第52話 王宮図書館(4)(サンジュリアン視点)
「兄上は少しお怒りになるかもだが、わたしには優しいから私がきいてみるよ」
レオンは爆弾投下になるとも知らずに、無邪気にそう言った。
「レオン!第一王子は前王妃様のことを聞かれるのは嫌いだろ、とりあえず俺たちで調べてみるから!」
俺は慌ててそう言った。
「何言ってるんだ?お前たちがそんなに本を広げても解らないんだから聞いてしまった方がいい。なに、わたしはお前たちと違って意外と兄上とは仲が良いほうなんだよ」
そう笑いながら、レオンは
「そうだ!いまから皆で兄上に会いに行こう!」
と俺たちの言うことを聞かずに無理やり王宮内のレイモンドの部屋へと向かうことになってしまった。
"なんでこんなことになってしまったんだ、最悪だ。こんな内容を聞いたらレイモンドは本当に俺とは話してくれなくなるだろう"
俺は足取り重く、レオンの後ろをついていってると、
ヒューリスティがレオンに聞こえない小さな声で、
「逃げますか?」
と聞いてきた。
「え?」
「第一王子殿下にお会いするのは不味いと思ってるのですよね?わたしは別によいのでは、とも思うのですが、貴方は顔が青ざめるほど不味いと思っている。何かあるのでしょう?」
「前王妃様が作った薬を俺が持っているかもしれないことをレイモンドは知っている。そこにいきなり薬の製作者の保護と言ったら、その薬の存在を秘匿してやるから扉の紋様を教えろ……そうレイモンドにとられかねない。」
「なるほど。では、やはり逃げますか」
側近候補としてその行動はどうかと思うが、俺たちはレオンに急ぎの用事がある、と伝えようとした瞬間、
「兄上!」と大声をあげ、レオンは走っていった。
逃げるには時すでに遅いことを悟った。
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