壊滅した東京にいたヘンな女の子と行動を共にすることになりました。

前花しずく

何かが起きた。

 僕はなんで生きているんだろう。最近そんなことばかり繰り返し考えていた。特に取り柄があるわけでも、特技があるわけでもない。ただ普通に学校へ行って、平凡に生活しているだけ。ありきたりな言葉ではあるけど、僕がいなくても世界は回る。そう思うと、生きよう、頑張ろうという気力がどんどん心から抜け落ちていく。

 今日もばあちゃんの葬式の最中、ずっとそんなことを考えていた。ばあちゃんは八十年強生きてきてなんの意味があったんだろう、何か残すことが出来たんだろう。よく「他人の心に残り続ける」みたいに言われるけど、他人の心に残ったところでそれにはなんの意味があるのだろう。考えれば考えるほどドツボにハマって、ますます自分の立ち位置が見えなくなる。

 生きている意味ってなんなんだろうな。

『まもなく品川、品川……』

 横浜から乗った電車は東京圏に突入しようとしていた。まだ帰宅ラッシュではないけど、既にサラリーマンで溢れかえっている車内。このサラリーマンたちの中で、社会に必要とされている人、世界に必要とされている人はどれほどいるんだろう。目の前に立っている小太りのおじさんも、座席でパソコンをカタカタ叩いている人も、ほとんどの人が目標もなくただ言われたことに従って動いているだけじゃないのか。そして、きっと僕も近い将来この人たちと同じようになるのだろう。平凡に生きて平凡に働いて平凡に死ぬのだろう。そう思っていた。


 ――この時までは。


 突然、車内が真っ白に照らし出された。窓の外で何かが強く発光したらしい。なんだろうと考える間もなく、進行方向左側の窓が一斉に割れて人の群れに襲い掛かった。それだけではなく壁までもが僕の体を殴りつけてきて、そのまま宙に浮いた。

「――っ!?」

 声を出す暇すらなく、僕の意識は闇へと落ちていった。

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