44.僕はパパの宝物になるの?
お仕事の部屋じゃなくて、ベッドがあるお部屋だ。いつも寝ているベッドに下ろしてもらった。お座りして足を揺らしていると、パパが隣に座る。僕を引き寄せたパパに寄りかかった。
抱っこした箱ががさりと音を立てる。顔の前に持ち上げて、くんくんと匂った。甘い匂いがする。プリンとは違うみたい。
「開けてみるか?」
「うん! 僕が開けていい?」
「もちろんだ」
白い箱はリボンが巻いてあった。上で綺麗に結んだリボンをどうやって外そうかな。パパに聞いたら、リボンは解くと一本の紐になるんだって。せっかく綺麗に結んであるのに、ばらばらになっちゃうの? 解かない方がいいね。
迷った僕にパパが提案したのは、リボンを解かずに下を切る方法だった。これならお花みたいになったリボンを壊さない。頷いて箱を持ち上げた。パパの爪が少し長くなって、擦ると切れる。箱をお膝に戻してから、リボンを受け取った。
「ほら、綺麗に残ったぞ」
「ありがとう、パパ。大切にする」
ベッドの横にある机の上に置いた。ここは僕の宝物を置く場所なの。今日のリボンも、パパがくれたお花の鉢も、用意してもらったお勉強の道具や絵を描く棒も並んでる。いずれ部屋が必要なくらい、宝物が増えるぞってパパが笑った。でも僕はたくさんは要らないよ。両手で抱っこして逃げられるくらいでいいの。
「そうか、ならば宝物を抱っこしたカリスは、俺が抱っこして逃げよう。カリスが俺の宝物だ」
僕が宝物になるの? 嬉しくてぎゅっと抱きついた。膝の上の箱が滑って、パパが押さえてくれる。
「開けてみろ」
「甘い匂いがするよ」
少し蓋を開けて、どきどきする胸を押さえて止まった。こういう箱を開けるの、やってみたかったんだ。奥様が届いた綺麗な箱を開いて喜んでたから、嬉しいことだと知ってる。でも僕にくれる人はいなかった。
開いた箱の中に、色々なお菓子が入ってる! 色がついた透明っぽいの、焼いた茶色いやつ、焼いた上にきらきらした色がついたのもあるよ。ふわっと甘い香りが広がって、僕は「うわぁ」と声を上げた。
「これは見事だ。よかったな、カリス」
パパに言われてお菓子をひとつ摘む。きらきらした青い透き通ったお菓子は、柔らかかった。飴じゃない。外側に白い粉がついてて、口に入れたらグニグニした。不思議な感じで、すごく甘い。
「美味しい。パパ、これ美味しい!」
同じのを見つけて、摘んで差し出した。
「どうした?」
「一緒に食べるんだよ。パパの分」
「ありがとう」
パパが笑って、僕の指ごとぱくりとした。びっくりする。擽ったくて、笑いながら指を返してもらった。次は焼いたお菓子、これは大きいから半分にする。
「今日はお仕事しないの?」
アガレスが待ってたりしない? 心配になって聞いた僕に、パパが頷いた。
「仕事は休みの日がある。今日は休みだから、平気だぞ」
よかった。パパは普段難しい言葉を使うのに、僕と話す時は分かるようにしてる。いっぱいお勉強して、僕も難しい言葉を覚えて、いつかパパみたいになりたいな。
足をぶらぶら揺らしながら、今日はパパと休みの日をするけど……明日は頑張るね。
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