秘密

私は今日は久々の外出許可だから思う存分楽しもうと密かに気合を入れた。

 貴亮には言っていないけど、私には秘密がある。私はもう少しで死ぬかもしれないのだ。小さい頃からずっと言われてきた。「15まで生きれるかわからない。」私の心臓は私についてきてはくれないらしい。だから私は全日制の高校ではなく通信の高校を選んだ。通信といえど課題はあるし、体調的にきつい日もある。でもできることをやらなきゃ。後悔したくない。その一心で必死に生きてきた。

 でもこの前、16の誕生日を迎えることが出来た。それだけで奇跡なんだ。心臓移植のドナーを待ってはいるけど手術をみんなが受けられるわけではない。手術待ちのまま亡くなる人が大半だから死の恐怖はいつも私にまとわりついている。

 今日の外出も家族や担当医の先生に必死に止められた。SNSで知り合った人と遊ぶなんてダメだとか私の病気を知らない人といるときに発作が起きたらどうするんだとか。たしかに貴亮が私の想像するような人ではないかもしれない。実際、多くの大人からSNSで知り合う人は危険だと教えられる。だけど、それでも会いたいと思った。

 文字から伝わる誠実さに声から伝わる優しさにたしかに私は惹かれていた。だから絶対、貴亮と直接会って話してみたかったんだ。

 私は必死に親と先生を説得した。スマホのGPSをONにしておくこと、江ノ島の付近の病院を調べること、少しでも体調が悪くなったら休むことなど色々な約束をした。私が遊びに行くことを渋っていたけどさいごかもしれないんだよと言ったら返す言葉がなかったようで許してくれた。少しの罪悪感はあるけどそれよりも遊びに行ける嬉しさが貴亮に会える喜びが勝ってた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る