「魔王軍VSスパロボ&スーパーヒーロー’S ~魔界から魔王軍50万が東京に攻めてきた件~」

じょえ

「魔王軍サイド」

第1話「激闘エンシャントブラックドラゴン」

「魔王軍VSアニメ&特撮スーパーヒーロー’S」

著:初業務 JOE



「魔王軍サイド」


第一話

「激闘エンシャントブラックドラゴングクール」




 太古の昔、神々の戦いで敗れた神【ハデデス】は【太陽神 ソル】を筆頭とする神々によって、神力の殆どを奪われ、地底世界に押し込められた。


 以来ハデデスは地底世界、【深淵の神 ハデデス】として、魔界の神となった。





「今こそ彼の暴れ龍を退治する好機。ヤツの気まぐれで殺されたたくさんの同胞の恨み、今こそ晴らそうぞ。・・・全軍、攻撃!」


 【魔王 ゴウラ】は魔界統一の為、活火山【業火の泉】の麓に陣を敷き、龍族に全軍をもって戦いを挑んでいた。


 『彼の暴れ龍』とは、深淵の神ハデデスが魔界に落とさるよりも前から魔界を支配していた、言わば【魔界の主】たる存在【エンシャントブラックドラゴン グクール】である。


 神が魔界に来て以来、魔界の派遣をめぐって神の使徒である魔王と古龍は世代を超えて幾度となく戦ってきたのだ。


 今代の魔王もまた、幾多の部族を討ち滅ぼし、軍門に下らせ、最大最強の敵である魔龍グクールを打ち倒さんとしているのだ。


 10階建てのビルのサイズと同じ、身長30メートルを誇る魔王。

 魔族の王を名乗るだけあって、グレーターデーモンキング種の中にあっても、群を抜いて大きなサイズだ。


 人間サイズの一般兵から見れば、ゴウラのその顔は遥か上空にあり、暗い魔界ではよく見えない。

 だが少し離れれば、ゴウラの頭の左右に太くて大きな角を生やしていることは、シルエットで見て取れる。


 もう一つの特徴としては、黒いマントを羽織っている。とてつもなくデカいマントだ。


 ゴウラは全軍に攻撃開始命令を出した後、腕組みをしながら火吹き山を睨んでいた。


 火吹き山に棲んでいる魔龍グクール。

 3万年以上に渡り、数代もの魔王の攻撃を跳ね除け、返り討ちにきた、魔界最強の生物だ。


(ヤツめを倒しその魔力を取り込むか、我が軍門に下らせられれば良いが・・・。全てはあのバケモノを倒してからの話しだ)



 魔界は普段から赤黒く、薄暗い空をしている地底世界である。


 薄暗い魔界にあって、この地、【業火の泉】だけは常にマグマを噴出させている為、天に煌々とした赤い光を発している、実は魔界一明るい場所だ。


 そして常に摂氏1000℃のマグマが流れているので、その暑さも魔界一だ。


 龍種族は【魔龍グクール】を筆頭に、魔界の辺境にある【業火の泉】と呼ばれる、活火山のマグマの中に棲息しているのだ。


 しかし、魔王軍の前に立ちはだかった龍はたった一体。


 だがその一体は、古来より魔界を支配してきた身長30メートルの巨大な最強最悪の龍だ。

 その名も【エンシャントブラックドラゴン グクール】。


 彼が仲間を巣に残し 、たった一体で魔王軍全軍を相手にするのは、降参する為ではない。


 魔王軍ごとき、彼以外は必要ないからである。


 近年になって、降って湧いたように現れた新たな魔王を名乗る若造に、

『格の違いと言うモノを教えてやる』

 と言わんばかりに、山頂の火口付近にその巨大な翼を広げて仁王立ちし、挨拶代わりのドラゴンブレスをお見舞いしてきた。


 ドッゴォォォォォォォム!!


 長大な魔龍の首が一旦後ろに返ってから、一気に下手の魔王軍に向けて禍々しくも真っ黒いブレスを吐き出した。


 黒いブレスの中ではキラキラバチバチと放電現象が起きていて、一直線上に吐かれたブレスは辺りの山肌を赤黒く焼け焦がし、先頭を切って突っ込んでくる魔王軍の魔獣軍団と亜人軍団の合計20万の兵たちの大半が瞬く間に消し炭に変わっていく。


 しかしそのブレスは軍団の中程にいる、第二陣を率いている【魔獣軍団長 ウガルルム】の十字ブロックによる《気力バリヤー》と【亜人軍団長 オルグ・ハイ】の《エルダーマジックシールド》によって弾かれ、四散させられた。


 軍団長たちはともに20メートル前後の巨体を誇っていて、最古の魔龍と言えどもおいそれとは崩せない。


 最初のブレスを生き残った第一陣の総勢1万体の魔物の軍勢は、徐々に強大なるドラゴンに取り付き始めた。


 数で掛かるオーク・ゴブリン・ホブゴブリンなどの亜人種で構成される亜人軍団。


 ブラックウィドウ・ファイアリザード・ヒュージベア・ロックボウ・ダイヤウルフなどの魔獣どもで構成される魔獣軍団。


 彼らは一斉にドラゴンの足に・羽に・取り付き、剣・牙・槍・棍棒・ハンマー・斧など、それぞれの武器で攻撃した。


 しかしドラゴンの頑強な鱗には傷一つ付かない。


 グクールが『ウザい!』とでも言うように脚を振り払い、尻尾で横薙ぎに打ち払うと、軍勢のほとんどが死に絶えた。

 脚と尻尾、それぞれたった一振りで死体の山が出来上がった。


 魔龍のその2動作で第一陣の軍勢はほぼ壊滅状態だったが、トドメとばかりにブレスを足下に吹き散らす。


 彼らは骨も残らず消し炭になった。



 第二陣を率いている呀王とオルグ・ハイがタンクとなって、エンシャントブラックドラゴンの苛烈な攻撃を受け止めている間に、魔龍より少し小さい、身長25メートルを持つ【恐竜軍団長 ウルトラレックス】が、足下に居た味方をも蹴散らしつつ全速力で突撃してきた。


 ウルトラレックスの山のような大きな頭蓋が

『ガバッ!』

 っと開き、魔龍グクールの首に噛みついた。


 GIYAAAAAAAAAAA!!!


 人間サイズのゴブリン兵などはそのグクールの悲鳴の音量で鼓膜が破れ、体に『ドドドドドド』っと重綴音の音波による振動を食らい、失神で倒れた者が続出したくらいの大音響が響く。



 彼らが山頂付近で激突している時、魔王軍が陣を引いた麓では、【魔術軍団長 マスターリッチ】が、部下のウィッチ100体とサキュバス500体を使って魔法陣を描き、魔術儀式を行っていた。


 魔法陣の周りでは魔術軍団を形成している3000体の魔術系モンスターが輪になって魔法陣にパワーを送り込んでいる。


「天空より使われし我が友よ。我の願いを聞き入れ、彼の者を射て。メテオシャワーストライク」


 天はマスターリッチ ナンシーの願いを聞き入れ、魔龍グクールに流星群を降らせた。


 GOGOGOGOGOGOGOGOGO


 BANG! BANG! BANG! BANG! 

 BANG! BANG! BANG! BANG!

 BANG! BANG! BANG! BANG!


 空から降ってきた流星群は、ドラゴンを中心に半径500メートルに降り注ぎ、大地もドラゴンもボコボコに変形させたのだった。


「あのクソビッチ! オデまで殺す気か!」


 グクールの首に噛み付いていたウルトラレックスが、ナンシーのいきなりな大魔法攻撃に慌てて逃げ帰ってきていた。


 降りしきる隕石の中、太古の魔龍は再びブレスを吐き、辺り一面を黒い炎で灼き尽くす。


 魔界でも指折り数える程の強者であるウガルルムとオルグ・ハイの二体が、魔界最強と謳われる古龍相手では防戦一方である。


 もっとも彼らが強力タッグでグクールの猛攻を防いでいるから、魔王軍の被害も少なくて済んでいるのだ。


 なにせ魔龍グクールの爪・尻尾・羽ばたき・蹴り・牙・ブレス、どれを喰らっても一撃で百回は死ねる程のダメージを与えられる、何気ない一発一発が超必殺技級の攻撃だ。


 耐えられるだけでも大したものなのだ。


 各軍団長に攻撃をさせ、最強の敵エンシャントブラックドラゴンの気をそちらに向かせていた魔王ゴウラ。

 直属の近衛隊に周囲を守らせ、陣の中央に背負っていた戦闘用祭壇を設置した。


 祭壇と言っても身長30メートルの魔王が背負ってきた祭壇だ。8メートルもある石柱だ。

 祭壇は鈍く黒光りする魔力を宿した石で、その表面にはビッシリとルーン文字が刻まれている。

 設置作業は簡単だ。祭壇をザクっと地面に突き立てれば終了。


 魔王は祭壇に魔力を注ぎ込み、彼が信仰する【深淵の神 ハデデス】に祈りを捧げた。


 軍団長クラスにならないと全く相手にならない魔竜に対して、下級の兵隊たちをも突撃させたのは無駄ではない。


 彼らに神の加護を与え、其の死が即ち『神への生贄』として捧げられる呪いを掛けていたのだ。


「我が神、【深淵の神 ハデデス】よ。我に力を与えたまえ! この猛々しい龍めに偉大なる貴方様の神罰をお与えください! 《地獄の審判》」


 ただでさえ薄暗い魔界の空に暗雲が立ち込め始め、不意に真っ暗になった。火山がより明るくなった刹那、分厚い雲の中に紫と黄色の光がビカビカと渦を巻き始めた。


「グクールよ、正直我としては貴様に恨みはないが、我が神が毎晩枕元に立って、貴様を倒せと囁くのだ。我の安眠のためにも死んでくれ! すまんな!」


 ゴガガガガガガァァァァァァァン


 間髪をいれずに渦の中心から発せられた黒い稲妻は、体がビリビリと震えるほどの大音響を響かせて、古の邪竜を直撃した。


 遥かなる古から存在する始祖神の一柱である【深淵の神 ハデデス】が、彼が最も信頼する使徒の一人である、グレーターデーモンキングの【魔王 ゴウラ】の祈りを聞き入れ、彼の敵【エンシャントブラックドラゴン グクール】に、ハデデス神最強の神罰を叩きつけたのだ。


 魔王を筆頭とする魔王軍30万の執拗な波状攻撃によって、じわじわと体力を削られていた邪竜グクールは、一瞬のガードが間に合わず、魔王の極大攻撃魔法を喰らってしまった。




 オーク・ゴブリン・ガーゴイル・トロール・コボルド・キマイラ・ジャイアントワーム・・・総勢10万もの兵の命を生贄に成された神の神罰は強力だ。


 一発喰らったが最後。


 ハデデス神最強の攻撃は、生け贄の力を得て更に魔力を増大させ、物理攻撃も魔法攻撃もたいしたダメージを与えることができない邪龍の鱗を難なく通り抜け、彼の魔龍の体組織に多大なるダメージと、同時に1秒間の絶対停止を付与される。

 その雷は一発では終わらず、何十発と邪龍の体を貫くのだ。


 黒い稲妻はグクールのみならず、火口に巣喰う同族の龍たちにまで、何十発と雷が撃ち続けられ、龍の里も壊滅状態になってしまった。



 エンシャントブラックドラゴン グクールの意識が遠くなる瞬間、彼の前に天から一筋の光が降り立ち、光の中から龍の身長の倍もある恰幅の良い髭面の大男が出てきた。


 その大男は、最後の奇跡コールゴッドによって呼び出された【深淵の神 ハデデス】その人だ。

 髭面の神は傷付きながらも神を睨みつけるグクールの前にしゃがみ込み、龍の頭を優しく撫でた。

 その姿はまるで子犬をかわいがるかのようだ。


 神は龍を撫でながら心の声で話しかけた。


「グクールよ、永きに渡りこの地の秩序を守ってくれて感謝する。三万年の時を経て、我はついに力を取り戻した。我は地上の神々どもに三万年前の恨みを晴らすため、この者たちを導いて地上に討って出ることにしたのだ。そのためにはお前の力も必要だ。どうか我らに力を貸してはくれまいか?」


 ハデデスがグクールを撫でる度、満身創痍の龍の身体はみるみる治っていく。


 三万年前にこの地に神が来てから、このいけ好かない神に導かれた軍勢と最古の龍は、幾度となく戦ってきた。敵同士ではあるが、旧知の仲だ。


 傷が癒えてきた龍はゆっくりと口を開いた。


「貴様がこの地を出て行く為と言うのであれば、今回だけは手を貸してやるのもやぶさかでは無いぞ」


 この日、【魔王 ゴウラ】は魔界最強の敵、【エンシャントブラックドラゴン グクール】を屈伏させ、彼と彼の一族全部を条件付きで魔王軍に組み込ませることに成功したのだった。


 深淵の神とその使徒の悲願である《魔界統一》は、成就された。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る