第11話 従兄のアラン

アルストロメリア帝国第二王子で俺の従兄のアラン・ド・ルリアンテ・アルストロメリア。


本来、母上から帝国の魔法を学ぶべきだったが、体調が悪かったため、帝国製の瞬間移動出来る魔道具を使ってアルストロメリア帝国へ行き学んでいたことがあった。その際、一緒に学んでいたのが同い年のアラン第二王子だ。


王子の教育計画は、王妃に一任されていたため他者にバレず出来たことだが、第一王子を頻繁に他国へ送るなどあまり誉められたことではない。


っと、話は逸れたがつまり勉強仲間だ。そして、頻繁に会っていたこともあり気の置けない付き合いをしていた。


だれ恋で彼は登場しないが、悪事にはお金が必要である。悪事資金はアルストロメリア帝国から調達していたと思われるため仲の良い者がいるのはごく自然なことだ。


ただ留学してくる展開はなかったため、何が目的だか……何が乙女ゲームと違ってしまったのか……。

馬車に揺られながら黙々と考えていた俺に対してアランが口火を切った。


「おい。沈黙してどーしたんだよ?」


「…考え事をしている」


「俺がなんで留学してきたか、についてか?」


「そうだ」


「だったら、聞けばいんじゃね?本人目の前にいるんだし」


「いや。ここで話すような内容かどうか…」


「お前なに話そうとしてるんだよ、たかが留学の理由にそんなかしこまらないといけないことでもあると思ってるわけ?」


「ないのか?」


「ないだろ」


「じゃあ聞くが、何で留学してきたんだ?」


「内緒っ」


「……ムカついたのだが」


「知ってる。まぁ、そんな怒んなって。留学中はお前に味方してやるから、頼み事どーぞ?」


そうおどけて見せたアランに

「あ、じゃあ、領主代理プロジェクトどうするか、一緒に考えてくれ」とポロっと言っていた。


アランは苦笑しながら、

「いいぞ」

と頷いてやった。


"やっぱりレイモンドは悩み事あったか。何かある度に俺に手紙送ってくるんだからしょーがない奴だな。まぁ、エンフィーネ様からも頼まれてるし、面倒見てやるか"



アランは、レイモンドの母親だった自分の叔母エンフィーネの言葉を思い出していた。


「レイモンドにとって気の置けない友人はあなた一人だわ。私がいなくなっても面倒みてやって」





~~乙女ゲーム内の俺との違い~~

アランとやりとりする際、いつもは魔法による伝書鳩だった。早いし秘匿性が高いからだ。

だが、前世を思い出した俺は、他の者たちへと同じように、成人祝いの御礼を通常の手紙で送っていた。そう。俺たちの間で通常の手紙を使うことは、魔法を使えないほど助けを求めている、という暗黙の合図であった。

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