必殺アーツなんて言う代物な上に、刀身を僅かに見せるだけで、アーツが発動できるのも、どう考えてもロマン仕様じゃん!


 さて、水源目指し移動する中、戦闘で『紫電一閃』と『神鳴轟雷』を使って見た。

 『神鳴轟雷』は、分かり易く大きな雷が落ちる物である意味普通のアーツだった。

 『紫電一閃』は斬撃効果の有る雷撃を、紫色の雷光として走らせる紫電の型。紫色の雷光共に移動して、進路上の物を雷を纏った守り刀で斬り付ける一閃の型が使用できた。

 『紫電一閃』だけでも、強くて色々出来るし、使っていて面白かった。

 特に一閃の型は、瞬間移動してる見たいで、かなり楽しかったね。

 恐らく、『雨嵐天雷・瞬閃』の二つの型も、これと似たようなタイプ分けかな?

 折角の必殺アーツだし、ボスとかに使って見ようかな?


 移動を続け、エルナにも水源の位置が分かる距離に、やって来る事が出来た。

 漸く水源に到着か。やっぱり着いたらボス戦だよなぁ、と思っていたら、急にチナが立ち止まり、水源とは別の方向へ走って行く。


「ちょ、ちょっと、チナ! どこ行くのー!!」


 慌ててチナに声を掛けると。

 チナはちょっとだけ振り向き。


「エルナ、物凄いお宝を見つけたのじゃ!!」


 それだけ言うと。濁った水の上を猛烈な勢いで、ダッシュして駆けて行った。

 いや! どんだけお宝好きなんだよ!

 しかし、チナのこの反応今まで見た事無いぞ。

 もしかしたら、本当に凄いお宝を見つけたのかも。


 猛ダッシュして、先に行っていたチナが、まるで門の柱の様に立つ、二本の大木の前で、ぴょんぴょん飛び跳ね、「エルナ、早くこっちに来るのじゃ!」と手を振っている。

 早く早くと興奮して、我慢できないと云った様子のチナに。


「チナ、そんなに急いだって、お宝は逃げないよ~。はぁ~っ、別にライバルがいる訳じゃ無いんだから、先に取られる事も無いでしょ?」


 チナが待つ大木の前まで来てからそう言うと。


「Σにゅにゅっ! むぅ~、確かにしょれもしょうなのじゃ……」


 と。竜のお宝に対する本能が、暴走していたチナは、少し冷静に為った様だ。

 さて、チナが落ち着いた所で、周囲を探ってみる。

 二本の大木の先は、相変わらずの白い霧で視界は聞かないが、スキルにより開けた場所に成っている事が分かる。

 奥の方に巨大な石か何かの塊? と、更にその奥に強いエネルギーの塊を感じる。

 この浸水した森の中、広場の様なフロアはここに来るまで幾つも有ったが、特別な事は無かった。でも、ここは他とは違い、ダンジョンのエリアボスが居た場所に雰囲気が似ていて、何かある思わせる。


「ここは宝物庫のあるフロアなのじゃ!」


「宝物庫?」


「そうなのじゃ! ダンジョンにも稀に現れる、お宝が集まり貯まる場所や、物の事なのじゃ!」


 へ~、そんな物が有るのかぁ。

 もちろん、宝物庫のお宝をGETするには、ギミックを解除する必要が有ったり、宝物庫の番人とか守護者が居たりするらしい。

 そして、ここの宝物庫は、その守護者が居る見たいだな。


 折角ここまで来たのだから、宝物庫のお宝をGETする為に、二本の大木が入り口の宝物庫フロアに侵入し、そのまま宝物庫が有ると思われるフロアの奥へ行く。

 進むと大きな影が見えて、その影の近く寄ると、何故か霧が晴れて来る。

 影の正体は、幾つもの大小の岩が山の様に積み上がり、その岩を何本かの木の根が、岩を抱える様に絡みついた物だった。大きさはかなりの物で、高さ15mは有りそうだ。

 なんか、この岩山が守護者な気がするよなぁ。

 そして、ここら辺りだけとは言え、折角霧が晴れ視界が効いているので、守護者と思われる物にはあまり近寄らない様にし。スキルで感じたエネルギーが、宝物庫なのか確認しようと少し回り込んみ、遠目からフロアの最奧を覗いて見た。


 まず、エルナの視界に一番に飛び込んで来たのは、きらきらと光る巨大な黄金の輝きだった。このきらきらの大きな黄金の塊。よく見ると、巨大な黄金の苔玉である事が分かる。


「ねぇ、チナ。あの大きな金色の苔玉が、宝物庫なの?」


「しょうなのじゃ! あれは間違いなく宝物庫なのじゃ♪」


 巨大な黄金の苔玉を見たチナは、中身を妄想して恍惚とした表情を浮かべている。

 うん、幼女がしちゃいけない表情だよ。まあ、チナは幼女じゃないんだけどさ。

 あと多分だけど。あの黄金の苔玉には、チナが喜ぶ様な金銀財宝の類は、入って無い気がするけどなぁ。


 何にせよ、近づけば守護者が動き出して、戦闘が始まりそうだ。

 だから、しっかりと戦う準備してから、守護者との戦闘に入ろうじゃないか!

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