第12話 戦略を立てる
王宮に到着した後、俺はアランを私室の応接ソファへ通し、お茶が出されたのを見計らって人払いした。
そして、前世の記憶を思い出しながら領主代理プロジェクトのどこに入るのが得策か相談することにした。
「領主代理で目ぼしい領地は3箇所。海の港ナティア。冬は晴れた日でもマイナス10度になることがあり、海辺は流氷で覆われる。魚介で有名だが観光名所がなく寒いことがネックになっている。だが、観光名所さえ作れたら良い観光地になる」
「寒いところはあまり好きじゃないな」
「そんな感想が聞きたいわけじゃな」「次~」
食い気味に被せてきた…。
「王都に近いが貧しい街ロデルナ。古き良き街と言えば聞こえはいいが、孤児が多く領主の資金繰りもうまくいっていない。今回から領主代理プロジェクトに参加表明した新規プロジェクトだ。参加すれば支援金が貰えるからな。だが、孤児がらみは良くも悪くも金持ちには成果を上げやすい」
「ま、俺たちが金をばらまけば、イチコロだろな」
「いや、何もばら蒔けとは言ってない」
「つぎぃ~」
「砂漠の街メンフィス。乾いた土地で作物も育てられずこちらも貧しい。特に売りはない」
「ん?じゃあなんでお前が選んだめぼしいリストに入ってんの?」
「……」
俺は乙女ゲームで、ヒロインが怪物と出会って風魔法で撃退したおかげで、砂漠の中に埋もれていた遺跡を見つけるというストーリーを知っている。この遺跡は貴重な観光名所に出来る上、中には財宝があったはずだ。
「砂漠って遺跡が見つかりやすいだろ?一攫千金を狙うならここだと思って」
「王子が一攫千金って要らないだろ」
「そうだが……」
「なるほど、お前遺跡があると知ってるな?」
「………」
「まぁ、いい」
「で、お前ならどれを選ぶ?」
「…………そういえば王太子になる覚悟は決まったか?」
「今必要な質問か?」
「必要だ。俺とお前が手を組めば出来ないことの方が少ない。だが、王座に興味ないなら大人しくしてたほうがいい。エンフィーネ様みたくなりたくなければ」
アランはいつの間にか軽口を止め、真剣な口調になっていた。本気で心配しているのだろうが、俺は最後の言葉に睨まずにはいられなかった。
「悪かった。だが、王座に興味あるのか明確にしろ」
「俺、ディアナ嬢と婚約は継続したいんだ」
「??」
「王子でなくなったら結婚できない。かといって、王位継承権があったままではマリアンネ様は俺を見逃さないだろう」
「そこは第二王子がって言うべきだな」
「レオンは関係ない」
「おいおい、関係ないわけな」「ディアナ嬢と結婚したいから王太子になる!」
俺は勢い良く被せて言った。
「………お前ひどいな、その理由。だが、アルストロメリア帝国にとってお前が王になるのはエンフィーネ様を嫁がせたときの絶対条件だ。反故にされている今が異常事態だ。どんな理由だろうと帝国がお前に力を貸してやる」
「感謝する」
俺はふと、この展開はアランに直接会わずとも乙女ゲーム通りなのでは、と思わないでもなかったが、俺がうまく前世の知識を活かして舵を取れば大丈夫だろう。
「王太子目指すなら、領主代理プロジェクトは公爵家嫡男がいるところにしないか?お前、公爵家嫡男とうまくいってないだろ。そいつとより戻しといた方が第二王子派に食われないぞ」
「ディオルゲルか。明日確認する」
「まぁ~、ついでに言わせりゃ、貧しさの改善は王族の義務として対応出来るし、遺跡発見はある場所言えばお前でなくても出来るぞ」
アランがまたおどけた口調に戻して言ってきた。
「やっぱりお前、口調と見かけにそぐわず出来る男だな」
「一言余計だがな」
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