百合を受け入れない彼女をものにしたい
闇野ゆかい
第1話楽しい一日が一瞬にして···
私──三藤由夏は友人であり、恋愛感情を抱く女子の宇佐美蛍と買い物に出掛けていた。
ショッピングモールでの買い物を済ませ、帰っている道中にだだっ広い公園に差し掛かり、移動販売車を見掛けて誘った。
「蛍ぅっ、暑いしあれなんてどうかな?」
「うん、良いよ。そうしよっか」
蛍は頷き、公園へと足を踏み出した。
移動販売車でいちごミルクのジェラートとバニラのジェラートを購入して、寛げる場所を探した。木陰ができたベンチを見付け、彼女とベンチに腰をおろした。
「今日も暑いね、ほんとさ。由夏のおかげで助かったよ、ありがとう」
バニラのジェラートをスプーンで一口掬いながら、笑顔を浮かべた宇佐美。
「そう思ってくれてるだけでいいよ。夏でもないのにそうだよね」
彼女の笑顔を見れるだけで嬉しい。彼女の心を──全てを私へと向かせたい。彼氏もちである彼女だろうと、付き合えないと断言されても彼女──宇佐美蛍を振り向かせて付き合いたい。
私は、彼女が気になり始めた瞬間からその想いは変わることなく、
同性である女子に強い恋愛感情が芽生えたのは中三からだった。きっかけはある日、百合アニメを知って観始めたことだった。ドロドロとしてない幸せな女子高生同士の恋愛があると知り、百合の世界に憧れるようになった。
女子と男子が恋愛する話が嫌いになったわけではなく、女子に恋愛感情を抱くように変わっただけのこと。
ただ、恋愛感情を抱く相手が同性になったに過ぎない。それだけのことなのに周りはそういった感情を毛嫌いする。
それほどまでに異常なことなのか、おかしくて他人から傷付けられなくてはならないことか全くといって理解できない。
恋愛は個人の自由で、好きになった相手が異性だろうと同性だろうと他人に干渉され、あれこれ口出しする権利なんてないのに......
「うまいっ!身体に染みるぅ~暑い日に冷たいのって良いぃ~!」
と、足をじたばたとさせながらジェラートを頬張る彼女にいちごミルクを食べさせようとスプーンを突き出した。
「美味しいから私のも食べて。あ~んして」
「食べたいけどっ──」
断りきられる前に遮り、彼女の口にいちごミルクのジェラートを放り込み、無理矢理食べさした。
「っあうぅっ、何すんの?由夏っ──」
喉を鳴らし、飲み込んで訊いてきた彼女に顎に触れて、唇が触れるように引き寄せぷるんとした感触の魅力的な唇に唇を重ねた私。
「うぅっっ、あぁっうっっ......ぷぅはぁぁ、はぁはぁ。やめってぇっ、てぇっ言ったでしょっ!」
頬を紅潮させながら、恥ずかしそうに言いながら腕を突きだし、距離をとる彼女。
「ごめん、つい......」
勢いにまかせ、彼女の唇を奪ってしまった私は彼女に謝った。
「もうっ......帰るっ。ついてこないで、由夏......」
ベンチから勢いよく彼女が立ちあがり、そう言い残して、駆け出した彼女。
彼女が言い放った突き離した言葉だけがぷかぷかと漂い、残った。
宇佐美の後ろ姿が遠ざかっていき、ベンチに取り残された私の耳もとで、吹いてきた風がさわさわと木の葉を鳴らした音と近くで遊ぶ子供らの笑い声が響きだした。
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