飲んだくれ
いつもぬる燗でと酒をたのむ
親父がいる
鬼殺しと剣菱の瓶を女と間違うほど
鼻の頭が酒やけした饒舌の
会長と自称して
どこからか小金を調達しては
朝からのんでいる
ツマミは与太話、ひとに酒を
振る舞うのが大好きで
薄暗い顔をしたイチゲンの客に
話しかけては笑い禿げた頭をツルリと撫ぜる
はじめは怪訝そうな顔している客もいつの間にか親父の人よしに呑まれて、安酒に飲まれて、悩むのが馬鹿馬鹿しくなってくるのか、笑い転げているのがこの親父の手練手管だ
きっと人よしの赤鼻の男は酒のかみさまに気に入られているのだろう
「ちょっちょっ大将」
俺の事を半ば酔いで潰れてる瞼のまま手招きすると隣の涙にくれる歳若いオンナに、ぬる燗をやってくれと
注文する、月末に払うさかいに、と言うがそれが果たされたことは一度もない
詩集 ぜんぶわたしがやりました 井上橙子 @touko_1005
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