第39話「覇道砲のヒカリ」
沖谷艦長がボケを連発している間にも魔王軍側から激しい攻撃を食らっている宇宙戦艦トマトだが、覇道防壁の効果は高い。
そんなボケ老人の沖谷艦長だが、不意に眼光を鋭くして言った。
「本艦は上空の不気味な暗雲を吹き飛ばすべく、一旦大気圏外に出て、艦首覇道砲によってこれを敵諸共消し飛ばすこととする! 島田! 急速上昇!」
正気を取り戻した沖谷艦長はさっき寝ていた事を無かったかのように、的確な判断で指示を下す。
「トマト、急速上昇!」
島田航海長が復唱し、メインエンジンと補助エンジンが、全力の焱を吐き出す。
艦全域に押し付けられるような加速感と共に 、艦首がグッと持ち上がる感覚に支配される。
魔界の生物たちには追ってこられない宇宙空間に出た。
トマトは地球の重力に引っ張られない静止衛星軌道まで上昇し、艦を固定させた。
そして宇宙戦艦トマトは『覇道砲』発射の為の、長大なシークエンスに入る。
覇道砲を使用するためには全エネルギーを覇道砲に回す必要がある。
つまり『覇道砲を大気圏内で使用する』という事は、『そのまま落下する』と言うことだ。
だから覇道砲を撃つ為には、落下の心配が無い宇宙空間に出る必要があるのだ。
機関内の全エネルギーを停止し、『次元覇道エンジン』再起動の為の十分な電力を確保した後、非常弁を全て閉鎖し、エンジン内の圧力を上昇させる。
ここで機関長が一言。
「エンジン内圧力上昇」
エンジン内の圧力を上げ、非常弁を全て閉鎖した後、覇道砲へのエネルギー伝導管の回路を開き、強制注入機を作動させ、エンジン内のタキオン粒子を覇道砲のエネルギー充填用シリンダー内の薬室(タキオン圧力調節室)へ注入する。
薬室内圧力が限界に近づくタイミングで、
「セーフティロックボルト、解除」
機関長が操作をして、シリンダー底板の「制御ボルト」を解除する。
覇道砲はトマト自身が砲身となるため、照準を合わせる為には艦ごと移動しなければならない。
その為に操艦を島田航海長から古平戦闘班長へ委譲され、古平のトリガー操作によって艦首が目標方向に合わせられる。
「ターゲットスコープオープン」
ヘッドアップディスプレイとトリガーがジャキッと飛び出し、電影クロスゲージ(目盛り)の明度を調整した後、目標の種類と距離を読み上げる。
「覇道砲、エネルギー120%」
機関長の報告が入る。
発射10秒前の段階で、
「対ショック・対閃光防御」
古平の号令で第一艦橋など窓のある部屋に居る乗員は対閃光ゴーグルを装着、発射の反動に備えた防御姿勢をとる。
古平戦闘班長のカウントダウンが続く。
「発射」
合図と同時にトリガーを引く。
連動した「突入ボルト」が後方から前方の制御ボルトをシリンダー内へ押し込む形で突入する。
制御ボルトにより、一気に前方へ押し出された高圧縮タキオン粒子はバーストセクションで解放され、タキオンバースト覇道流となって艦首に大きく開いた発射口から前方へ噴射される。
ピシッ! ガガガガガガガガガガガガガガガ
巨大なエネルギーの奔流が一直線に地球の表面を
地上から見るとそれは、「黒い太陽」によって真っ暗になりつつあった東京上空に、一直線に走った流星のようだった。
エネルギー流は東京を覆っていた闇のエネルギーをかき消し、上空に固まっていた飛行系のモンスターの半数をも、飛び散るエネルギーの破片で道連れにしていった。
半日ぶりに東京に日が差した。
これによってモンスターが若干弱体化し、月からマイクロ波に乗せてと送られてくる『ムーンプリズムパワー』が100%伝達されるので、
沖谷艦長はボケ老人では無かったのだ!
覇道砲のエネルギーと黒い太陽が発していた空を覆う黒いエネルギーが
トマトの第一艦橋では『宇宙戦艦トマトBGM集』がヘビーローテーションで掛かっている。
その行く手を阻むようにドラゴンの一団が集結してきたのだった。
「前方に大型飛行生物、多数集結。本館に向かって敵対行動をとる模様です」
生活班長兼レーダー手のユッキーナが報告をする。
「何だアレは? まるでファンタジー映画に出てくるドラゴンそのものじゃないか!」
正面メインスクリーンを見ていた島田航海長が叫ぶ。
「ドラゴンって、
古平は素直に驚いている。
「古平、こんなこともあろうかと、『対ドラゴン捕獲砲弾』を開発しておいた! 20センチ三連装衝撃砲に装填してくれたまえ」
出た! 技術長兼副長【
「こんなこともあろうかと」
発動だ!
何故お前は架空生物の『ドラゴン』と戦うことを想定していたのだ?
トマト史上において彼ほど便利・・・いや、恐ろしく先見の明を持った人物は居ないであろう。
過去の事例で言えば、
『こんなこともあろうかと、実は俺の義手・義足である両腕と両足には、高性能爆弾が仕込まれているのだ!』
えええええええええ? 衝撃の事実! 義手義足だったのもビックリしたが、今まで爆弾抱えて普通に艦内で生活してたの???
などなど、武勇伝は多々ある。
先手を切ってコズミックタイガー隊がドラゴン族にアタックを掛ける。
3機を1小隊としたコズミックタイガーが、まるで1機の大きな航空機のようにピタリと揃ったまま旋回・上昇をし、一気にドラゴンの群れに下降して30ミリパルスレーザー機関砲を叩き付ける。
急降下攻撃の
間髪を入れずに次の隊が急降下してくると言う仕組みである。
全高20メートル前後を誇るドラゴンたちは、全身を魔法の鱗に
急降下を欠けてくる戦闘機隊に対し、ドラゴン隊は魔力を込めた羽ばたきで風を起こし、竜巻の気流でコズミックタイガーを翻弄する。
中には氷のブレスをぶつけてくるドラゴンも居て、攻略はなかなか難しい。
「対ドラゴン捕獲砲弾、準備よし!」
部下からの連絡を受け、照準を合わせる。
「20センチ三連装衝撃砲、打ちぃ
DOOOOOM DOOOOOM DOOOOOM
古平戦術長の合図で20センチ三連装衝撃砲の砲身が火を噴く。対ドラゴン捕獲砲弾は実体弾だ。
トマトの砲身はエネルギー弾も実体弾も打てる優秀な大砲なのだ。
砲弾がドラゴンの目前に来た時、砲弾自身が破裂し、
バシャァァァァァァァ! と音を立てて投網(電磁ネットワイヤー)が広がる。
最初の砲撃で5体のドラゴンが飛行能力を阻害されて落ちていった。
自分たちの強さにうぬぼれていて、余裕を噛ましていたドラゴン族だが、仲間が落ちてゆく姿を見て焦りを感じたようで、一斉にトマトに向かって突撃を開始した。
ドラゴン隊には様々な色のドラゴンが居て、体表の色によってその能力は異なる。
中でも金色のドラゴンはカミナリ系のブレスを使う種族である。
金色のドラゴンは野生の本能か、ドラゴンという戦闘種族の血のなせる技か、戦闘機がカミナリ系の攻撃に弱いことに感づき、『サンダーブレス』を広範囲に吐いてコズミックタイガーに攻撃をした。
コズミックタイガー隊はブレス直撃で落とされる者も居たが、サンダーブレスの周辺に発生する電磁波流で計器が狂って飛行不能になってしまい、やむをえず脱出装置を作動させる者も居る。
先の攻撃と合わせて、12機の内7機が落とされた。
龍種の中では一番気の荒い
トマトの場合、敵が甲板に乗り込んできてしまったら、為す術が無い。
全高20メートルのドラゴン相手に白兵戦か?
大迫力のリアル大怪獣映画だ。
「防御シャッター閉めろ!」
第一艦橋の全面ガラス張りの部分に分厚いシャッターが
正面がモニタースクリーンに変わる。
スクリーンの中では大怪獣が三番砲塔を蹴り飛ばしている!
GAGAGAAAAAAAAAANNNNNN!!!!
艦全体が大きく揺れ、爆発音が響く。
「宇宙戦艦トマトBGM集」を掛けているレコードの針が飛び、スピーカーから「ガリッ」と音がする。
「
席から立ち上がり、艦長に向かって敬礼をする古平。
「出撃を許可する」
白い髭面の沖谷艦長が渋い声で応える。
誰も「第一艦橋で指揮執ってる人が出て行っちゃマズいだろ」とは言わない。
彼は自由人だから、やりたいことをやりたい時にやるのさ!
古平がコズミックゼロに向かう間に、第一格納庫に収容されているゼロがリフトに乗って、艦後部の固定式カタパルトにリフトアップされた
「アルファ
「こちら離着艦管制室、発艦を許可する」
コズミックゼロは2機しか搭載されておらず、コードネームを「アルファ
対ドラゴン捕獲砲弾によって次々と無力化されているドラゴン隊だが、
先ほど抜けてきた赤龍以外は何とか対空砲火とコズミックタイガー隊で押さえ込んではいるが、20センチ三連装衝撃砲を蹴り飛ばされた今、かなり危ういバランスになってきている。
GAN! GAN! GAN! GAN!
赤龍が第一艦橋の載っている部分にパンチ攻撃を始めた。
艦後部から発艦したゼロは、軸流式コズミックエンジンを噴かして急速反転をし、背面飛行状態で赤龍の姿を捕らえた。
そのままドラゴンの脳天をめがけて急降下を掛ける。
コズミックゼロの機首に装備されている機関砲が火を噴く。
機関砲は機種に開いている穴から発射されるエネルギー弾で、薬室内で形成した陽電子砲弾を発射することができる大砲だ。
陽電子砲弾は見事に赤龍の顔面を捕らえ、ドラゴンをつんのめらせる。
怒ったドラゴンが甲板で大きく大きく深呼吸をする。
全身の隅々にまで酸素を送り込むとピタと
次の瞬間、火炎放射器の炎の様な火柱が赤龍の口から伸びてきた。
機関砲発射直後に急速反転上昇をして、赤龍から距離を取っていたつもりだったが 、20メートルもある大怪獣にとってはさほどな距離では無かった。
龍の全力ファイヤーブレスは小平の予想を遥かに上回る速度で、コズミックゼロに迫ってくる。
ブレスの恐ろしいところは、見た目より効果範囲が広いことだ。
ファイヤーブレスが遠くを
「熱っっ」
と叫ばずにはいられない程、肌をヒリヒリと灼く熱波に襲われる。
少しでも直撃したら一瞬で持っていかれるだろう。
本来の目的である『赤龍を落とす』為には、まだまだ何回かアタックしなければならない。
小平が何発も当てなければならないのに対して、赤龍は一発掠めれば良いのだ。かなり分が悪い。
1回目のアタックは奇襲が効いたが、2回目からはそうはいかない。
間違っても第一艦橋に当てる訳にもいかないので、自ずとアタックコースは限定される。つまりドラゴンにとっては狙い易いと言う訳だ。
その後1回2回と繰り返される同じコースからの急降下アタックに赤龍は直ぐに気付き、3回目のアタック時には急反転・急降下をした瞬間を狙ってブレスを吐いてきた。
真っ赤に燃え盛る炎の柱が、反転直後の回避行動が取りにくいタイミングを狙って撃ってくる。
小平は
肺に灼けつく空気が入り込む。
まだ、生きている。
眼下に陣取る巨大なドラゴンの眼がしっかりと小平の眼を捉えたと直感した。
ヤツが大きく息を吸い込むのが見える。
開かれた赤龍の口から、灼熱の炎が
小平の方が一手遅い。
ドラゴンの口が大きく開き、灼熱の炎が吐き出される。万事休すか。
しかし火柱はあらぬ方向に立ち上がった。
「こちらアルファ
小平の反対側から回り込んできたコズミックゼロ2号機、【
赤龍が天を向くその状態は、顎(人間なら急所)を直接狙える絶好のチャンスになった。
古平はこのチャンスを逃さず、機関砲を顎裏に撃ち込む。
ドラゴンはたまらず
辛くもドラゴンを排除したが、第一艦橋下の部分と、2番砲塔・3番砲塔が破壊された。
ちなみに2番砲塔はテイルスピン、3番砲とはキックで潰された。
「目標排除確認。アルファ
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〈あとがき〉
データや設定は『宇宙戦艦ヤ〇ト2199』をベースにしております。
頑張って〇マトあるある詰め込みました。
あとは第三艦橋を壊すくらいかな。派手に壊したいと思います。(笑)
〇動砲ですが、大気圏内だと撃てない事に気付き、今回一旦宇宙に出ると言うつまらない方法を取ってしまいましたが、大気圏内で撃てるとんでもなく超アホアホな方法を思いついたので、乞うご期待っス。
でもそれはいよいよ神ハデデスと戦う段階までお預けですw
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
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https://kakuyomu.jp/works/16816700427028791174
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