ブルーカラーコンプレックス

うなぎの

第1話

ここは、掃き溜めに溜まるウジ虫共の糞以下の街だ。


建物の影で薬物が売られ、路上に停められた車の中では女が殴られ、通りでは屑共が堂々と児童ポルノ話で盛り上がっている。


かと思えば、数えきれない宗教の内一つに属する熱心な信徒が、手作りのプラカードを掲げてまるでゾンビのように街を徘徊している。


その文字の意味を奴らは理解しているのか?


いいや、それはありえない。


プラカードにはこう書かれている。


『創造主を讃えよ!』


よくそんな事が言えたものだ。


一日の労働を終え、風呂にも入らず地面に座るクズ共、奴らブルーカラーは、紛れもない、人類という文明が生み出した汚点の一つだ。


虫唾が走る。





301ハイウェイは南西に向かって大きくアーチを描くこの街で最も交通量の多い道路の一つだ。


他の大勢と同じように、高速で滑る車の中から一瞬見える、ビルとビルの隙間の街の様子を眺めて、ヨナは業務中にくすねた青い乾燥飼料をポケットから取り出しひと口頬張った。


「なんて不味いんだ」


彼が車の窓を開けると、搭載された管理コンピュータがやかましい音を立てた。


ヨナはその音に目もくれず、今日も飽きる事無く荒廃する街の一部と化したブルーカラーたちへ向ける視線と共に、残った乾燥飼料を窓から投げた。





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