勇者パーティーを追放された俺は、俺を追放した勇者パーティーが心配でしょうがない

@enji2815

追放そして


「おいロドリー!お前なんで弱っちい癖にあそこでハイオークに突っ込んでいきやがった?!

 お前のおかげでこっちはハイオークどもに囲まれるし散々だったぞ!」



 冒険者ギルドに併設された酒場で勇者パーティー『アルストロメリア』のリーダーであり、スキル【聖剣カリバーン】を持つ赤い髪に長身でイケメンだがキツそうな見た目の勇者アランはパーティーの荷物持ちである黒髪に黒目で良く言えば優しそう、悪く言えば気の弱そうなロドリーを怒鳴りつけた。



「あそこで俺が突っ込んでいかないとミ・・・いや、すまん・・・。」



 ロドリーが先のクエストでハイオークの群れとの戦いで前衛が討ちもらした1体が、仲間である大魔導師のミリーに襲いかかったのを助けるため、荷物持ちのロドリーでは手も足もでないハイオークに突っ込んでいってしまった為に、剣聖であるリアナがロドリーを助けるため前衛を離れ取り囲まれてしまったのである。

 もちろん敵を討ちもらした前衛であるアランとリアナにも非があるのだが。


「そうね、あの時はアタシが間に合ったから良かったもののアンタ、下手したら死んでたわよ?」


「助けようとしてくれたのは・・・嬉しい・・・でも・・・貴方に助けられなくても・・・なんとかなった・・・。」


 長く美しい金髪にスレンダーな体型の美人でありスキル【剣術・極】をもち剣聖のリアナと、赤みのかかった茶色の髪をサイドテールに纏めた低身長でスキル【魔力上昇・極】をもつミリーもアランに同調する。

 ウェーブのかかったアッシュグレーの髪に穏やかな雰囲気をしたスキル【慈愛の癒し手】をもつ聖女のフローネは黙って成り行きを見つめていた。


 勇者アラン

 剣聖リアナ

 聖女フローネ

 大魔導師ミリー

 そして荷物持ち兼雑用係りのロドリーの5人は同じ村で育った仲の良い幼馴染み同士だった。そう、『だった』のだ少なくとも周りから見ればパーティー内でのロドリーの扱いは仲の良い友人にするそれではない。

 最初からこうだったわけではない、ここ最近になり少しづつ皆がロドリーから距離をとっていた。


「あー・・・もういいや、ロドリーお前このパーティーから出ていけよ、これ以上俺達の足を引っ張るな迷惑なんだよ。」


 アランのこの発言にロドリー以外の3人は一瞬驚きの表情を見せたがすぐに


「・・・アタシもそれが良いと思うわ、大体アンタの【以心伝心】ってなんなのよ?

 何時までも仲良しこよしじゃいられないのよ、魔王を倒すという明確な目的もあるしこれから先はもっと危険な旅になるわ。」


「そう・・・だね・・・ロドリーは村に・・・帰るべき。」


「皆さんの仰る通りかもしれません、このままいけばロドリーだけではなく他のメンバーにも危険が及ぶでしょうし、私なら生きてさえいればどんな大怪我も癒してみせますがもし万一死んでしまっては生き返らせることはできません。」


 いつも優しく、普段こういう時にいつもかばってくれていたフローネまでもロドリーをパーティーから追い出そうとしていた。


「ええと・・・わ、わかったよ。」


 普通ロドリーの立場なら驚いたりショックを受けるのだろうが、当の本人は何故か少し困った顔をしただけですんなりとパーティーからでていくことを受け入れた。

 小さい頃からアラン達と世界一の冒険者になることを夢みていたが他の4人が強力なスキルを授かり、幼馴染み達の中で自分だけ良くわからないスキルだった時からなんとなくこんな日がくるような気もしていた。

 当然ショックが全くない訳ではないが今現在ロドリー自身が皆の足を引っ張ってる自覚はあったし、なによりも・・・


「アラン、ミリー、リアナ、フローネ今まで迷惑をかけてゴメン、4人ならきっと魔王を倒してくれるって信じてるから・・・。」


 ロドリーは真っ直ぐ皆の顔みて言った。


「「「「・・・」」」」

 4人はそのことについて誰も何も言わなかった、ただどこか気まずそうで寂しそうな顔をしていた。


「おいロドリー」

「なんだよアラとっ・・・これは?」

「退職金だ受け取れ、お前のいままでの働きなんてそれで充分だろうよ」

「これ・・・いいのか?」


 その言葉にアランは舌打ちをしながら手をシッシッとした。


「ありがとう、アラン」


 その言葉は酒場の喧騒に消えて誰の耳にもとどかなかった。

 ロドリーは最後にアランが退職金代わりにくれた小さな石を眺めなから酒場をあとにした。

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