139.誰も気づかなかった危険

※掲載忘れです。ごめんなさい_( _*´ ꒳ `*)_

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 魔犬ケルベロスが、唸る。それは何か異常を察知した証拠だった。言うことを聞かないベロに、カリスが怒る。


「もうっ! ベロ!!」


 大きな声に驚いたベロが、耳を垂らした。しょげた様子を見せながら、俺に念を飛ばしてくる。こういうところは狡猾な奴だが、その内容に驚いた。


 ゲーティアには、青茸と呼ばれるキノコが存在する。その匂いがすると言うのだ。もし間違って口にしたら、下痢や嘔吐で苦しむ……あれは辛い。過去に5回食したが、死ぬかと思った。


 キノコの形をしているなら食べなければいい話だが、名前はキノコでも寄生植物に近かった。青茸の菌に感染すれば、どんな野菜でも青茸の菌床になる。野菜の栄養で増殖した菌を食すれば、悪魔や天使でも数日寝込むほどだった。人間なら即死だろう。そんな菌の匂いがするなら確認が必要だ。


 ベロが示したのは、カリスの好物である芋のスープ。使われた玉ねぎか芋に寄生したと思われた。調味料や牛乳は寄生対象ではない。幸い、銀に反応する特性がある。食事のカトラリーには銀が使われる理由のひとつだ。毒以外にも反応するため、見た目以上に重宝された。


 銀のスプーンで混ぜると、スプーンが青くなった。間違いない。スープを諦めるよう言い聞かせ、皿を遠ざけた。食事が終わった頃、スープの白が青く変色している。興味深そうなカリスには悪いが、間違って口に入る可能性を考慮して引き離した。


 スプーンでかき混ぜたことで、全体に反応して青くなったのだろう。もう少し大人になったら説明するが、今はようやく食事を楽しむようになったばかりだ。食べ物を恐ろしい物だと勘違いさせる可能性があるので、曖昧な表現で誤魔化した。


 ベロは自分の食事を終えると、ご機嫌で毛繕いを始める。今日のベロは朝からいい仕事をした。夕食の肉は量も質も満足できるよう手配しておこう。そう念話で伝えると、にたりと笑った。


 おまえ、その顔をカリスに見せるな。絶対に泣かれるぞ。伝えた途端に真顔になった。それはそれで怖い。真顔のまま、念話で「どうしろと言うのだ!」と器用に怒鳴ってきた。さすが悪魔の天敵と呼ばれた魔犬だ。感心したが、無視した。


「パパ、ご飯の絵を描いてもいい?」


「構わないが、手紙の練習をするんじゃなかったか」


「あ、そうだ」


 カリスは衝撃的な出来事や気になった状況を絵にして残す癖があるようだ。それは伸ばしてやりたい才能のひとつだが、プルソンに頼んで手紙を書く手筈を整えてある。約束は守らないとな。


 大きく頷いたカリスは、昼寝の後の自由時間に描くことで納得したらしい。頭を撫でて執務室へ向かった。


 残った芋のスープは、厨房へ連絡して引き取らせる。安全のため、在庫の芋をすべてチェックするよう手配した。

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