おいでよ変なモノ博物館!

青木のう

プロローグ

プロローグ ――アロハ信長——

「おい、うぬら大丈夫か?」


 私たちの前に現れたのは、羽織った真っ赤なアロハシャツが目立つ、髪をひとつ縛りのちょんまげヘアにした、同じ歳くらいの男の子。少し悪っぽい感じだ。


「助けてくれてありがとう! 私の名前は上林うえばやし 彩花あやか。こっちはクラスメイトの長谷川はせがわ ゆいちゃんに松田まつだ 陽菜ひなちゃん。えーっと、あなたのお名前は?」

「名前? ああ、とくと聞くがよい! 俺の名は吉法師きっぽうし! 織田吉法師だ!」


 へえー、吉法師。珍しい名前だ。

 というか腰のそれってやっぱり刀?


「――き、吉法師!?」

「どうしたの、長谷川さん?」


 隣に立つ勉強も運動もできるパーフェクト小学生の長谷川さんが、何かプルプルと震えている。さすがの彼女も、よっぽどが怖かったのかな?


「……吉法師は、信長の幼名ようみょう

「ようみょー? 何よそれ?」


 ぼそっとつぶやいた長谷川さんに、もう一人のグループメンバーであるおしゃれな松田さんは、ハテナがいっぱい浮かんだ顔で聞き返す。


「幼名というのは、武士の習慣にあった子どもの時の名前。大人になったら別の名前を名乗る。吉法師は信長の幼名。つまり目の前の人物は、たぶん状況的に


 つまり織田信長おだのぶながさんの小さい頃の名前ってことだね。

 へえー、のぶながね。織田信長……。


「――信長ァ!? アロハなのに!?」

「私も信じられない。でも、そう言わざるをえない。アロハだけど」

「「ええええええっ!?!?」」


 私と松田さんの驚きの叫びがきれいにハモる。

 信長だと思ったらアロハだった――違う、アロハだと思ったら信長だった。

 アロハ信長。うん、自分でも何言ってんのかわかんないや。


 時に西暦1544年――天文てんぶん十三年……らしい。ただグループ学習をしていたはずの私たちは、変なモノ博物館へと迷い込み、アロハシャツを着た織田信長と出会った。


 これは私たちが、そんな普通とは違う変な歴史の1ページを見ることになった、始まりの出来事だ――。

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