第74話
急加速の影響で一瞬乱れた視界が元に戻った時、男はついさっきまで正常に動作していた立体映像が消えてしまっている事に気が付いた。
「なんだこりゃ!どうなってんだ!何も映らなくなったッ!!」
「落ち着け!」
「範囲を拡大しちまっただけだ!壊れたわけじゃねえ!」
「・・・あ。ほんとうだ!直ったよ!・・・いてえ・・・ここにぶつけたんだ!」
立体映像は正常に動作して、クルードの様子をリアルタイムで映し出していた。
現在見えているベースメンターの総数は60機、それぞれが1秒ごとに連携しクリック音を発声させるため、巻き上げられた塵や灰が落ち着けばさらに正確な状況を知ることが出来る。
映像上では早くも仲間たちによる反抗作戦が決行され始めて、加速したベースメンターが次々と局員と思わしき影の上を猛スピードで通過していた。
加速後まもなく、エクスプロイターの流れ弾が飛んできて、それは走行中の機体側面に命中して辺りに強烈な閃光を放った。3名の搭乗員は思わず悲鳴を上げた。
「やられたっ!!やられっ!!!た!!!やられたのか?!」
「大丈夫だ!俺たちはなんともねえ!けど!」
「あんなもの・・・なんで使えるんだ?!」
「おれたちを・・・・あれでっ!!・・・あれで!!」
3名を乗せたベースメンターは、彼等の故郷であるクルードの地をその重量で踏み砕いて、ぐんぐんと加速した。それが目指すは、最も近くに映し出されていた平和贈呈局員のチームと思わしき3個の生体反応であった。
「右のは・・・ガキどもだな数が多いから」
「こいつに乗ってる奴ら以外に3人で行動してる奴だ!!ソロモンが言ってた!3人だ!3人!」
「わかってる!こいつらだッ!行くぞ!」
「いけぇ・・・・!!!・・・・でも・・でもよ!」
そんなことをしたら?
しかし。
「だけどやるしかねえっ!!」
機体が左に傾いて、3人の体はコーナーの外側へ引き寄せられた。伸びきったハーネスに引かれるのと少し似た感覚だが、経験した事の無い奇妙な、あえて言葉にするのならば、機械的で、制御の効かない、こちらとの対話を極力拒むような冷たい感覚だった。加えて、映し出される立体映像はまるで、見えない地面の位置を自分だけが正確に知っているかのように、全てが傾く景色の中で唯一水平が保たれていた。それが彼等を一層不気味にした。
3個の反応に向かって、ベースメンターは吸い込まれるように加速する。
「・・・・!!」
「やれっ!やれっ!!」
「・・・・!!!」
「やったか?」
「・・・やった!!!やった!やった!!」
「ああやったに決まってる!!」
「ああそうだよな?」
「・・・守った!」
「やったんだ」
立体映像上の反応が一瞬重なり、
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