詩集 ぜんぶわたしがやりました

井上橙子

演じた人々

舞台、ひと夏の真夜中

主人公、

餌付けが得意で

ばらまいては引き寄せ

でも、あいを返せはしない

まずしいbreeder

脇役、犬(のような)

その他キャスト、


支配的な主人と

腹をみせた犬

吐き出される言葉を耳で

貪り脳髄まで声があふれる

お腹いっぱいでも

まだ足りない


熟れて腐りかけたトマトを壁にぶつけるように酷い言葉をなんども投げつける

その度に淋しく、無力に染まり、俯いた犬(の様な)

(暴力的な蜜月)


幕裏のものがたり:同時多発的に行われた餌付け


赤蜻蛉が街に姿をみせた。

夏も終わりに近ずいて

犬(の様な)は「じゃあね」と、

沈黙して瞳を閉じ耳を塞ぎ

緞帳を落とす。


【終劇】


決してかみさまとの駆け引きでは無かったけれど流れに身を委ねた。

流れ流されて、

いつか何処かの岸辺にたどりつくまで、犬(のような)。

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