Epilogue


 ここは地上から、遠く離れた遙か空の上。


 ふわり浮かぶ雲の船、腰を下ろし微笑むのは全てを見ていた、あの神様。


 天使達はもうここにはいない──顔を赤くして、力の限り泣いている小さな生命。



 生まれ変わったのだ。


 

 焼け崩れた残骸、焦げた地獄のような場所で泣いていた二つの魂。


 見つけて抱き上げたのは、あの二人。



 “この子達のお父さんとお母さんになろう”


 二人の誓いは、澄んだ風に乗って天まで届く。



 最初からそのつもり──海斗の目覚めた朝に産まれたもうひとつの奇跡は、神様からの贈り物だった。

 

「ちょっとずつ、飲み込んだか見ながらあげてね」

「こう? 」


 周囲に教わりながら、離乳食を与え、おむつを変えて……初めての育児に奮闘する遥と海斗。


 見守る神様は、満面の笑み。


 今は悲しみに暮れ、泣いてばかりの双子もやがて新たな愛に気づき、健やかに育っていくだろう。


 

 人生が続く限りまた試練は訪れるかもしれない、でも今はまだ。穏やかな時に包まれる彼等に微笑みを向ける神様。



 風が吹き、雲をさらう。



 母となり、大切そうに生命を胸に抱く遥。その微笑みは愛に満ちている。



《あなたはだあれ?~完結~》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る