第2章 どうやらみんなは試験を受けるようです。
第6話:知名度が欲しい
とあるビルの中に「付喪カフェ(仮)」と看板を掛けている部屋がありました。
そこは営業時間前なのか、一人の男がテレビの前に釘付けになっている。
『今日のニュースのお時間です。大勢の被害者の方が不審死を遂げた事件から十年が経った今でも“犯人”は分かっておりません。』
俺はテレビに釘付けになっていた。バイト先のテレビに目を奪われていた。おそらく、最近はずっと暇さえあればニュース番組を視聴している。
「明山さん、営業時間前なんですから。準備しなくていいんですか?」
英彦が困り果てた様子で俺に向かって言ってくる。
「頼む最後だ。これで諦めるから」
実は、とある理由により俺は、ここ数日ずっとテレビのニュースの時間になるとこの状態なのだ。
仕方なく英彦は自身のバイトの日でもないのに店の準備を手伝いに行ってしまった。もちろん俺を置き去りにして………。
「続いてのニュースです。先日国市を襲った付喪神による被害の面影は無かったかのように、町は復興を遂げているようです。
ですが、その被害については様々な噂がたっており、町を襲ったついてはあのバイオ団が関わっていたという噂等が流れていますが、実際の所は分かっておりません。
また、その付喪神による町の全壊から人々を守った付喪人は誰なのか、それもまだ分かっていません。
では、現場にいる『北岳(きただけ)アナウンサー』」
「はい現場の北岳です。今ではかなり復興が進んでいる国市ですが、この町を守った救世主は誰なのか。
付喪連盟に確認してみたところ…。恐らく王レベルの付喪人の誰かが町を守ってくれたんだろう。
あれほどの被害を起こす敵から町を守る程の付喪人は連盟登録者の中には今のところ王レベルにしかいないですし…とコメントをいただいき、それ以上は何も分からないというコメントを頂きました…以上現場からでした。」
「そうですか。ありがとうございました北岳アナウンサー。では、皆さん明日もこの時間にお会いしましょう。以上ニュースのお時間でした。」
「何でだァァァァァァ!!!!」
俺が叫んだのはニュースが終わった瞬間である。
正直何があったか聞きたくはないみたいだったが、英彦は訪ねてみることにしたようだ。
「明山さん朝から何叫んでるんですか?
確かに先日明山さんが好きだって言ってたアナウンサーがやめてしまい、悲しいのは分かっています。
しかし、何か事情があったからやめたんですよ。仕方ないことなんですよ」
何故だろう。半分当たっている。
「たっ、確かにその事は悲しいが…………。その事じゃないんだ。確かに悲しいけど………。」
俺の本心は、2回言うほど悲しかったのだろうか。しかし、そんなことではない。俺は少し涙をこらえながら言った。
「英彦、バイオンの事は覚えてるか?」
バイオンとは前回戦った敵の名前である。
ニュースでも言っていた国市を襲ったという付喪神の正体なのだが、俺により倒されてしまっている。
「はい。ですがあいつがどうしたのですか?」
「あいつを倒し、町を守ったのは俺〈と英彦〉だ。本来なら今テレビに出たり、取材に答えたり、礼金貰えたりするはずだ…はずなのだ。
でも今聞いたか?
『王レベルの付喪人が倒してくれたかもしれませんね。』だぞ。
このままだとホントに王レベルの誰かがやったってことになっちまうじゃねぇーか。何でだよ。何でなんだよ。アアアアア!!!!!」
そんな少しイラついている俺に英彦が一言。
「だって明山さん、有名じゃないですから!!」
俺は驚いて声もでない状態に陥った。
「世の中、弱者は手柄を強者に捕られるような弱肉強食の世界ですよ。どこか一瞬の隙をついてあの攻撃が当たる前に倒していたのかもしれません。普通はあり得ませんが、王レベルの付喪人ならできる人はいるかもしれません。それほどすごい人達があのレベルに集まっているんですよ!!」
そう言って英彦は誤魔化してみたが、実際あの近くには英彦と明山しかいなかったのだ。
遠距離から攻撃したとしても、止めを指したのは明山しかいないはずだ。
しかし、付喪連盟は明山が倒した………とは言っていない。
これはまさか、連盟の陰謀なのだろうか。
それとも………いやまさかあり得ないとは思うが………。
「明山さんサンチュウを着けて戦ったんですよね?」
英彦は一応、確認を取ってみる。
「サンチュウ??? なんだそれ??」
その返答を聞いた英彦は嫌な予感がしていた。
「ほら、付喪人の免許を取った時にもらう。戦闘時や、いろいろなことに使う大事なサンチュウですよ」
「えっ!? 三虫って人の体内にいて、神様にその人の罪を話しに行くって考えられていた虫のことか?」
「う~ん、ちょっとその話は聞いたことがないですが、ほらサンチュウとはこれのことですよ」
見ると英彦の腕のところにはブレスレットのような物が着けている。なんだかおしゃれなブレスレットだ。
「へー、こんなのがあるんだ。知らなかったなー」
でも、やはり俺はこんな物のことなんて知らない。
知っていたらオシャレ感覚ですでに着けているだろう。
どうやら、英彦の嫌な予感が的中したようだった。
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