アニムス

むかしむかし

肌がぴんぴかだったころ

少年がいた

私の中に


その年頃にありがちな

少女の媚の裏に

仄暗い目をした少年は

鈍く虹彩を弾くナイフを

片手にしていた


そのナイフは怒りだった(のかも知れない)

世界に吠えていた(無駄吠えに終わったが)

他者への攻撃性ではなかったように

思うが定かではない(それは祈りにもにている)


よれたTシャツと汚れたジーパンを

履いた少年は、ひとつづつ、すこしずつ

削り取られ、剥ぎ取られた(私の手で)


歳を重ねて行くうちに

(女として生きていく術、ということか)


今でも怒りに苛まれる時にはあの少年の

ナイフを思い出す

彼は未発達のロゴス、

通りすぎた私のアニムス


まだ、彼はあの街角にいる

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