第55話 前王妃エンフィーネの部屋(1)(陛下視点)
"どうしたものか"
アガパンサス帝国の王である私は、前王妃の扉の前で1人佇んでいた。
"レイモンドに圧をかけたら、私が動かされるとは………私も歳をとったということか?"
そんなことを考えながら、でも、扉を開く決断がつかない。
扉の前で佇むこと10分。
「陛下、そこで悩むのやめてもらえませんか。私が入れないではないですか」
「レイモンド……いたのか」
「そりゃいますよ。あんなふうに脅されたのに、放っておくバカはいない」
「そうか」
「脅したことは否定しないんだな」
「脅してはいない。いや、お前たちがエンフィーネの薬を渡さないから致し方なくやったのだ。エンフィーネの失態をお前も晒したくはないだろう。私がうまいこと始末してやるから渡しなさい」
「私は持っていませんよ。勝手にサンジュリアンが持ち出して何かやっているだけだ。しかも、母上が作った薬なら何のやましさもない。放っておけばいい」
「レイモンド、お前は優しいエンフィーネしか覚えていないからそう思うのかもしれないが、エンフィーネは現王妃と争っていたから毒薬にも手を出している可能性はある」
「ハッ。現王妃様が毒薬に倒れたことなどありましたか?ないのに、何故そんなことを言うのですか?現王妃様が陛下に毒を盛られたと囁いたことがあったのですが?………ハハ、図星ですか。陛下は政治手腕は見事なのに、妃のことになると適当ですね、まぁ関心がないのでしょう」
「いや、私は、エンフィーネのことも大事にしていた」
「へぇー。それは初耳ですね」
「本当だ。ただ他の人の手前、その感情を表に出せないだけで」
「そうですか、では、今から弁解してください、母上に」
「え?」
「どうぞ、中へ行ってきてください、母上がいますから」
「どういうことだ!?」
「行けばわかりますよ」
レイモンドはそういいながら、扉を開けた。
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